大阪のお笑い界に新風、ytv漫才新人賞で注目コンビ・ぐろう

9月10日に放送された、若手漫才師たちの登竜門『ytv漫才新人賞決定戦』(読売テレビ)の事前ROUND。芸歴10年までの新鋭12組が集うなかトップ通過を果たしたのが、芸歴4年目のぐろう(家村涼太、高松巧)だ。

取材・文/田辺ユウキ

『ytv漫才新人賞決定戦』ROUND1でトップ通過後のぐろう(左から家村涼太、高松巧)

■ ytvに続き、M-1も…今勢いに乗る若手

2019年に結成、2022年11月に「よしもと漫才劇場」に所属してから、まだ1年足らず。メディア出演も少ない謎多き2人が、来春放送される『ytv漫才新人賞決定戦』に向けて「イチヌケ」を果たした。

「高級時計を買うのが夢」と話す高松に、家村が「高級時計というのは時空間を利用した特殊詐欺。ロレックスは『ロレロレ詐欺』だ!」と不要論を説く漫才を披露。黒髪Tシャツ×茶髪スーツという相反する見た目、高松の鋭いツッコミと家村の持つ独特な空気感がクセになっていく。

審査員の佐藤哲夫(パンクブーブー)は「小さなトピックをこんなに広げられるんだって」と驚き、兵動大樹(矢野・兵動)も「着眼点がすごかった」と高く評価した。

8月末におこなわれた『M-1グランプリ2023』の大阪会場1回戦でも、その日の1位通過。勢いづいていることは間違いないだろう。ちなみにその1回戦でも、「今度、結婚する親友に花束を贈ろうと思う」と言う高松に、家村が「花束なんて贈ったら、もらった方は迷惑する。花瓶も買わなあかんし手入れも大変」とこれまた屁理屈もまじえて「なぜそれがいらないか」を説明するものだった。それらのネタを見ると、ぐろうのひとつのスタイルが確立されつつあるように思える。

■ 「強いワードがあれば…」今のスタイルへの思い

家村(左)は「マジで『ytv』で優勝します!これまでのみなさんも言ってきたと思いますけど、それは全部違うんです。僕らはほんまに優勝するんです!」と興奮気味にまくしたて、高松が「みんな嘘をついていたワケちゃうねん!」とツッコミを入れて笑わせてくれた

『ytv』収録後の興奮冷めやらぬなか、2人にインタビュー。審査員勢をはじめ、MCの山之内すずからも絶賛されていた一方、パンクブーブーの佐藤からは、高松に対し「今の時代に合う、(ツッコミの)強いワードがあれば」と、さらに上を目指すための課題も挙げられていた。

それについて高松は、「実はそのあたりは、僕らも前々から気付いていたところです。でもネタのなかにいろんなボケがあり、それを際立たせるツッコミを意識しているので、今のところはこの形がしっくりきていて。僕がおもしろいことを狙うと、相方のボケがブレちゃう気もしています。ただ、ご指摘いただいた課題はこれから向き合っていきたいです」と語った。

ほかにも番組内では、審査員の兵動が「家村くんのようなツレが欲しい」と発言。しかし高松は「家村とは、おもしろいことを言うんでコンビとしてやっていますが、リアルな友だちとしては、まぁ・・・(笑)。なので兵動さんも、実際に家村と友だちになってもらって、肌で感じてもらいたいですね」と苦笑い。逆に言えば、家村のそういう「ややこしさ」がネタにも生かされているということだろう。

ネタのなかでは、家村はあらゆるものに対して「そんなものいらない」と否定的な立場をとる。ただもちろん、『ytv』や『M-1』など賞レースの栄冠は絶対に「欲しい」はず。今の勢いなら、それも現実味は十分あるのではないか。家村は「とにかく、すぐに下ろしても勝負できるようなネタを書き続けます」と決意の表情を見せていた。

『3度のチャンスを掴み取れ! ytv漫才新人賞 ROUND1』はTVerで見逃し配信中。『ytv漫才新人賞決定戦』は2024年春に放送予定。

© 株式会社京阪神エルマガジン社