ファーストサマーウイカ「常に今が最高潮と思って、更新していく」

バラエティ番組に出ては、鋭い視点と機転の利いたトークスキルでお茶の間を沸かす一方、映画やドラマでは女優としての存在感をしっかり残すファーストサマーウイカ。そんな彼女を「一体何者なんだ?」と思っている人は少なくないだろう。

メジャーデビュー10周年を迎えたファーストサマーウイカ

今回は、そんなウイカに映画『禁じられた遊び』の公開にちなんで、映画での役作りを振りかえってもらうとともに【前編】、改めて生き方やモットー、これからを尋ねてみた。

写真/Ayami

● 「最後消えきらなかったものが個性になる」

──ウイカさんの最大の武器って、自分の見せ方をしっかり熟知してらっしゃるところだと思うんです。だから、映画やドラマ、ミュージックシーンやトーク番組でも「完璧な立ち振る舞い」ができる。パワーグラフにすると、すごく綺麗な形に描けそうな。

まったくそんなことはないんですが、嫌なこと、できないこと、やりたくないことは全部やめてきて、楽しいことだけで埋め尽くしてるからかも(笑)

──で、その今のウイカさんがどうやって出来てるんだろう?と調べると「ああなりたいは模倣から始まる」と、過去のインタビューで仰っていたんですよね。最近「ありのままで」「自分らしくあれ」とかいう言葉をよく耳にするなかで、「真似したらいいやん」ていう考えは斬新というか。新しいと思いました。

そうですかね、芸能だったら伝統芸能っていう型があって、まず習って落とし込む、トレースから始まるわけです。で、最後消えきらなかったものが個性になっていくと思うんですよ。ハイブランドとかでさえも「これどっかで見たことあるデザインやな」とかあるじゃないですか。模倣、というと嫌な聞こえ方するかもしれないけど、模倣は決して悪じゃ無い。

世のなか完全に新しいものの方が少ないから、なにかを模倣したあとにひとひねり加えることばかりだと思うんです。ファッションに限らず、何にせよ。だってさっきの「過去のインタビューで〜」という質問も、何かをもらってきているわけじゃないですか。でもそれを持ってきて、ここでひとつ加えることで、おニューになる。

今では多彩な「個性派」まで上り詰めたウイカだが、そんな彼女もはじめは「真似ること」をしたそう

──今、すごく衝撃を受けてます(笑)。人は何かをするとき、案外簡単に「模倣」している!

案外ね。あ、さっきの質問、ディスったわけじゃないですよ(笑)。でもお芝居もきっとそうだろうし、自分の個性にもそれは言えて・・・似てるタレントさんのニーズに合わせて、「ほんなら逆振った方がいいな」とか、常に考えてますし、みんな意外としてるんですよ。

● 「毎日を積み木のようにひとつずつ重ねていく」

──今年で「ファーストサマーウイカ」として活動し始めて10年目なんですね。改めて10年を振りかえってみて、今ある環境はどう捉えてらっしゃいますか? かつては想像できていましたか?

まったく出来てなかったです。昔から人生の大きな目標を立てることはあまりしなくて、2〜3歩先の小さな目標を立てて、点と点を繋いでいく作業のほうが向いてました。いきなり大きな弧を描いて目標設定したら、失敗したり飽きちゃったりするし、軌道修正が難しいから。

すごろくを1マスずつ進んで行くようイメージとプラス、経験や出会いが自分を運んでくれるので、毎日を積み木のようにひとつずつ重ねていく感じですね。常にその瞬間が山の頂点であって、だから常に「今がピークだ、最高潮だ」と思って、それを1日1日積んで更新していく。

女優業に関しては、大河ドラマ『光る君へ』(NHK)での紫式部役での出演が控える

──決して無駄なことはない、ということですね。

よく人生は下積みと言いますけど、全部そう。積んだものに乗っかってるから。だから、過ぎ去ったところが見えなくなるすごろくではなくて、経験値が土台となるような積み木方式で物事を考えるようにしています。

──とはいえど、その積み木がなかなか載せられないってことあるじゃないですか。そういうとき、どう乗り越えますか?

確かに。変な載せ方をするとジェンガと同じように上から崩れることもあるし、それが人生における失敗や選択ミスになるかもしれないけど、またそこから積んでいけばそこがピーク。振り出しに戻ったとしても積んでいけば、また頂点があると思うんです。

「これからも地盤を固めていったりとか、頑丈にしていけたらいいなと思っています」と、ウイカ

──今のウイカさんってまさにその地盤の上に「しっかり立ってる」といったイメージで。上京前、まだ芸名が初夏だった頃、大阪で5年間、地元の劇団で頑張られていましたよね。

それこそ、今から見たら下積みになるけど、当時は下積みやとは思ってない。今こうやってお話させてもらってるから、(当時の)芝居のためにお金払って、出費の方が大きかったことを下積みというのかもしれないけど、当時は「週末にこんな大きいホールでお芝居できるなんて、最高!」って思っていた頂点だったワケだから。

常に「最高」だと思ってやっているから、未来の自分が「良い地盤だった」「あのとき良かった」と、思えるんじゃないですかね。

● 「他人がつける肩書きなんて、あって無いようなもの」

──例えば、肩書きを聞かれても「こだわらない」というイメージがあるのですが、それはこれからも変わらずですか?

例えば名前があって、その次にコメンテーターというのが来たら違うなってなると思うんです。もちろんさせていただくこともあるですが、「本業ではないです」と言うと思うんです。本業とまでは言えないですが、積み木の1番下、最初に積んだパーツは役者になりたい!というところからのスタートなので、軸足にしたい、自分の意識としては「俳優が一番最初に来たらいいな〜」と思うので、俳優を先に書くようにはしています。

肩書は「こだわらない」と言っていたウイカだったが、そこには真意があった

とはいえ、俳優・歌手・タレントに対して優劣があるわけではなく、どれも同じ。お金もらってやるという意味では(笑)。どのお仕事も好きなんです。声優さんとかMCとかもっと色んなことをやりたい。誇りが無いわけではなくて、「私は〇〇です」と100%言い切れる程の極められたものが無いからかも。まだ何も成し遂げてないし、何者でもない。

33歳、女性です。ということしか言い切れるデータは無いです(笑)

──「自分は何者なんだ」って考えたときに、ちょっと怖くなっちゃうときとかはないですか?

まったくないです。何をしていようが、ニートだろうがなんだろうが自分は自分です。でもいくら自分で「わたしはこういう者です〜!」と言ったところで、他人は見たいようにしか見ない。そして勝手にレッテルを貼り付けて見る。人に勝手に決められたことに対しては、ふ〜んって感じなので。

例えば、テレビ出始めの1年間くらいは、番組の台本に「元ヤン元アイドル毒舌タレント」と書いてあったりしました。他人が付けた肩書きのオンパレード(笑)元アイドルは事実だからいいとして、元ヤンは嘘だし。今でもたまに毒舌タレントって台本にあると、担当者さんに「いつのどの媒体のどの発言から毒舌と感じましたか?今回どういう意図を持って毒舌を求めていますか?」とレッテル貼りした理由をまず聞きます(笑)。

なのでそういうレッテルやカテゴライズは気になったりしますけど、精神の所属先みたいなことは深く気にしすぎず、求められるところで全力でいたい。俳優雑誌で取り上げてもらうのであれば肩書きは俳優だし、音楽番組だったらアーティストだし、私はそこに大きなポリシーはないですね。

──そのカテゴライズやレッテルの部分で言うと、例えばウイカさんは芸能界で活躍されていますが、案外一般人にとってもその考えを取り入れたら豊かになるのではないかな?と思って。必ずしもみんなが「自分は会社員です」という必要はないじゃないですか。

もしなにか「能力」を得られるとしたら「当たる漫画を書ける才能が欲しい」という、ウイカ

そうですね。そう言ったら私も会社員ですよ。給料制だからサラリーマン。要するに自分の良さのどこを引っ張ってくるかなんですよ。私は女であり、日本人であり、関西人であり、妻であり、会社員であり、俳優であり、アーティストであり、いち人間である。もっと細かく抜き出すこともできる。

他人がつける肩書きなんて、あって無いようなもの。謙遜しちゃうけど、他人に勝手に言われるくらいなら、自分で言っていこう。自分で当てたいところにスポットライトを当てる。すでに光っているところだけじゃなくていい、まだ確立してなくても、これから自分が「1番光らせたいところ」にライトを当てて、みんなに見てもらうのが、肩書きの意味だと私は思います。

◇ ファーストサマーウイカの最新出演作 ◇

映画『禁じられた遊び』
清水カルマの人気ホラー小説が原作で、メガホンを取るのは『リング』や『スマホを落としただけなのに』などを手掛ける中田秀夫監督。幸せな家族に起きたとある悲劇をきっかけに・・・ノンストップの新感覚ジャパニーズホラーが幕を開ける。キャストは橋本環奈、重岡大毅ほか。全国の劇場にて公開中。

映画『禁じられた遊び』

2023年9月8日(金)全国公開
監督:中田秀夫
出演:橋本環奈、重岡大毅(ジャニーズWEST)、堀田真由、倉悠貴、正垣湊都、猪塚健太、新納慎也
MEGUMI、清水ミチコ、長谷川 忍(シソンヌ)、ファーストサマーウイカ
配給:東映
©2023 映画『禁じられた遊び』製作委員会

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