国民の疑念に馬耳東風の政府 80歳を超えた女性がノートに込めた切なる思い

手紙に同封されていた、平和記念公園の千羽鶴を再生して作られたノートと一筆箋

 手紙に同封されていたのは一冊のノートだった。とてもきれいなノート。表紙にハトのデザインがあしらわれ、めくると台紙にすきこんだような色とりどりの小さな紙がちりばめられていた。

 パッケージに「この商品は折り鶴再生紙でできています」。広島市の会社が取り組む「リ・オリヅル」プロジェクトで、平和記念公園に寄贈された年間1千万羽に上る折り鶴を、市から提供を受けて生まれ変わらせている。

 送り主は、夫の転勤で46年前から広島で暮らす島根出身の女性。特別なノートに正直戸惑った。けい線もない真っさらなページに何が書けるだろう。手紙にノートのことは触れられていなかった。夏の初めに訪問した際にもてなしを受け、後日シジミを送ったことへの礼と近況。結びに「広島は一年を通し平和に関連したいろいろな集いがあります。平和への思いが詰まった報道が多く、広島ならではの行事に参加できることにも感謝です」とつづられていた。

 防衛省は2024年度予算の概算要求で、過去最大の7兆7385億円を計上した。抜本的に強化するという国防のためだが、説明を読んでもその必要性が理解できないものもある。

 この頃、国民の疑念に馬耳東風の政府に諦念を吐き出すばかりだったが、沈黙は「容認」になる。白紙も同じだ。ノートは、80歳を超えた彼女のエールと切なる願いだろう。戸惑っている時間はなかった。

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