SBIに楽天も…株式取引の手数料無料化の動き、証券会社の狙いは新NISA?

9月最初の土日はイベントのゲスト参加の為、大阪に行ってきました。

「個人資産をどのように増やすか」をテーマにした催しで、大勢の方々が訪れていました。私はとある証券会社のブースで約30分程のトークショーと、証券新聞のブースで新聞配りをして販売促進のお手伝いをしてきました。

私のトークショーの隣りのエリアでは、2024年から開始される新しいNISAの解説をするイベントを開催していました。とても混みあっていて、席を確保するために長い行列ができていました。今まで株式投資をしていなかった方や、現行NISAとの違いを把握したい方などが大勢詰めかけていた印象です。


証券会社で広がる売買手数料の無料化

このイベントの3日前にあたる8月30日(水)、ネット証券大手のSBI証券と楽天証券が、日本株の売買手数料を無料にする事を発表しました。SBI証券は2023年9月30日(土)から、楽天証券は10月1日(日)からこの制度をスタートします。

また松井証券も、2024年1月より始まる新NISA制度において、日本株、米国株、投資信託の売買手数料を無料にすることを決定しました。大手ネット証券2社に対抗した動きで、今後も追随する証券会社も出てくるかもしれません。

この動きは、先ほどお伝えした2024年から始まる新しいNISAの開始を目前に控え、個人投資家を呼び込みたい狙いによるものです。

証券口座は個人でいくつも持てますが、NISA口座は1人に対して1口座しか開設できません。各証券会社としては、顧客に一旦NISA口座を開いてもらえれば、その後の株式投資で同じ証券会社を利用していく可能性が高い、という思惑があると思います。

「貯蓄から投資へ」で起きる変化

2023年6月30日(金)、資産所得倍増元年と称して岸田総理から「貯蓄から投資へ」という取り組みが発せられました。日本の文化に根付いてる「貯蓄」という流れを変え、「投資」へと促す様相です。

日本ではなかなか「投資」という文化が浸透せず、逆に「投資」をタブー視する風潮も長らく続いてきました。確かに私が証券会社に入社した35年前の個人投資家といえば、一部の「お金持ち」と呼ばれるような方々が中心でした。売買手数料もとても高くて一往復(売買)で2万円くらいだったと記憶しています。

時代は変わり今やネット証券での売買手数料は無料を謳う時代となりました。政府は国民のお金を眠らせておくのではなく、積極的に活用させるべく、株式市場を通して経済の現場へ循環させることで景気の活性化を実現したい考えです。

世界の時価総額トップの米国市場は、1989年と2021年の時価総額を比べると約15倍ほどになっています。またこの期間、米国のダウ平均株価は日本の平均株価の約14倍に成長しているのに対し、日本の株式市場は、ほぼ横ばいが続いています。

この違いを顕著にさせた要因として、米国企業には「会社は株主のもの」という考えが強く根付いていることが考えられます。企業に利益がもたらされたら、株主への配当金として還元するという流れが、当たり前のように続いているからです。

配当金を年々増やし連続増配をする企業も多く存在し、高配当が期待できる点はとても魅力的です。積極的に株主還元する企業は優良企業とみなされ、株主との距離感が近く、良好な資金の循環がされていることでWin-Winの関係性が存在し、それは市場の成長に不可欠です。

日本でも、東証が企業へ株価を意識した経営を促した事により、ようやく変革が進みつつあります。増配や自社株買いなど株主還元を積極的に行う企業は確実に増加しています。

そうした変化もあり、TOPIXはバブル後の高値を更新しました。上場来高値銘柄も多く、トヨタ自動車(7203)やホンダ(7267)、日立製作所(6501)やデンソー(6902)、三菱商事(8058)など、日本を代表する企業も含まれています。

また、高配当ETFなどの上昇も目立ちます。ただし、日本のプライム市場の時価総額は840兆円規模です。残念なことに米国と比較すると、依然として7分の1程度です。日本企業の良い変化が今後の日本市場の鍵を握っており、それが表面化すれば、株価の牽引役である海外投資家は日本市場に資金を流入してくると思われます。

一個人がお金を生み出すという心構えや、投資に前向きな社会を目指すという政府の指針がどのように日本に根付いていくのか、今後の行方を見守りたいと思います。

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