“55歳で初婚”床嶋佳子「“心を開いた”ことで主人と出会えた」

「生涯未婚率」とは、政府等の統計で“50歳になった時点で一度も結婚したことがない人の割合”のこと。すなわち、国は「50歳以上で初婚の人は極めてまれ」と規定している、ともいえるのかもーー。でも、その規定に反し、50代以降に結婚して幸せをつかんだ人ももちろんいます。回り道したからこそ気づけた幸せとは? 55歳で結婚した床嶋佳子さん(58)に聞きました。

「私、半分諦めていたんですよ。確率として考えても、ハードルが高いというか、まさか結婚できるとは思っていませんでした」

女優の床嶋佳子さんは、50代に入り「結婚したい」と友人や知人に伝えるようになったという。さらに、バラエティ番組で「寂しい!」と本音を出したことで、周囲から食事会や紹介の話が舞い込んだ。

そして共通の知人を介してご主人に会った瞬間、「この人だ!」と思ったといい、8カ月の交際期間を経て、’20年、55歳のときに結婚。SNSではご主人との外出や食卓の様子など幸せな暮らしが垣間見える。

「結婚3年を迎えますが、改めて幸せだなと感じています。とはいえ、長くそれぞれの生活をしてきたので、ぶつかることも。とくに新婚1年目は、とまどいもありました。たとえば、私は毎日お酒をんでいましたが、主人は健康のためにも平日はお酒を飲まないほうがいいと言っていましたし、ちょっとした電気のつけ方でも感覚の違いみたいなものがありましたね。でも、最近はお互い理解してぶつかることも減ってきました(笑)」

床嶋さんがとくに結婚に求めていたのは、「心の豊かさ」だった。

「50代って、ある程度のキャリアがあって、この先を諦めているわけではないけど若いときのような野心は少しそげてきますよね。そうしたなかで、これからどう生きていきたいか考えたときに、一人でいるより、同じ景色を見て『きれいだね』とか、食事をして『おいしいね』とか、人と幸せを共有することを楽しめるような、心の豊かな暮らしを望むようになりました」

自分の望みがしっかり確立しているからこそ、日々の些細な衝突を大きくすることはない。

「そうですね、けんかばかりするのはつまらないですから。けんかをして険悪でいるより、譲れるところは譲って、譲れないことはしっかり主張する。そのようなことを繰り返すことで、お互いの大事にしている部分を尊重できるようにも。ぶつかり合いと寄り添い合いを繰り返して、少しずつ歩み寄って、私たちのルールみたいなものがやっと見えてきた気がします。もちろん違う価値観の2人がともに暮らすのですからハッピーばかりとはいきませんが、それでもやっぱり2人でいるときは幸せだなって思えるんです」

すてきな笑顔で語る床嶋さんだが、40代は「寂しさを感じていた」のだという。ところが、順調だった女優の仕事と向き合う時間のほうが長かった。

「子どもを生み、育てる女性ってなんともいえない美しさがありますよね。憧れましたし、結婚願望ももちろんありましたが、ご縁がなかった。心が前向きになれず、だんだん『結婚はもう無理かも』という諦めになり、一生独身でいるのかなと。40代後半になると、すてきな人がいてもときめかない。人を好きになれない自分がますます嫌になり、幸せそうな家族を見るのもつらい時期がありました。悪循環ですね」

仕事を忙しくすることで、悪循環に陥っている心を見ないようにしてきた面もあるという。ところが、50代に入り体に変化が訪れた。

「更年期もそうですし、人間には老いというものがあって、がんばりきれなくなる時期がやってくるんですね。そこに寂しさも重なりましたが、だからこそ自分を変えるしかないと思えたんです」

住む場所を変えてみたり、丁寧な暮らしを意識したりと、自分にできる変化を取り入れていったという。そして、思い切って知人や友人に頼ることに。事務所のスタッフにも相談したことで、バラエティ出演という新境地も開けた。

「それまでは、女優としてのというか、“女優・床嶋佳子”として人に頼る、ましてや『寂しい』『結婚したい』なんて言っていいものか……と考えていたんです。恥ずかしさみたいなものもありました。でも、心を開いたことで、いろいろな方が手を差し伸べてくれて、主人に会うことができたんです」

出会いの場では結婚相手としての条件ではなく、自分の「好き」という感覚を大事にしていたという。

■「好き」という気持ちが日々の暮らしの助けに

「すてきな人に会えてありがたいなと、いまでも思います。たとえば、思い切りけんかしても、『好き』という気持ちが助けてくれるんです。何もかもすべて合う人はいないでしょうし、条件で探したとして、その条件が崩れたときに一緒にいるのがつらくなりそうじゃないですか? 私はそう思うんです」

その「好き」という感覚をつかむこと自体が難しいように感じるが、努力で培うことができるようだ。

「感覚や感性は磨けると思っています。たとえば自然に触れて心が動いたときに、『私はこういうものが好きなんだ』とインプットして、自分の感性を開いていくんです。何が好きで何が嫌いなのか、客観的に観察しながら、感性を磨いていくような感じです。いま思うと、40代の悪循環時代は、自分で感性を閉じてしまったんでしょうね」

この感性を衰えさせないためにも、「後半の人生を2人で楽しもう」と考えているという。

「だから主人にも、時間ができたら旅行しようと言っています。本当に仕事で忙しい日々を送っていて、頭が下がります。主人の仕事が一息ついたら、これまで味わっていないものをたくさん共有したいと思っているんです」

2人の時間が増えていくことが、晩婚のよさなのかもしれない。

「私も仕事がありますけど、若いときのように、がむしゃらに働く時期ではなくなってきたので、お休みの日には可能な限り趣味などを一緒に楽しめたらいいなと思っています。全然違う2人が出会って、受け入れられない部分もあったけれど、少しずつお互いを理解することで、心から楽しめるようになっています。50歳を超えて、こんな体験ができるとは思っていませんでした」

人生100年時代、心が豊かになる結婚生活を満喫してほしい。

【PROFILE】

とこしま・よしこ

1964年9月23日生まれ。福岡県出身。元バレエダンサー。1991年、27歳のときに女優に転身。ドラマや舞台のほか、近年はバラエティ番組にも出演している

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