ハプニング乗り越え躍動、表彰台獲得のポルシェ963「クルマは今季ベストだった」/WEC富士

 WEC世界耐久選手権第6戦富士6時間レースでは、今季デビューし、ここまで苦しんできたポルシェ963がレース前半からトップを快走。最終的にはトヨタGR010ハイブリッドの2台に逆転を許したものの、ワークス陣営であるポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963(ケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール)が第2戦ポルティマオ以来となる、3位表彰台を獲得した。

■スタート前の給油でハプニング

 中盤スティントを担当したエストーレは、WECでのこれまでのレースで「最高のできだった」と感じている。

 ファントールがスタートを担当した6号車は、スタート直後のTGR(1)コーナーでフロントロウからスタートしたトヨタ2台をパス。彼はダブルスティントが終了するまで、後方のフェラーリ499Pと、GR010ハイブリッドに対するリードを保った。

 その後、バトンを受けたエストーレはスティント終盤までリードしたが、ダンロップコーナーへの飛び込みで8号車トヨタの平川亮にインを突かれてポジションを明け渡こととなった。

 しかしながら、エストーレは明るい表情を見せていた。

 彼は、数台のハイパーカーがトラブルに見舞われたポルティマオ6時間レースでの表彰台獲得を引き合いに出し、「これは、ちゃんとした形での3位だ」と語った。

「僕らは4時間にわたってトップを走り続けた。これまでのレースとは大きな違いだ」

「これにはとても満足している。ペースはあった。スタート前に燃料を充分に入れられなかったというハプニングを除けば、ミスはなかった」

 このハプニングにより、6号車は他のハイパーカークラスのライバルよりもピットタイミングが早くなり、終盤の燃料スプラッシュを避けるためにエストーレは燃費走行を強いられた。

「トヨタはクリーンなコースでペースがあったし、クリーンエアでは彼らの方が速かった」とエストーレは続ける。

「彼ら2台が僕らまで追いついてきたとき、彼らは僕の後ろで1時間半を過ごした。 彼らを引き留めることができたのは嬉しかったし、僕は本当にミスをしないように努め、クリーンな状態を保とうとし、それをすることができた」

「クルマは間違いなく、今シーズンこれまででベストだったよ。完璧ではないけれど、これまででベストだった」

「WECでは最近あまりテストしていないけれど、アメリカで(IMSAに出場するポルシェ・ペンスキー・チームは)たくさんテストしているし、マシンを少し理解できたと思う」

「そして、ここでのイベントためにエンジニアたちはすべてのレースを分析し、このコースに合うセットアップをしようと懸命に働いたと思う。彼らはうまくやってくれた」

2023年WEC第6戦富士 3位表彰台に登壇したアンドレ・ロッテラー、ケビン・エストーレ、ローレンス・ファントール

■良好だったブレーキングとトラクション

 ポルシェ963にとって初走行となる富士スピードウェイで、6号車ポルシェが大きく進化した理由について、エストーレはストレートエンドでのブレーキングとコーナーからのトラクションをポイントに挙げた。

「今思うに、誰もフラットスポットを作らなかったし、誰もホイールをロックさせなかった」とエストーレは言う。

「(トヨタ勢は)ターン10(ダンロップコーナー)以外のビッグブレーキングで僕らを抜けなかった。これは間違いなく良かったよ。トラクションもこれまで以上に良かったと思う。この2点がポイントだった」

「それから僕らは戦略面でもいい仕事ができた。タイヤも適切だった。トヨタが我々と同じタイヤを履いたとき、彼らは引き離されたと思う」

「スタートのエネルギー(ガソリン搭載量)を除けば、トヨタは僕たちと同じタイヤを履いて速く走ったわけだから、僕ら彼らよりいい仕事をしたんだ」

 6号車ポルシェは4輪ともミディアムタイヤでスタートし、その後も終始ミディアムを使ったのに対し、トヨタは当初左側にハード、右側にミディアムを装着してレースをスタート。その後、トヨタも4輪ミディアムへと推移した。

 このタイヤ戦略について、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージング・ディレクター、ジョナサン・ディウグイドは次のように述べている。

「フェラーリが(4輪とも)ハードタイヤを履き、トヨタも彼らの車にいくつかのハードタイヤを履いていたのに対し、我々のエンジニアリング・グループは適切なタイヤを選択した」

「彼らがそれを理解すると、マシンの本当のペースが引き継がれていった」

ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963

■「今日のポテンシャルは2位だった」

 ディウグイドは、富士での6時間レースでは、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツがハイパーカークラスの戦いに本格的に加われたことが証明された、と感じている。

 タイヤマネジメント、メカニカルセットアップ、ソフトウェアなど、マシンのさまざまな分野における理解が進んだことが、この前進の要因だと彼は指摘している。

 ディウグイドはまた、6号車ポルシェが2位でフィニッシュするのに充分な速さを持っていると考えていたが、ロッテラーが小林可夢偉のすぐ後ろで4回目のピット作業を終えてコースに復帰したとき、その望みは絶たれた。

「あのピットサイクルで、トラックポジションを失ったと思う」とディウグイド。

「我々が前に出られたときは、彼らを抑えることができた。トラックポジションを失ったとき、トヨタが前に出るとおそらく彼らには我々を背後にとどめておくだけのペースがあることは分かっていた」

「今日のポテンシャルは2位だったと思う。すべてがスムーズだった」

「パフォーマンスではまずまずのステップを踏むことができたし、今は戦いに加わっていると感じている。今日のような日を迎えるチャンスはある」

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