経費削減効果は500万円 要介護認定 審査会をオンライン化 資料の印刷・郵送なし、移動も要らず委員に好評 姶良・伊佐 県内初

オンライン会議システムを使って審査会をする姶良・伊佐地区介護保険組合職員=霧島市隼人

 鹿児島県の霧島市、伊佐市、姶良市、湧水町でつくる姶良・伊佐地区介護保険組合は、要介護認定と障害支援区分の審査会をオンライン・ペーパーレス化している。県内初の試み。専用のタブレット端末に資料を送信し、オンライン会議システムを使って審査する。4月に試行を始め、7月から完全に電子化した。事務局と委員の双方から「効率的」と好評で、他組合から問い合わせもある。

 霧島市隼人にある組合事務所。午後6時すぎ、職員がパソコンでオンライン会議システムZOOMを立ち上げ、要介護認定審査委員の集合を待っていた。

 「よろしくお願いします」。音声や通信状況の確認も兼ね、委員の入室ごとにマイクをオンにし、声をかける。「お疲れさまです」「今日ちょっと声が出なくて」。全員がそろうと審査が始まる。

 要介護認定審査委員は医師、看護師、介護福祉士、理学療法士など保健・医療・福祉関係の学識経験者。この回の5人は、全員が職場から参加、40分で24件の申請を審査した。「自分の業務終了後すぐに参加できるのがいい」。委員たちは、審査会後に新方式の感想を語った。

■ペーパーレス化を解決

 事務局によると、紙の消費量の多さが課題だった。2020年からペーパーレス化を模索。委員の要望があり、業務改善にもなることから、オンライン化も同時に導入した。

 昨年度までは、1回の審査会で50~60枚の資料を委員と事務局の計6人分印刷。5人の委員には発送していた。要介護認定は月に30~40回、障害支援区分は月に3、4回の審査会があり、22年度はA3用紙約12万枚が使われた。

 新方式では資料作成後、委員の端末に直接送付する。委員側は以前より早く手元に資料が届く利点も生まれた。資料の印刷・封入・発送作業に移動時間も加え、職員の業務時間は1回につき2時間、1年で約840時間が軽減される計算だ。

■移動時の交通事故リスクも回避

 昨年度まで審査は、霧島市国分、伊佐市大口、姶良市加治木、湧水町栗野の4会場であった。組合事務局があるのは霧島市役所隼人庁舎内。職員は年に420回の審査全てで移動が必要だった。最も遠い大口会場の審査には、開始2時間前に出発していたという。

 会場への集合は委員にとっても負担。審査委員長の佐藤昭人さん(67)は溝辺の病院から国分会場に通っていた。「市街地は帰宅ラッシュの時間帯が多い。診療時間終了後すぐ出発しても混雑で到着がぎりぎりになることもあった」と振り返る。

 集合する途中の交通事故のリスクもなくなり、委員135人の移動費200万円だけでなく、委員に掛ける損害保険料90万円もいらなくなる。特に医師の場合、掛け金が割高だったという。さらに資料配送料110万円、印刷費40万円なども併せ、経費は計500万円減る。タブレット端末導入・維持費と差し引きで年間約150万円の削減を見込んでいる。

■委員の日程調整も容易に

 オンライン審査は、委員の日程調整もしやすい。新型コロナ流行以降は、本人は無症状でも、濃厚接触などが原因で延期することもあり、判定が遅れがちだった。新方式は迅速化にもつながったようだ。

 特に本年度は、新型コロナの5類移行によって判定延長措置がなくなり、4月から審査件数が急増。7月は昨年同月より200件増の1066件となった。事務局は「以前の態勢であれば判定が大幅にずれ込んだ可能性もある」とみている。

 会話のニュアンスが伝わりにくいなど課題も浮かんできたが、事務局と委員の双方からおおむね好意的に受け入れられた新方式。佐藤審査委員長は、委員不足を念頭に「参加しやすくなり、委員を引き受ける人が増えるのでは」と期待している。

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