生と死 静かに見つめる28点 瀬戸内市立美術館で木下晋展

顔や手のしわを繊細なタッチで描写した鉛筆画に見入る来場者

 濃淡のグラデーションを用いた表現で「鉛筆画の鬼才」と呼ばれる画家・木下晋さん(76)=相模原市=の個展「生への祈り」が、瀬戸内市牛窓町牛窓の市立美術館で開かれている。老人や病人を繊細なタッチで描き、生と死を静かに見つめた作品が来場者の目を引き寄せている。

 盲目の女性旅芸人の瞽女(ごぜ)・小林ハルさん、ハンセン病回復者の桜井哲夫さん、パーキンソン病を患った木下さんの妻らをモデルにした28点。どの絵も、その生きざまを追体験するかのように、顔や体に刻まれたしわ一本一本まで丹念に描き込んである。

 東日本大震災(2011年)の被災地訪問を機に始めたという「合掌図」シリーズは、しわだらけの手をクローズアップ。亡き人を思う気持ちがこちらにも伝わってくる。

 同館は「老いや病など目を背けがちなテーマに正面から向き合った作品ばかり。何か感じるものがきっとあるはず」としている。

 個展に合わせ、ハンセン病に理解を深めるパネル展(市主催)を3階ギャラリーで同時開催。市内の長島にある国立ハンセン病療養所・邑久光明園を舞台にした漫画「麦ばあの島」を引用して同園と隣接の長島愛生園であった差別の実態を伝えるパネルや、入所者が使った点字本、碁盤などが並ぶ。

 両展とも10月15日まで。午前9時~午後5時で月曜休館(9月18日開館、19日は閉館)。問い合わせは瀬戸内市立美術館(0869―34―3130)。

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