【特集】障害者野球日本代表が2大会連続の世界一 特別なグラブを手に活躍の岡山桃太郎・早嶋が2大会連続のMVP

「もう一つのWBC」とも呼ばれる世界身体障害者野球大会が10日と9日、愛知県名古屋市で開かれました。この大舞台で岡山の選手たちが躍動しました。

(日本代表/松元剛 主将 選手宣誓)
「我々の持つ不撓不屈の精神が、必ず皆様に届くことを信じ、全身全霊で熱くプレーすることを誓います」

新型コロナの影響で1年延期され、5年ぶりの開催となった第5回大会には、日本・韓国・台湾・アメリカ・プエルトリコが出場。 岡山桃太郎からは前大会MVPの早嶋健太(27)をはじめ、浅野僚也(28)、井戸千晴(28)、高月秀明(25)、槇原淳幹(34)の5選手が日本代表として世界に挑みました。

総当たりで世界一を競うこの大会。日本の初戦の相手は韓国です。

日本1点リードの3回、ランナー2人を置いた場面で早嶋がセンター前へのタイムリー。日本はその後も得点を重ね、5回表を終えて7点のリードを奪います。

しかしその後、日本の投手陣が乱れて韓国の追い上げられてしまいます。それでも最後は4番手としてマウンドに上がった早嶋が締め日本が大事な初戦を勝利します。
【日本 8-7 韓国】

続くプエルトリコ戦、日本の先発は早嶋。その早嶋をスタンドから見つめている少年がいました。

(長崎から応援に/平木悠喜さん[中2])
「いやぁ、いい球。すごく安定している」

中学2年の平木悠喜さんは長崎から世界大会の応援に駆け付けました。

(長崎から応援に/平木悠喜さん[中2])
「早嶋さんの試合を見てみたいと思って来ました」

早嶋と悠喜さんをつないだものは「特別なグラブ」です。

生まれつき左手首から先がない早嶋は、ボールを捕るのも投げるのも右手でこなします。

そんな早嶋のためにと、和気閑谷高校の球児たちが岡山のグラブ職人と一緒に、特別なグラブ作りに挑戦。2020年3月にグラブの背面に左手を入れるための袋を付けた特別なグラブが完成しました。

悠喜さんも早嶋と同じように生まれつき左手首から先がありません。それでも兄の影響で、小学1年の時に野球を始めました。

(父・宏一さん)
「普通だったらサッカーだったりを勧めるのかなとも思ったが、本人がやりたいと言うので野球好きそうだから特に何も言わずに」

2020年、宏一さんはテレビで早嶋の特別なグラブを目にしました。

(父・宏一さん)
「僕がたまたまテレビを見てて、次の休みの土曜日『行こうぜ』って」

2人は早嶋のグラブを作った岡山の職人を訪ねて、当時使っていたグラブに左手用の袋をつけてもらいました。その後、中学生になった悠喜さんは、改めて「早嶋モデル」のグラブを作ってもらいました。

今は「早嶋モデル」の特別なグラブを手に、硬式野球のクラブチームでピッチャーや外野手としてプレーしています。

(長崎から応援に/平木悠喜さん[中2])
「(早嶋モデルは)左手が使えるので全身使って投げることができて、球が速くなったり、握りかえも速くなったりした。僕も日本代表に入って世界一になりたいです」

悠喜さんが見つめる前で……早嶋は特別なグラブを手に躍動!1失点完投で日本の2連勝に貢献しました。
【日本 4-1 プエルトリコ】

試合後、早嶋は悠喜さんのもとを訪れました。

(長崎から応援に/平木悠喜さん[中2])
「ナイスピッチ、球が速かったので、すごくいい球だなと思いました」

第3戦の相手は台湾。

日本は早嶋のランニングホームランなどで18得点で大勝。3連勝で優勝に王手をかけました。
【日本 18-0 台湾】

そして……勝てば優勝が決まるアメリカ戦。マウンドに上がったのは早嶋です。
この試合リードするのは、岡山桃太郎でもバッテリーを組む井戸千晴です。

大会前、井戸は――。

(岡山桃太郎/井戸千晴 選手[28])
「早嶋と一緒に最後バッテリーを組んで優勝の瞬間を一緒に喜べたらなと」

優勝をかけた大一番。早嶋ー井戸の「岡山桃太郎バッテリー」はアメリカ打線をねじ伏せていきます。

そして最後のバッターを見逃し三振で打ち取り、4戦全勝の日本が2大会連続で世界一に輝きました。
【日本 4-0 アメリカ】

(岡山桃太郎/井戸千晴 選手[28])
「まさか(夢が)かなうとは思わなかったんですけど、本当に(代表に)選ばれて良かったと思いました」

また投打で活躍した早嶋は、2大会連続でMVPに選ばれました。

(2大会連続 MVP/早嶋健太 選手[27])
「すごくホッとしたというか、この日のためにいろんな人に支えられていろんなことを経験して、このグラブにも出会えて、すごく楽しい2日間でした」

優勝をつかみとった早嶋を、長崎から駆けつけた中学生・悠喜さんが待っていました。

サインに応じた後、早嶋は悠喜さんに――。

(2大会連続 MVP/早嶋健太 選手[27])
「また何年後かに一緒に野球しよう! この舞台で」

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