ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した“いて座”の球状星団「ターザン12」

こちらは「いて座」(射手座)の方向約1万5000光年先の球状星団「Terzan(ターザン)12」です。球状星団とは、数万~数百万個の恒星が球状に集まっている天体のこと。天の川銀河ではこれまでに約150個の球状星団が見つかっています。星々が密集して輝く様子に美しさを感じる天体です。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された球状星団「Terzan 12」(Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Cohen (Rutgers University))】

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」と「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(可視光線と近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されました。欧州宇宙機関(ESA)やアメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、ハッブル宇宙望遠鏡によるTerzan 12の観測は、天の川銀河の中心方向に分布する球状星団の体系的な調査を目的とした研究の一環として2016年8月に実施されました。

球状星団の多くは天の川銀河の円盤構造を取り囲むハロー(銀河ハロー)を周回していますが、銀河円盤を通り抜けることもあります。銀河円盤には波長の短い可視光線を吸収・散乱させやすい塵を多く含むガスが分布しているため、天の川(銀河円盤を内部から見た姿)に沿って分布する天体は、実際よりも赤みがかった色合いに見えることがあるのだといいます。この現象は星間赤化(interstellar reddening)と呼ばれています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した範囲を示した図。上段:いて座方向の天の川、下段左:幅1分角(満月の視直径の約2倍)の範囲を拡大した図、下段右:冒頭に掲載したTerzan 12の画像(Credit: NASA, ESA, Stéphane Guisard, ESO, Digitized Sky Survey, ESA/Hubble, Roger Cohen (Rutgers University), Joseph DePasquale (STScI))】

Terzan 12も赤化の影響を受けている球状星団のひとつですが、研究者はハッブル宇宙望遠鏡のACSとWFC3で取得された画像を過去に取得された画像と比較することで、ガスや塵による影響を避けることができたということです。ハッブル宇宙望遠鏡によるTerzan 12などの観測は、天の川銀河の奥深くに位置する球状星団の年齢と化学組成を明らかにすることにつながると期待されています。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡を運用するSTScIをはじめ、アメリカ航空宇宙局(NASA)やESAから2023年9月7日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, R. Cohen (Rutgers University), NASA, ESA, Stéphane Guisard, ESO, Digitized Sky Survey, ESA/Hubble, Roger Cohen (Rutgers University), Joseph DePasquale (STScI)
  • STScI \- Hubble Sees a Glittering Globular Cluster Embedded Inside Our Milky Way
  • NASA \- Hubble Sees Glittering Globular Cluster Embedded Inside Our Milky Way
  • ESA/Hubble \- Hubble dispels dust to see a glittering globular cluster

文/sorae編集部

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