タクシー割高「乗らなくなる」 県内、新運賃開始で利用者

新たな運賃体系で営業を始めた富山県内のタクシー=富山駅

  ●事業者側は待遇改善期待

 富山県内のタクシー運賃が11日改定され、新しい運賃体系で各社が営業をスタートした。普通車の初乗り運賃が従来より安くなった一方、遠方への移動は割高になった。運転手の賃金は運賃がベースとなるため、事業者側は従業員の待遇改善を期待するが、地元の利用者からは「もう乗らなくなる」との声が聞かれ、客離れが進む可能性も懸念されている。

 11日、富山駅のタクシー乗り場では、新しい運賃の表示に貼り替えた車が利用客を乗せ、目的地へ出発していた。

 今回の改定の値上げ率(改定率)は11.46%。普通車の初乗り運賃は従来の590~620円から570~600円に変更され、初乗り距離が1.178キロから1.03キロに短縮された。1.03キロ以下の利用では運賃が以前より安くなった。運賃を100円ずつ加算する距離は254~267メートルから223~235メートルに短縮された。

 北陸信越運輸局によると、県内で営業する全44社のうち、42社が普通車の初乗り運賃について上限の600円を選んだ。1社が580円、残る1社が下限の570円だった。

 県内のタクシー運転手は新型コロナウイルスの流行前と比べて25%ほど減り、今年3月末時点で855人となっている。県タクシー協会の土田英喜会長(富山交通社長)は、運賃改定で運転手の待遇改善や人手不足解消につながることを期待し、「若い人や女性らに仕事のやりがいを伝え、地域の足をなんとか守っていきたい」と説明した。

 利用者からは、値上げに理解を示す声がある一方、乗り控えを検討する声も聞かれた。

 出張で富山市に滞在していた大阪市の会社員鈴木裕太さん(39)は「土地勘がないのでタクシーがないと困る。値上げはしょうがない」と話した。

 富山市婦中町の農家堺谷とみ子さん(71)は月1回程度利用しているが、「タクシーはもう高い。乗らなくなると思う」とあきらめ顔。高岡市上関町の会社経営男性(38)は「燃料費が上がっているし、会社存続のためには仕方ない。ただ、代行運転の方が安いのなら代行にするかもしれない」と冷静に語った。

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