<金口木舌>地域の野菜が育む交流

 名護市呉我の県道71号から一本入り、振慶名(ぶりけな)集落へと伸びる長い直線道路は振慶名中線と呼ばれる。市街地からも比較的近く、田畑に挟まれた道路沿いに、最近は建売住宅も増え、移住者も増えてきた

▼中線沿いの一角に、柔らかな似顔絵が描かれた看板が立てられている。集落の元気者で「トミーおじー」こと前川富夫さん(90)が取れたて野菜を販売する無人販売所だ

▼60年以上、農業を続ける地域の生き字引。愛車の青い自転車に乗せ、販売所へと出荷するのは芋や大根などさまざま。「どれくらい売れているか楽しみ。健康づくりにもつながる」と笑顔で語る

▼似顔絵は、料理人で水彩画などを描いてきた与那嶺真弓さんが手掛けた。中線を通る人々の間で好評だという。昼過ぎに伺うと、スーパーよりも安価で新鮮な野菜はほとんど売れていた

▼前川さんの出荷を手伝い、自らも野菜を販売するのは区長の座喜味務さん。中線を「無人販売通り」にして盛り上げる構想もある。地域の野菜による温かい交流が通りをにぎやかにすることだろう。

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