<社説>ジャニーズ記者会見 メディアも検証と行動を

 創業者である故ジャニー喜多川氏による性加害問題で、ジャニーズ事務所が7日、初めて記者会見を行った。性加害の事実を認めて謝罪し、社長を交代し、被害者の調査と補償を約束した。 この間、長年にわたって被害者が出続けたのは日本のメディアの沈黙が大きな要因だったことが、国際的にも認識された。会見を受けてNHKや民放各社がコメントや声明を出したが、不十分だ。徹底した自己検証と、反省を踏まえた行動が必要だ。

 問題が動き出したのは、3月のイギリスBBCの放送と、4月の被害者による告発会見からだ。5月には、藤島ジュリー景子社長が、謝罪する動画と質問に答える文書をホームページで発表した。事実認定は避け、調査や補償に消極的な印象を与えた。

 その後、国連人権理事会の専門家が調査を行い8月4日に声明を発表した。同29日には事務所の外部専門家による再発防止特別チームが報告書を発表した。特別チームは、被害者は数百人に及ぶと推測されるとし、事務所の「解体的出直し」を提言した。

 7日の会見には「解体的出直しには程遠い」と批判が上がっている。被害の調査と補償は、当事者団体と共同して進めるべきだろう。国際的な関心事になっており、国際的にも納得される解決を目指さなければならない。

 この問題は、未成年の性被害をいかに防ぐかという課題にも改めて目を向けさせた。子どもと接する職業に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度「日本版DBS」の創設も議論されている。刑法などの法改正の声もあり、さらに幅広い議論が必要だ。

 マスメディアは本当に責任を認識しているだろうか。

 国連人権理事会の専門家は「日本のメディア企業が数十年にわたり、ハラスメントのもみ消しに加担したと伝えられている」と言及した。事務所の特別チームは「多くのマスメディアが正面から取り上げてこなかったことで、事務所は自浄能力を発揮することもなく、隠蔽(いんぺい)体質を強化していったと断ぜざるを得ない。性加害も継続されることになり、さらに多くの被害者を出すことになった」と断じた。

 NHKはコメントで「メディアとしての役割を十分に果たしていなかったと自省している」と述べたが、その原因を説明していない。民放各局の声明は、事務所の対応を注視していくことを強調し、メディア批判については「重く受け止める」などの表現にとどまっている。

 なぜ沈黙してきたのか、忖度(そんたく)を含め共犯的関係だったのではないかという問いに、放送だけでなくメディア各社に答える義務がある。契約や番組制作でいびつな関係がなかったか、検証し公表すべきだ。その上で、業界全体を健全にする行動が求められる。日本のメディアの在り方も問われていると自覚したい。

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