明石市を子育て先進シティへと導いた前市長・泉房穂が政府の少子化対策を斬る!

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「激論サミット」のコーナーでは、前明石市長の泉房穂さんを迎えて“政府の少子化対策”について議論しました。

◆政府の少子化対策予算3兆円半ばは少なすぎる!?

政府がまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に反映される"異次元の少子化対策”。そこには児童手当の拡充や育児休業給付金の引き上げなどが盛り込まれています。

街頭で子育て経験者に話を聞いてみると「せめて中学卒業まで全部無料。思い切ったことをしないと若い人もついてこない」(60代 主婦)、「支給は一時的、子育て世帯は消費税が安くなったり、オムツなどが安くなったほうがいい」(30代 専業主婦)、「高校の授業料無償化」(30代 専業主婦)といった声など、より一層の施策を求める声が。

少子化対策への追加予算は当初、今後3年間は1年で3兆円増を軸に検討されていましたが、岸田首相は急遽3兆円台半ばと増額を指示。しかし、財源については具体的に示されておらず、年末に持ち越しになっています。

明石市長時代、「医療費は18歳まで全員無料」、「保育料は第2子以降全員無料」、「オムツは満1歳まで無料宅配」、「給食費は中学校無償化」、「遊び場は親子ともに入場料無料」と"5つの無料化”を実現した泉さん。しかも、これらは全て所得制限なし。

さらにオムツに関しては子育て経験のある女性が子育て家庭に直接届け、親御さんの相談に乗るなど、至れり尽くせりの施策にキャスターの堀潤は感心。泉さんは「これはトップが決断すればできるということ」と明言します。

そして、岸田首相が指示した予算増額に関しては「少なすぎる」と指摘。「日本は、(子どもに対する予算を)世界に比べて半分くらいしか使っていないので、一気に10兆円にすればいい」との大胆な意見を述べ、「一旦、繋ぎでもいいから国債を発行し、今は国民に安心のメッセージを伝える時期だと思う」と主張します。

上から12歳、10歳、7歳と3人の子どもを持つ気象予報士でフリーキャスターの根本美緒さんは、今回の少子化対策について「子育てにはお金がかかるので、助けていただけるのはありがたい」と児童手当拡充に感謝しつつ、その上で明石市のように悩み相談などの精神的なケアも希望。

ただ、予算拡充の一方で社会保険料の増加の話も飛び交っており、未婚で子どものいない食文化研究家の長内あや愛さんは「今後恩恵を受けるのは私たちかもしれないが、負担を被るのも私たち」と不安を吐露。

これに対し泉さんは「日本はもうすでに十分負担している。日本の国民負担率は47.5%。もう十分負担していると思う」と言い、「自治体は増税できない。基本やりくりで上手くやっている。普通の家庭と一緒。子どもが年齢を重ねれば習い事などお金がかかるが、親がなんとかして作るもの。家庭と同じように(政府も)やりくりすればいい」と熱弁します。

◆少子化対策で重要なのは"安心感”の提供

現在、政府は少子化対策に約4.8兆円を見ていますが、今後3年間は各年約3.5兆円増額し、2030年代前半には10兆円にするとしています。そして、これに対して岸田首相は消費税を含めた新たな税負担は考えていないとの見解を示しています。

財源については「支援金制度」を検討しており、企業を含め社会・経済の参加者全員が公平な立場で広く負担。歳出改革や社会保険料の上乗せ、企業の拠出金なども考慮され、「公的医療保険料+支援金」として国民1人あたり月額500円程度徴収することも考えているということです。

この采配に泉さんは「とても残念」とし、「内容が不十分。大事なのは安心の提供。医療費・保育料・給食費の無償化が入っていない。最低限それぐらいやらないと、国民は安心して子どもを産めない」と非難します。そして、優先すべきは"安心感”であり、「やはり気持ちが大事で、2人目、3人目をどうしようと思っている方々が大丈夫だと思えるかがポイント」と声を大にします。

泉さんは明石市長時代、最初の5~6年はとても大変だったとか。しかし、頑張って少子化対策を講じた結果、経済が回り、お金の帳尻もあってきたそうで「坂道を転げ落ちるような少子化に歯止めをかけるには、国民が驚くような、気持ちが変わるくらい大胆な政策転換をしないといけない。本当に今の日本はヤバい状況だと思う」と危惧します。

一方、根本さんが今こそ必要だと考えるのは「女性の社会進出」。子育て先進国のフィンランドなど北欧では女性が常に稼ぎ続けられる環境が整っていますが、日本は徐々に改善されてはいるもののまだまだ。そのため女性が産み控えしてしまうと案じます。

◆政府肝いりの少子化対策は「−10点」!?

現在、政府が掲げている少子化対策は、児童手当は現状の中学生までから高校生までに拡充。そして、第3子以降は3万円とし、所得制限も撤廃するとしていますが、その一方で扶養控除は縮小するという話もあります。その他、出産費用は公的医療保険を適用し、育休は手取り額を維持する取り組みが検討され、高等教育についても稼げるようになってから返す「後払い」なども話し合われています。

まだ取りまとめ前の段階ではありますが、政府の一連の対策について泉さんが採点したところ、出てきた点数は「−10点」。「(扶養控除縮小となれば)国民によってはむしろマイナスになりかねる」と懸念し、「社会保険料も今は500円増額としているが、きっとまた上げる」と推察。

総じて、泉さんは「国民の不安を煽れば余計に少子化は進む。国民に安心のメッセージを出さないといけないのに、今回は期待があった分、国民のなかで失望感が高まったことで−10点。もったいない、頑張って挽回してほしい」と政府に望みます。

泉さんとしては「国民が『本当に!?』と驚きを感じるくらいのメッセージが必要」と言い、「医療費・保育料、給食費の無償化を含め、例えば大学卒業までお金がかからないとか、ヨーロッパなどはそれぐらいやっている」と海外の施策を例に挙げます。

◆子育てに先進的な"明石市”の取り組みとは?

子育て政策に関して先進的とされている兵庫県・明石市では、日々さまざまな取り組みが行われています。例えば、5月28日には子育て応援イベント「あかし子ども・子育て応援メッセ」が開催。そこでは助産師などに妊娠・出産の相談ができるブースや子育て世代のお金に対する悩みを相談できるブースなど、子育てに関する16のブースが出展。さらには明石市の施策のひとつ「公共施設の入場料無料化」を体現した、無料で利用できる「親子交流スペース」も。

その会場内で明石市の子育て政策について市民に聞いてみると「オムツの定期便などはかなり充実していて、私的には満足している」、「(18歳以下の)医療費無料化など住みやすい市になっている」と多くの人が支持していました。

泉さんは一連の対策に関して「無料というのは安心の提供。言い換えると不安の解消」と無料化が安心に繋がると言い「(みんな)お金の不安ともしものときの不安があるが、明石市はその両方に取り組んでいる」と胸を張ります。

子育て政策については泉さんが明石市長に就任して以降、予算を従来の125億円から最終的に297億円に倍増。そのうち、前述の5つの無料化に34億円程度かかっているそうですが「もっともっと子どもにお金と人を使うべき」と声を大にします。

長内さんは2人目、3人目の子どもが産みたくなる子育て対策はもちろん、同時に若者が1人目の子どもを産みたくなる社会作りを熱望すると、泉さんは「出産費用の無償化などの議論は始まっているが、1人目から2人目、2人目から3人目、ゼロから1人目とそれぞれ政策は違う。これは全部必要だと思う」と同意。

根本さんはそれを実現するためには「やはり(女性が)働きやすい環境作り、仕事を頑張りながら子育てもできるように国がバックアップする仕組みが必要」と語ります。

◆政府の取り組みを"異次元”にするためには?

最後に、政府の少子化対策を"異次元”にするために必要なことを聞いてみると、根本さんは日本の全企業に対し、「社内託児所完備・朝方勤務・残業なし」を要望。とりわけ、社内託児所については伊藤忠商事株式会社がすでに取り組み、社内出生率の向上など成果を上げているとあって、この風潮が拡大することを望みます。

泉さんは簡潔。「国民が安心を思えるような大胆な政策を」と掲げ、そのためのポイントとして"(予算は)10兆円”、"来年から”、"国民負担なし”を挙げ、「これをやれば異次元だと思う」と話します。

長内さんは「1人目から2人目、2人目から3人目というのはお金・経済的な問題だけだと思うので、それは当たり前にやってほしい。やはり1人目を産むための支援をしてほしい」と改めて訴えます。そして、「産みたいけど産めない人にも支援の目を向けてほしい。世界を引っ張る不妊治療への投資、これこそ異次元なんじゃないか」と新たな提言を展開。

キャスターの田中陽南も長内さん同様、1人目を産むための対策に加え、奨学金の返済や物価高などに苦しむ20代に向けて"安心”を与えられるような支援を切望。

堀は「政治家が変われば、自治体もトップが変われば一気に変わる」と"選挙”の重要性を示唆していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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