アニメーション制作や地方創生事業を行う「スタジオ藍丸」(らんまる、大津多美子社長)はこのほど、東京都練馬区の本社を上越市大町5に移転。10日に町屋を改装した新社屋の開設セレモニーが開かれた。
本社移転の中心となったのは、同社ディレクターの岡尾貴洋さん(57)。映像制作の傍ら近年は日本各所の地域創生に携わる。数年前に「アニメで上越のまちおこしをやってほしい」と依頼を受けて何度も通ううちに、上越を好きになり、移住やスタジオ開設を意識するように。
さらに岡尾さんと30数年来の付き合いがある制作プロデューサー、岩田幹宏さん(65)が、上越市出身ということが判明。岩田さんが会長を務める「観光商社えちご」と連携して上越のまちおこしに取り組む。
本社移転や新社屋建設等の経費は県と市が一部を補助。式典には橋本憲次郎県副知事をはじめ中川幹太上越市長、楡井辰雄県議会議長らが来賓として招かれた。
祝辞で橋本副知事は「アニメは日本の文化を世界に発信するキラーコンテンツ。鉄道、雁木と組み合わせて、まちづくりに生かしてほしい」と述べ、中川市長は「雇用を創出し、UIJターンの拠点となる。市の通年観光や産業発展のためには欠かせないコンテンツ」と期待を寄せた。
社屋1階はアニメミュージアムとなっており、岡尾さん、岩田さんが制作に携わった作品の台本や絵コンテ、原画などの実物を展示。営業時間中は自由に見学できるほか、子どもや地域住民の「たまり場」として開放する。
業務は11日に開始。当面は岡尾さんと、同市に移住した新人アニメーターの畑中春香さん(20)の2人が勤務する。今後は同市での人材育成や雇用の確保、新潟発オリジナルアニメの制作やスタジオ誘致などの業務拡大を見据える。
岡尾さんは「アニメを核として地域の人と協力しながらまちを盛り上げたい。地域に連帯感を生む装置の一つとしてアニメを使ってくれれば」と願った。