ポケモンも人気を後押し!トレーディングカードの恩恵を受けた企業は

今年の春、トレーディングカードの人気が白熱しているというニュースを目にしました。トレーディングカードは、趣味でコレクションしたり、交換、対戦ゲームなどに使われます。人気が高いのは、ポケモンなどのキャラクターや、スポーツ選手のカードで、YouTubeなどで紹介されたことをきっかけに、世界中で注目が集まっています。通常は高い場合でも定価は1枚あたり100円未満が多いですが、希少性の高いカードは、1枚で数億円という、信じられない値段がつくこともあるようです。

今年の8月には、ポケモンの世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023」が初めて日本で開催され、歴代のポケモンカードが大集合し、かなりの活況だったようです。

一般社団法人日本玩具協会によると、「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は、2021年度は前年比46%増の1,782億円2022年度は前年比32%増の2,349億円と2桁成長を続けており、当然、恩恵をうける企業の業績にも期待ができそうです。


トレーディングカードの売上比率が上昇!

注目したのは、中古本で知名度を持つブックオフグループホールディングス(9278)です。

「本を売るならブックオフ♪」というメロディが自然に頭に浮かんでくるので、中古本屋さんと捉えられがちですが、ここ最近は、本だけでなくトレーディングカードをはじめ、アパレル、貴金属、時計、バックと多彩な商材を取り扱うリユース企業に変貌しています。

直近の決算を確認しましょう。

画像:ブックオフグループHD「2023年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

2023年7月10日(月)に発表された2023年5月期決算は、①売上高101,843(百万円)、②前年同期比+11.3%、③営業利益2,578(百万円)、④前年同期比+45.9%とかなり好調なことが分かります。

決算説明資料に掲載されている商材別の売上をみると、トレーディングカード・ホビーが前年比で144.8%増と、ほか商材の中でもトップの伸び率で、売上全体における構成比は前年13.3%から17.6%へ、4.3%比率を高めており、成長ドライバーとなっていることが分かります。

画像:ブックオフグループHD「2023年5月期 決算説明資料」より引用

余談ですが、注釈として「物価高に伴う節約志向・生活防衛意識の高まりがリユース業界全体に寄与」とあります。先日発表された4-6月期のGDP2次速報値でも、個人消費は年換算で−0.6%と弱い数値となっており、去年から続いている値上げが、わたしたち国民の消費マインドを冷え込ませていることが分かります。

同社にとっては、これが追い風となっていますが、ほか小売やサービス業にとっては今後、厳しい展開になるかもしれません。

今期の予想は意外にも減益!?

着地は文句なしの業績でしたし、市場自体が成長しているのであれば、今期予想も期待できると思いきや、意外にも冴えない数字です。

画像:ブックオフグループHD「2023年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

2024年5月期の通期予想は①営業利益2,600(百万円)、②前年同期比+0.8%とほとんど変わらず、経常利益に関しては③−1.3%とまさかの減益予想です。

減益予想の理由は、決算説明資料に記載がありました。同社では、大規模なIT投資を行っておりますが、開発が予定より遅延しており、その減価償却負担が今期よりスタートするため、コスト負担の増加によって利益が圧迫されるようです。

画像:ブックオフグループHD「2023年5月期 決算説明資料」より引用

減価償却費は、実際にはお金が出ていくものではなく、会計上の処理の問題なので、わたしはプラスに捉えています。将来利益を生み出すための投資ならば、一時的に利益が削られても、高くジャンプするためにしゃがんでいるところだと思えば、同社の物足りない通期予想もかえって有望に感じます。

前期のキャッシュフロー計算書を見ると、「出店などの戦略投資のため、投資CFが大きくマイナスとなった」とあります。当然、出店数が増えれば売上は伸びますから、こちらも好意的に取れます。

画像:ブックオフグループHD「2023年5月期 決算説明資料」より引用

決算発表後の急落は絶好の買い場?

数字上の今期予想が物足りないことから、株価は決算翌日は窓をあけて急落。前期は、期初の予想から2度の上方修正をしていることから、控えめに予想を出している可能性も考えられます。

画像:TradingViewより

月次の既存店売上高も順調に前年を上回っていますし、消費者の節約思考はますます強くなっていることを考えると、同社の追い風はしばらく止みそうにありません。

画像:ブックオフグループHD「2023年8月 月次の売上状況について」より引用

今期の上方修正が期待できると判断するなら、先回り買いを狙うのも一つの戦略かもしれません。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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