観光目線と住民目線~羽田空港の南風運用から考える~

所用で、旧東海道の品川宿に出向いた。帰りがけ、久しぶりに品川インターシティを通り抜けてみた。空には、ひっきりなしに南風運用の航空機が、中には、かなり低空飛行をするものも・・・

2020年3月末から新たな運行経路として動き出したものだ。

品川駅のインターシティ上空を
ひっきりなしに降りていく航空機(C滑走路に向かう)## ここ数日、「観光公害」という言葉が私の周辺でバズっている

「オーバーツーリズム」という横文字で語られるものだが、観光客が一気に増えることによるゴミ投棄や騒音、交通渋滞や様々な事件・事故を指す。航空機騒音もその一つと言えよう。

首都圏・東京上空において、これまで航空機が降りてくる姿は、基本的に皆無であった。

しかし、この新たな運用は、発着回数を増やす目的。夏場に多い南風の吹く15時~19時の3時間程度を北から降りる。そして、A滑走路とC滑走路に着陸させるコースである。

このことによって、ここ、品川駅付近は、かなり低空で飛行機が通り過ぎていく。

日本全国、市街地上空を飛ぶ地域は数多い!

目を日本全国に移すと、福岡空港や名古屋空港、かつての広島空港(現広島西飛行場)などは、長年、市街地上空を航空機が低空で飛んでいる。そのため、直下に住まう人々も「慣れ」によって、騒音を忘れてしまうことも少なくない。この日も夕刻、家路を急ぐ会社員たちは、音を気にせず駅に吸い込まれていた。

SNSの伸張によって、誰もが「観光特派員」「報道カメラマン・記者」に変貌できる時代。情報過多であることが、新たな観光映えをする場所やモノ・コトを生み出している。地域住民が暮らす普段着の場所が、ある時突然、「にわか観光地」となっていくのである。

オーバーツーリズムは、住民不在の議論ではなく、地域住民との合意の上で、議論を進めるべき課題である。そう考えると、私たち、観光に携わる者として、地域住民との対話は、必須のことだと考える。

私の家も夜22時半頃、飛行機が上空を飛び、大きな音を残していくようになった。いつからかわからないが、時折、地震か雷かと思うこともある。

住まう人と訪れる人が、お互いに寄り添う未来!

住まう人は常にその状況に対峙している。一方、訪れる人は一過性のもの。一番厳しい状況を目にすることは皆無と言っても過言ではない。

観光情報の発信、旅行商品の造成など、私たちは、観光と住民、双方の目線で合意を得ることが大切だ。その結果を活かしながら、モノ・コトを作らねばならないのではないだろうか。

「慣れる」こと、「忘れる」ことが一番危ういこと。そう思いつつも、私もインターシティのデッキを足早に駅のコンコースに吸い込まれる「One of them」になっていた!

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表

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