長崎・中尾くんち 4年ぶりに本格開催 小1の船山さん、初舞台へ「準備万端!」

祖母マサ子さん(右)の口三味線に合わせ、踊ってみせる紗和さん=長崎市田中町

 15日の中尾くんち(長崎県長崎市田中町)を皮切りに、11月にかけて市近郊の各地で「郷(さと)くんち」が始まる。約250年前から地域に伝わるとされる芸能「中尾獅子浮立(ふりゅう)と唐子踊(からこおどり)」(市指定無形民俗文化財)にサンコサン(唐子)役で出演する市立矢上小1年の船山紗和さん(6)は曽祖母(故人)や祖母が作った衣装で初舞台を踏む。

長崎市内の主な郷くんち

 中尾くんちは、東長崎の山あいにある中尾地区で毎年9月15日に開かれている。紗和さんは5人きょうだいの末っ子で、3世代9人家族。曽祖父(故人)は獅子方、父充博さん(57)は鉦(かね)と歴代が浮立に関わってきた。新型コロナウイルス感染症の影響で、この3年は踊りを取りやめ、獅子頭だけを奉納。4年ぶりの本格開催となる今年、紗和さんにやっと出番が巡ってきた。
 稽古始めは7月末。3歳から小学2年の17人が唐子に扮(ふん)し、大きな盃(さかずき)でお酒を回し飲み、酔っぱらって頭を抱えるユーモラスな演技が見せどころ。獅子が登場する前に場を盛り上げる。「たくさんの人の前で踊るのは緊張しないよ。もう準備万端!」。紗和さんは本番を待ち切れない様子。

お酒を飲んで酔っぱらう演技が愛らしい唐子踊。宴に誘われ、この後獅子が登場する=長崎市、中尾中央公民館

 各家で大切に受け継ぐ衣装は年代物で、船山家が使うのは55年前のもの。背中に大きくボタンの刺しゅうが入ったベロアのベストは曽祖母の手製だ。鈴が付いた手っ甲(装身具)も祖母マサ子さん(80)が手がけた。
 初めて衣装に袖を通した紗和さんが、体を揺らし大股で歩いて踊ってみせると、マサ子さんはすかさず口三味線を響かせて競演。「私が子どもの頃は男の子しかサンコサンは演じられなかった。楽しんで踊ってもらいたいですね」と目尻を下げた。
 中尾くんちは15日午前10時に大山神社(田中町)で奉納後、数カ所で踊りを披露。城戸利美自治会長(69)は「93世帯の小さな集落だが、伝統をつないでいきたい。気合の入った演技を」と期待を寄せた。

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