<金口木舌>蔡焜霖さんが沖縄との交流で見いだした願い

 戦後台湾の政治弾圧「白色テロ」被害者で、人権の大切さを訴え続けた蔡焜霖さんが今月3日、92歳で亡くなった。3月に台北市で取材、連載記事で紹介した

▼弾圧で大勢の若者が無差別に命を奪われた。「誰一人として殺されて良かった人ではない!」と怒りをあらわにした姿を思い起こす

▼戦時中、学徒兵として動員された体験を語り、若者に自爆を強いた日本軍の戦法を批判した。沖縄戦で同世代が大勢犠牲になったできごとや平和への思いを理解し、ひめゆり平和祈念資料館の職員らと交流していた

▼最後になった7月10日のメールにこうある。「沖縄との交流によって、住民の目線から、住民の命や人権を奪い取ろうとする国家権力にあらがうことが大切だ、という思いを共通して持っていることが分かってきた。今後ともこの交流と協力の輪を世界に広げていきたいと願っているのです」

▼蔡さんが願っていたのは「有事」などではない。若者を含む全ての人の平和と人権が守られる社会だ。沖縄と台湾が人権と平和でつながれば、と思う。

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