ホンダ、新エンジンのテストはなく「問題は同じ」。M.マルケス去就の決断に迫るタイムリミット/ミサノ公式テスト

 9月11日、サンマリノGP後に行われたミサノ公式テストで、ホンダは2024年に向けたマシンをテストした。しかし、新しいエンジンの投入はなし。ライダーたちは「問題はほとんど変わっていない」と口をそろえる。そして、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は自身の2024年に向けた決断についても言及した。

 ホンダがミサノでテストしたのは、新しいシャシーのマシンである。しかし、そのマシンが搭載していたのは新しいエンジンではなかった。そしてM.マルケス、ジョアン・ミル(レプソル・ホンダ・チーム)、中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)のマシンのインプレッションは、ほとんど同じだった。

「ライディングポジションがちょっと違うけど、でも、問題はだいたい同じだ」
「(リヤグリップがまだ必要かという質問に対し)イエス」(M.マルケス)

「大きくはないけど、改善した部分はある。特にユーズドタイヤでちょっとよくなったと感じられた。少しコンスタントになった」
「(リヤグリップはまだ大きな問題かという質問に対し)イエス」(ミル)

「フィーリングも違ったし、ライディングポジションもかなり違いました。でも、リヤグリップはほとんど変わらなかったです。エッジグリップはまだ弱点のままでした。コントロールが難しかったし、スピンも多かったです」(中上)

 ホンダはリヤのグリップ不足、立ち上がりでのスピニングに悩まされ続けており、端的に言えば、現在はその解決に迷走している状態に見えた。例えばシーズン後半戦でアップデートされた新しい空力デバイスは、ダウンフォースの増加によって2023年型RC213Vの問題であった立ち上がりでのウィリーを抑えたが、極端にフロント寄りのバイクバランスが課題となり、リヤのグリップ不足解決のために適切なバランスが求められた。サーキットの路面グリップがいいミサノのサンマリノGPではリヤ寄りのバランスのセッティングになったが、今度はリヤがフロントをプッシュしすぎるという問題を抱えた。

 サンマリノGPの決勝レース後、こうした状況と戻るべきベースを見失っているのか、と中上に聞いたところ、「簡単に言うとそうですね」と語っていた。「ただ、戻るところ(ベース)も、決していいわけじゃないんです」

「イギリスGPで新しいエアロになってから、リヤのグリップ不足が顕著になりました。ベースと言っても、ミサノなら前戦カタルーニャの状態からスタートして、シルバーストンのときはアッセンの状態からスタートしています。1戦1戦、ウイークを戦ったらそれがベースになる感じで、正直、(戻る場所が)ない。常に探っているんです。リヤのグリップがよくはなっていない。3日間戦って『これがベスト』というところから(次戦を)スタートしているんです」

 ホンダとしても2022年にはシーズン中にこれまでになく多くのパーツを投入し、今季に関しても、例えばカレックス製シャシーなどを持ち込んでいる。だが、どれも決定的な改善にはつながっていないのが実情だ。こうした状況を考えれば、リヤグリップ不足という問題の主な理由は、エンジンにあるだろうと推察される。

 しかし、ミサノ公式テストに2024年に向けたエンジンはなかった。ミルは「今日新しいエンジンがあればよかったんだけど、そういうわけにはいかなかった。ここに新しいエンジンを持ち込まないのであれば、僕たちの変化は大きくはないということだ」と語っていた。

 2024年までの時間はそう多くはない。そしてライダーたちは、ミサノで改善を感じていない。なぜホンダはミサノで新エンジンをテストしなかったのか、という疑問が残る。

■M.マルケス、2024年の決断

 ミサノ公式テストのインプレッションを「問題は同じ」と語ったマルケスは、ここで己の将来についても言及した。マルケスがグレシーニ・レーシングMotoGPに移籍するのではないか、といううわさが流れ始めたのはサンマリノGP前あたりからだ。

 サンマリノGP木曜日の囲み取材で2024年の去就について問われたマルケスは、「ホンダともう1年、契約がある」と繰り返すのみだった。だがミサノ公式テストの囲み取材で、ホンダに留まるか移籍するのか、その決断のデッドラインは? との質問に対し、マルケスはこう答えたのだ。

「そうだよ(デッドラインはある)。インド、日本あたりで決めるだろう」

 この件についてMotoGP.comに掲載されているマルケスのコメントを確認すると、マルケスには今、将来について三つのプランがあるということだった。いずれにせよ、マルケスの回答とこのコメントによれば、2024年、マルケスがホンダに留まらない可能性もある、ということになる。そしてあと2、3週間のうちに、マルケスは“決断”を下すという。

マルケス、ミルはシャシーやエキゾースト、テールユニットが新しいマシンを走らせた
ブラドルがテストしていた車両。外観に大きな変化は見られない
2024年について「インド、日本あたりで決める」と言及したマルケス。その決断はどんなものになるのか

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