「2度目は勘弁してほしい」最悪の事態想定と最大限の構えを 台風15号の教訓【わたしの防災】

静岡市を中心に甚大な被害をもたらした台風15号からまもなく1年となります。「悪いことばかりではなかったが、2度目は勘弁してほしい」。被災した住民の教訓と最悪の事態を想定した行政の取り組みを追いました。

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2023年1月にオープンした静岡市清水区のたこ焼き店です。

<川口隆嗣さん>
「ありがとうございました!またお願いします」

店主の川口隆嗣さんは、1年前、台風15号の被害に見舞われました。

<川口隆嗣さん>
「始まる目前にあんな災害にあってしまったのでショックでした」

2022年9月、静岡市を中心に襲った台風15号。清水区では床上浸水が3061棟、床下浸水が2,289棟を記録しました。

<川口隆嗣さん>
「中はぐちゃぐちゃ。見てほら。冷蔵庫や冷凍庫はひっくり返っちゃったんですよ。これたこ焼き器なんだけど、埋まっちゃってますよね。水が」

オープン4日前…店の中は全て水浸しとなり、新品だった機械は、ほとんど使えなくなってしまいました。あれから、壁を全てはがし、機械もほとんど買い替えたといいます。

<川口隆嗣さん>
「実際ここに当時の記録を残しているんですけど、だいたい135cmあります。ここまで水が浸かりましたね。記録に残したかったですね」

1年前の教訓を踏まえ、大雨の予報がある際は止水板を設置して万全の備えをしています。

<川口隆嗣さん>
「オープンした当初も復活オープンできてよかったねとか、がんばってねとかいう声をいただいて本当にありがたかったですし、被害がありましたけど、悪いことばかりではなかったなと、いまでは思います。2度目は勘弁してほしいですけどね」

復興が進む中、行政も動き出しています。

<静岡市建設局>
「市道において冠水2か所、倒木3か所により通行止めが発生しています」

静岡市は、風水害に限定した総合防災訓練を初めて行いました。

<職員>
「停電が10世帯、20世帯じゃなかった場合、どれくらいのニーズがあるのか。備蓄物資で賄えるのか」

実践的な訓練とするため、職員には事前に被害の想定を示さずに行われました。

<職員>
「布沢の自治会長からの報告で、大規模な土砂崩れが発生。複数の住家に被害があり、住民が土砂に巻き込まれた模様」

限られた情報の中で、被害の想定と応急対策を検討することが求められます。

<職員>
「自家発電が停止した場合の断水発生戸数は約1万3000戸」

職員の口から出た「断水」。清水区では2022年、6万3000戸が断水し、完全に復旧するまで13日を要しました。

興津川の承元寺取水口に土砂や流木が詰まり、取水ができなくなったことが要因で自衛隊が撤去作業を行いました。静岡市は、同じ被害を繰り返さないよう、取水口の上部にふたを設置しました。

<静岡市 清水水道施設担当課 角谷卓昭課長>
「川の水位が上がってきて川からいろいろなものが流れてきて、取水口のてっぺんをこえて、一気に取水口の内部に入ってきたことによって取水不良が起きてしまった」

2023年8月、工事が完了。800kgの重さまで耐えられるといいます。

<静岡市 清水水道施設担当課 角谷卓昭課長>
「去年はかなり長い期間断水が起こってしまったので、同じ轍を踏まないような形で対策を進めていかなくてはいけないと思っています」

対策を強化したい静岡市は、新たな取り組みを始めました。

<鈴木勝貴さん>
「こちらが災害時に水を提供する井戸です」

静岡市が7月から始めたのは、「災害時協力井戸制度」です。災害が発生した際、近隣住民に井戸水を提供してもらう制度。2022年の断水時、飲料水よりも生活用水の確保に困った経験からです。

葵区で不動産業を営む鈴木さんは、企業としての地域貢献を考え、8月、この制度に登録しました。

<鈴木勝貴さん>
「人間が一番必要なものは水なので、災害のときに1人でも多くの人に役立つようになればいいなと思います」

最悪の事態の想定と最大限の構え、台風15号が与えた一番の教訓です。

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