【経団連】オンライン営業に特化した薬局業態の容認を要望/「従来発生していたコストの削減と、より多くの事業者による市場参入が期待できる」

【2023.09.13配信】日本経済団体連合会(経団連)は9月12日、提言書「2023年度規制改革要望ー日本経済にダイナミズムを取り戻すー」をまとめ、公表した。この中でオンライン営業に特化した薬局業態の容認を要望した。「従来発生していたコストの削減と、より多くの事業者による市場参入が期待できる」などとしている。

当該の要望箇所は以下の通り。

No. 50. オンライン営業に特化した薬局業態の容認

<要望内容・要望理由>
2022年にオンライン服薬指導要領(2022年9月30日、薬生発0930第1号)がまとめられるなど、近年オンライン服薬指導は大幅に規制緩和された。また、薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキング・グループが公表したとりまとめ(令和4年7月11日、厚生労働省)では具体的な対策(アクションプラン)として調剤の外部委託の一部緩和(一包化)が掲げられており調剤受託専門薬局という形態も今後想定され得る。

しかし、オンラインでの処方・販売に特化した薬局・店舗販売業(以下「薬局等」)についてはいまだ認められていない。このため、薬局等は患者との対面機能を持たなければならない状況にある。

健康保険法第63条第3項では、(患者が)「自己の選定するもの」から保険給付を受けるものとされているが、これは患者が公道から保険薬局を選定できなければならないと解され、保険薬局開設にあたっては公道からの容易なアクセスを求める行政指導が行われている。厚生労働省保険局医療課発の事務連絡「保険薬局の指定について」でも、公道から容易にアクセスできなければならないとみえる記載がある。

また、同省の「薬局、医薬品販売業等監視指導ガイドライン」では、薬局開設者又は店舗販売業者は開店時間の1週間の総和が30時間以上であることが必要とされている。同ガイドライン及び「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」では、開店時間中の薬剤師の常駐も求められている。さらに、薬局等構造設備規則(厚生労働省令)においては第1条の第1号(外観)、第4号(面積)、第5号(明るさ)、第10号(調剤室)にて対面での販売、授与のみを前提とした各種の規制が存在するため、店舗としての設備を維持しつづける必要があり、金銭的・人的コスト面において無駄が発生している。加えて、当該規則が医薬品の安全性確保の上でいかなる便益があるか必ずしも明らかでない。オンラインでの営業に特化した薬局等には患者が実際に訪れる必要はないため、これらの規制が想定していた事例がそもそもそぐわない状況にある。

2021年度の「規制改革・行政改革ホットライン」における厚生労働省の回答では、「一般用医薬品のインターネット販売に係る制度見直し」の要望に対し、「対応不可」との回答があった。この根拠として「一般用医薬品を販売するにあたっては、薬剤師や登録販売者による情報提供や確実な相談応需を行う体制が必要です。また、当該医薬品の販売を行う店舗の薬剤師・登録販売者が責任を持つことが困難な事態が発生しないよう当該店舗での管理の下、貯蔵、陳列している医薬品を販売することが求められます。」との回答があったが、店舗形態でないとそれらが行えない理由が必ずしも明確でなく、オンラインでの営業に特化した薬局等でも、それに適した構造設備規則を整備することにより、情報提供や相談応需、及び適切な医薬品の管理は対応可能であると考える。

そこで、近年の環境変化に鑑み、清潔に保つなどの医薬品の安全な販売に必要な現行基準は存置しつつも、診療から調剤までオンライン完結できる仕組みを実現すること及びオンラインでのOTC医薬品購入の利便性を向上させセルフメディケーションの一助とするため、対面機能を持たず、オンラインでの営業に特化した薬局等の業態を容認すべきである。

具体的には、

① 保険薬局における「公道に面する」規制の撤廃
② 開店時間の義務付け(週30時間以上)の撤廃
③ 実店舗内での薬剤師・登録販売者配置等の緩和(オンラインでの相談応需・情報提供を行う者の実店舗以外での配置を可能にすべき)
④ 薬局における調剤室・待合室基準の緩和、薬局等の店舗における医薬品陳列ルールの緩和が必要である。

これにより、オンラインでの営業に特化した薬局等を可能とすることで、オンラインに特化した薬局等は合理的な経営を行うことが可能になり、従来発生していたコストの削減と、より多くの事業者による市場参入が期待できる。

これが薬局DXを推進し、ひいては患者の利便性向上や薬剤師の多様な働き方につながるものと考える。なお、貯蔵等に必要なルール(換気設備、冷温設備等)は引き続き適用することにより、適切な構造設備は維持できると考えられる。また、店舗毎の特徴を活かした機能分化・連携を強化し、一包化等の対物業務については、機械化が進む薬局に外部委託するなどして効率化を図ることで、薬剤師は、重複投薬や飲み合わせ等の処方箋内容チェック、医師への処方箋内容の照会、より丁寧な服薬指導、在宅訪問での薬学管理、効果や副作用あるいは服薬状況の有無に関するフィードバック、処方提案や残薬の解消等、専門性を活かした対人業務に集中し、患者に寄り添った付加価値の高い服薬指導を実施することが可能となる。

<根拠法令等>
保険薬局の指定について(平成28年3月31日、厚生労働省保険局医療課事務連絡)別紙1
健康保険法第63条第3項
薬局等構造設備規則第1条、第2条
薬局、医薬品販売業等監視指導ガイドライン
薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令

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