所属タレントの広告起用の見直しも  ジャニーズグループ 取引先は226社、 1割強が上場企業

~ 「ジャニーズグループ」取引先調査 ~

創業者の性加害問題に揺れる(株)ジャニーズ事務所とグループ会社13社(以下、ジャニーズグループ)の取引先は、1次・2次を含め226社あることがわかった。取引先の1割強(13.2%)が上場企業で、これらの一部企業はすでにジャニーズ事務所の所属タレントの広告起用を見直すなど、対応に追われている。

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約390万社)から、ジャニーズグループとの直接取引(1次)、間接取引(2次)のある企業を抽出した。226社のうち、30社(構成比13.2%)が上場企業で、売上高100億円以上が80社(同35.3%)、資本金1億円以上が92社(同40.7%)だった。大手企業との取引比率が高く、取引の見直しが増加する恐れがある。
8月に公表された外部専門家による再発防止特別チームの調査報告書で、ジャニー喜多川氏の性加害の事実や適切な調査などの対応をしていなかったことが認められた。問題の背景は、同族経営の弊害のほか、ガバナンスの脆弱性が挙げられた。
国際的にコンプライアンス(法令遵守)違反への対応は厳格で、取引の縮小や打ち切りも少なくない。所属タレントの広告起用を見直す動きは、取引の継続が少年への性加害を追認しているとみられかねず、自社のイメージダウンやガバナンス不全と捉えられるからだ。
ジャニーズグループは、日本を代表するエンターテインメント企業の一つで、幅広い分野の企業と取引している。だが、未上場で外部のチェックが効きにくく、これまで決算の官報公告もほぼ行っておらず、財務状況などの情報開示にも消極的だ。企業は社会の公器だが、その分野で絶対的な存在になると、経営者の考え方次第でステークホルダーとの関係が歪になりかねない。
ジャニーズグループは大株主(資本)と経営者(経営)が一体で、株主や取引先の意向に左右されることはなかった。それだけに今後、どこまでコンプライアンスを徹底できるか注目される。

※本調査は企業情報サービス(tsr-van2)の企業相関図から、ジャニーズグループの仕入先、販売先を1次(直接取引)、2次(間接取引)に分けて抽出し(重複除く)、業種、規模などを分析した。
※対象は、ジャニーズ事務所と同社ホームページに掲載がある13社。


取引先の1割強が上場企業

1次・2次の仕入先及び販売先は全国で、合計226社あった。このうち、東証プライムが21社(構成比9.2%)、同スタンダード7社(同3.1%)、同グロース2社(同0.8%)で、上場企業は計30社(同13.2%)あった。
1次取引先は、未上場企業が中心だが、2次に広げると、間接的に代理店などを経由した取引の上場企業が大幅に増えた。

売上高別、取引先計は100億円以上が35.3%

売上高別では、取引先は100億円以上が80社(構成比35.3%)だった。内訳は、最多が10億円以上100億円未満で59社(同26.1%)、次いで100億円以上1,000億円未満の45社(同19.9%)、1億円以上10億円未満の43社(同19.0%)と続く。1,000億円以上も35件(同15.4%)あった。
仕入先では、1次は比較的規模の小さな企業が多く、2次は売上高の大きな企業が大幅に増える。一方、販売先は1次に100億円以上が2割強あり、2次では64.2%が100億円以上だった。

資本金別、1億円以上が4割

資本金別では、取引先は1億円以上が92社(構成比40.7%)と4割が大企業だった。次いで、1千万円以上5千万円未満が68社(同30.0%)、5千万円以上1億円未満が33社(同14.6%)の順。
資本金1,000万円未満は個人企業などを含めて33社(同14.6%)にすぎず、資本金が比較的に大きな企業との取引が多いことがわかった。

産業別、サービス業他が最多の89社

産業別では、取引先の最多はサービス業他が89社(構成比39.3%)で、情報通信業の49社(同21.6%)、製造業の33社(同14.6%)、卸売業の24社(同10.6%)が続く。
細分化した業種別では、大手広告代理店など広告業が29社で最も多く、テレビ番組制作業の12社のほか、CM契約を結ぶ持株会社との取引も多かった。

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