FIA、F1マシンの50kg減量&小型化を目指す。レッドブルが望むPU規則の修正には否定的

 FIAは、2026年のF1技術レギュレーション変更において、マシンの軽量化を図る意向を示している。F1マシンの最低重量は年々引き上げられ、今年の規則では798kgに定められている。ドライバーたちは、現世代のF1マシンは非常に重く、世界最高のレーシングカーが備えるべき機敏性に欠けていると訴えてきた。

 FIAのシングルシーター・ディレクターを務めるニコラス・トンバジスは、イタリアメディアのインタビューの中で、前のマシンに追従しやすく、追い越しが容易であるマシンを作り上げるための措置について、次のように説明した。

「作業の序盤の段階から、2026年のマシンに関しては、現行マシンよりも空力的抵抗を大幅に小さくする必要があることを確認することを目標とした。そうして実行されたシミュレーションでは、抵抗レベルを低くすること、つまりドラッグを小さくすることが可能であることが分かった。それができればマシンはより速くなる」

「我々が行ったのは、ホイールの寸法を狭くし、リヤウイングを小さくするといったことで、さらにマシンの重量を50kg減らすことも目指している。これによって、現世代のマシンよりも小型なシングルシーターが出来上がる。より短くて幅が狭く、つまりより機敏なマシンだ」

 現在はブレーキングエリアが非常に短いため、FIAはマシンのストレートラインスピードを上げ、かつコーナリング速度を低下させ、ブレーキングエリアを増やすための基本コンセプトに取り組んでいる。

「マシンが軽くなると、コーナリング速度を少し下げることができる」とトンバジス。

「軽いと、ストレートでより速くなるが、発生するダウンフォースは少なくなるからだ。従って、ラップパフォーマンスを確保するため、ハイブリッドのエネルギー回収パワーを高める必要があるだろう」

2023年F1第14戦オランダGP スタート

 2026年の新パワーユニット規則に関して、レッドブルが変更を求めているのはこの部分だ。次世代パワーユニットでは、電気エネルギーの比率が高められ、最高出力の50パーセントをエンジン、50パーセントを電動モーターから得ることとなる。レッドブルはこの変更に懸念を示し、比率の見直しを提案している。

 一方、他のマニュファクチャラーは基本的には大幅変更の余地はないと主張している。FIAは同意見であり、トンバジスは今回改めてFIAの意向を示すとともに、レッドブルとマックス・フェルスタッペンの「2026年のマシンは運転不可能なものになる」という主張を否定した。

「エネルギー回収とそのマネジメントがどのように行われるべきか、そして空力構成に従ってオーバーテイクがどのように行われ得るのかを理解するために、多くの研究を行ってきた。これらのパラメータを変更して、多数のシミュレーションを実行し、十分に機能すると思われる解決策を見い出した」とトンバジス。

「2026年のパワーユニットを現行車に搭載した場合、結果はおそらく、言われているようなシナリオになるだろう。だが、我々はこの数カ月で非常に前向きな開発を成し遂げてきた。そのため、そういったコメントは古い状況に基づくものといえる。エンジンとシャシーは一緒に進化しなければならない。一方を抜きにして考えることは不可能なのだ」

 トンバジスの今回の発言から考えると、レッドブルの要望は通りそうもない。さらに、アルピーヌのリーダーシップ交代により、ローラン・ロッシとオットマー・サフナウアーが去ったことで、ホーナーとレッドブルは、マニュファクチャラーズ・コミッションにおいてこの問題についての唯一の味方を失ったと考えられる。そのため、2026年からパワーユニットを自社で製造するレッドブルは、既存のパワーユニットマニュファクチャラーを相手に、非常に厳しい戦いを強いられることになるだろう。

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