<社説>岸田改造内閣発足 初入閣増も乏しい刷新感

 第2次岸田再改造内閣が発足した。初入閣が11人、女性閣僚が過去最多に並ぶ5人である。確かに外見は目新しさを装っているが、官房長官、財務相、経済産業相、国土交通相など主な閣僚は留任となり、新鮮さには欠ける。党人事でも麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長は続投となった。 岸田文雄首相はこの顔ぶれで政権浮揚を図る考えであろう。しかし、支持率が上昇するかどうかは不透明だ。国民の目から見て、刷新感に乏しいのである。

 何よりも河野太郎デジタル相が留任となった。マイナンバーカードとの一本化による健康保険証の廃止を断行するという意思の表明だと国民は受け取るであろう。

 全国でトラブルが相次いでいるマイナ保険証の信頼性に多くの国民は疑問を持っている。健康保険証廃止に不安感を抱いている人は多い。現時点でも政府は抜本策を提示しないまま廃止方針を貫こうとしている。このような岸田内閣の姿勢に国民は厳しい目を向けるのではないか。

 今回の内閣改造は2022年8月以来である。不祥事で4閣僚が辞任に追い込まれ、国民の不評を買った。党全体も含め、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりが取り沙汰されてきた。支持率でも岸田内閣に対する国民の評価は芳しくなかった。その中で、国のかたちを変える重大な政策転換があったことは見逃せない。

 まず挙げなければならないのが敵基地攻撃能力(反撃能力)の保持を明記した安全保障3文書の閣議決定である。防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の見直しにも踏み込んだ。殺傷能力を持つ武器の輸出が進む可能性がある。専守防衛という戦後日本の防衛政策の国是が転換したのだ。

 エネルギー政策も改められた。福島第1原発事故の教訓を踏まえた「脱原発」方針を改め、原発の60年超過運転を可能とする束ね法「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」を成立させた。

 これらの重大な政策転換は十分な国民の議論がなされないまま実行された。岸田首相の「聞く力」はどこへいったのだろうか。

 第2次岸田再改造内閣は従来の政権運営を踏襲するであろう。しかし、十分な国会論議を経ないまま重大な政策転換が繰り返されてはならない。沖縄に関しても、辺野古新基地建設に見られる強行策は容認できない。

 沖縄に関わる閣僚では外相に上川陽子氏、防衛相に木原稔氏、沖縄担当相に自見英子氏(地方創生相などと兼務)を充てる。上川氏、自見氏は沖縄との関わりは薄いが、木原氏は作家による「沖縄2紙をつぶす」という発言があった15年の自民党勉強会の代表者であった。沖縄にどのような姿勢で臨むのか注視したい。

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