「聞いてあげて聞く耳を持って何ができるか一緒に探していく」元の暮らしを取り戻すため…動き出した伊豆山の人々【現場から、】

2021年7月に起きた土石流災害で被害を受けた静岡県熱海市伊豆山の被災地は9月1日に警戒区域が解除され、約2年ぶりに立ち入りができるようになりました。元の暮らしを取り戻すために、伊豆山の住民たちはそれぞれの思いを胸に動き始めています。

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警戒区域が解除された9月1日の夜、被災エリアに集まったのは地元の消防団です。新たに設置された消火栓を使って、放水訓練を行いました。

<放水訓練の様子>
「仮設で引っ張ってるから水量が足りない。でも、ないよりは」

<熱海市消防団 第4分団 押田貴史分団長>
「消防団は伊豆山地域の人。ほぼほぼそうなんで、地元意識が強いです。自分たちもこうなってしまった街を守ろう。(災害が)ないことを祈りますけど、しっかりした対応ができるように訓練をやっていきたい」

元の暮らしができるように動き始めた住民たち。

伊豆山で弁当店を営む高橋一美さん。災害発生直後から復興支援団体「NPO法人テンカラセン」を立ち上げ、ボランティアでお年寄りに弁当を届けるなど被災地に寄り添ってきました。高橋さんはこの2年間、伊豆山の人たちが我慢しながらの生活している姿をみてきました。

<NPO法人テンカラセン 高橋一美さん>
「いまのおばちゃんもこの道が通れないときは、何百段って参道を歩いて家に帰っていたので、はかり知れない気持ちの中で生活していると思いますよ。人には言わないし、言えないし」

先週、高橋さんとともに伊豆山のお年寄りの家を訪ねていたのは南條吉輝さん。焼津市出身の南條さんは、仙台を拠点に災害支援の活動をするNGO団体「国際NGO オペレーション・ブレッシング・ジャパン」のスタッフです。

土石流災害の直後から伊豆山に入り、お年寄りの困りごとを聞いたり、子どもたちの心のケアなどに当たってきました。この日は、顔なじみになった1人暮らしのお年寄りを訪ねました。

<被災者>
「こんなつまらない話してるの。だけど、この方がいい方だから、いつもお相手してくれて」
Q.災害の時、何が大変でしたか?
「湯河原まで買い物に行ったの、湯河原まで行ったのよ、わたし。5時間かかった。食べるものがないから。2回行った。この辺の人全部避難しちゃって誰もいないわけだよ」

<南條吉輝さん>
「ご飯食べれないときにゼリー(飲んでください)」

<被災者>
「こういうふうに、いただきものばっかりするんですよ、こちらは」

南條さんはいまも毎週、伊豆山を訪れ、住民たちの支援を続けています。

<南條吉輝さん>
「いつも聞くというのを大事にしてて、どんどん自分の思いを話してくださるので、ちょっとでもその時間がストレス解消になったりとかなったらいいなと思って」

<NPO法人テンカラセン 高橋一美さん>
「感謝しかないですよね。僕らには行き届かなかった場所だったり、住民ではない人の目線でサポートしてくれてるっていうのはすごく頼りになるし、ありがたかったですね」

避難生活を送る100世帯のうち、41世帯が帰還を希望。しかし、9月13日現在、実際に帰れたのはわずか3世帯です。

<NPO法人テンカラセン 高橋一美代表>
「ここの将来像が3年、5年、10年っていう未来予想図ができてないから、自分自身もどうしていいかわかんないなと思いますけど、聞く耳を持って、何ができるか一緒に探していく、これからやってこうよ。これならできそうだねっていうところからやっていくのが1番の手助けになるのかなと思いますけどね」

高橋さんや南條さんのように伊豆山の力になりたいという人は大勢います。ただ、復興に向けての手伝いをしたくても住民が何から手をつけていいか分からないという現状もあり、ボランティアとしての関わり方も単純ではありません。

行政が復興への明確な道筋を立てることでボランティアの力が最大限発揮されると感じました。

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