18年ぶり「アレ」へ神頼み、試合前に押し寄せるファン タイガース快進撃を後押しする甲子園の「聖地」

阪神の「アレ」を願って書かれた絵馬=西宮市甲子園町、甲子園素盞嗚神社

 猛烈な速さでマジックナンバーを減らし、歓喜の瞬間が目前に迫ったプロ野球阪神タイガース。その勢いを後押しする聖地が、本拠地・甲子園球場(兵庫県西宮市)のすぐ隣にある。「甲子園神社」「タイガース神社」とも呼ばれ、2003、05年のリーグ優勝にも縁深い甲子園素盞嗚神社。境内には「アレ(優勝)」を願う絵馬が並び、試合前には縦じま姿の参拝者が押し寄せている。(吉田敦史)

 畑中秀敏宮司(68)によると、02年のシーズン開幕前、就任直後の故・星野仙一監督が選手らと参拝したのがドラマの始まり。星野監督のファンらが詰めかけて絵馬を書き、その重みで絵馬掛けが倒れそうになるほどだった。

 畑中宮司はその夏、絵馬掛けの前にホームベース形の敷石を設置。春に参拝した阪神選手の1人が高校球児時代に同神社のお守りを持っていたと話したことから「ここを出発した球児が、大成して帰ってきてくれたら」との思いを込めたという。星野阪神は翌年、18年ぶりのリーグ優勝を果たした。

 祭神のただならぬ力を感じた畑中宮司はさらに、大きな石の「野球塚」を造ることに。優勝直後の星野監督に揮毫してもらうつもりだったが、既に退任を決めていたため、04年の岡田彰布監督に依頼した。同年8月に塚が完成すると、岡田阪神は翌05年にリーグを制した。

 今年は絵馬掛けに、正月早々から「アレ」「ARE」の文字が躍った。現実味を帯びた夏以降も増え続けており、畑中宮司は「マジックの減り方が速すぎる。もう少し長引かせてくれてもいいけど」と戸惑いつつ「やっぱりこの勢いで決めるのが一番ですね」と願う。

 大阪府豊中市の会社員男性(56)は今年4月27日、同神社で初めて御朱印帳を書いてもらったところ、阪神が巨人に15-0で大勝。以後は観戦前に欠かさずお参りするようになったといい、「18年ぶりのアレは、巨人に勝って決めてほしい」と願いを込めた。

 同府茨木市の会社員男性(64)は前回、前々回のリーグ優勝をテレビで見た。13、14日の巨人戦チケットが取れているといい「目の前でアレの瞬間を見届けたい」と切望する。

 東京生まれ東京育ちながら小学生の頃から阪神ファンという会社員男性(58)=大阪市浪速区=は、40歳を過ぎてから大阪に転勤してきた。以降、毎シーズン約30回は球場に駆けつけてきた。オリックスも好きで、今年は日本シリーズでの関西対決を期待していたが、このほど辞令を受け、東京へ戻ることに。引っ越しは9月22日だといい「どうかそれまでに、阪神がアレを決めてくれますように」と手を合わせた。

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