認知症の人が利用しやすい共同温泉に 別府市中部地域、当事者の声聞き改善へ【大分県】

浴場についての話をする認知症当事者や市中部地域包括支援センター職員ら=別府市石垣東の南石垣温泉
手すりを持って浴槽に入る認知症者=別府市若草町の餅ケ浜温泉

 【別府】別府市中部地域包括支援センター(石垣東)は、認知症になっても共同温泉(区営温泉)を利用しやすい環境に整えるためのプロジェクトを始めた。長年、親しんできた地域の温泉での入浴を継続してもらうことが目的。認知症の人に優しい施設は一般客にも利用しやすいとの考えで、地域住民に認知症への理解も深めてもらう。

 センターによると、中部地域圏内で一般的に利用できる共同温泉は十数カ所。1人で入浴する認知症者を心配する家族の声が寄せられていたという。施設からも履物を間違えるといったトラブルの相談があった。

 判断力が低下した認知症者が温泉に通い続ける環境を整えようと、「認知症にもやさしいじもせん(地元温泉)推進プロジェクト」を始めた。

 本年度は4カ所の温泉施設を対象にする。6日までに2回、認知症ピアサポート活動事業所(大分市)を利用する50~70代の延べ15人が南的ケ浜、北的ケ浜町、南石垣、餅ケ浜各温泉を訪れた。浴場や脱衣所の動線を確認し、実際に入浴した。

 当事者からは「靴置き場が分かりにくい」「浴槽の縁と床の色が一緒だと戸惑う」「脱衣所の棚で脱いだ服がどれなのか分からなくなるかも」などさまざまな意見が出た。センターは温泉の管理・運営団体と共有し、できる改善策から着手する。「じもせんガイドブック」も作る予定。

 センター管理者の管野陽子さん(46)は「じもせんは市民にとって日常的な場所。交流や情報交換ができ、安否確認にもなる。認知症者を排除するのではなく、住民だれもが安心して過ごせる地域づくりを進めていきたい」と話している。

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