「不誠実な説明で合意書」 風力発電計画で住民団体、和歌山県に事業者への指導要望

県側(右)に風力発電事業の事業者への指導を求める住民団体メンバーら=13日、和歌山県庁で

 和歌山県の印南町と日高川町の山間部に計画されている風力発電事業を巡り、事業者が地権者に対し、不誠実な説明で、発電施設の設置に同意を求める「合意書」を集めているとして、地元の住民団体が13日、県に対し、改めるよう事業者に指導してほしいと申し入れた。一方、事業者は紀伊民報の取材に対し「説明を尽くして理解を得ている」と反論している。

 再生可能エネルギー事業などを手がける「東急不動産」(東京都)が、風力発電施設を最大で22基設置し、最大9万4600キロワットの発電を目指す計画。

 県に要望した「印南日高川風力発電建設を考える会」によると、合意書は印南町の一部地区の地権者に配られている。

 その案内文には、土地の契約を強制するものではなく、調査への協力を求めるものと説明がある。しかし合意書には、地権者は同社に対し、事業に必要な施設を設置し稼働させることに同意すること▽事業の実施に向けた関係機関との協議や申請など手続きに協力すること▽同社の事前の承諾なしに第三者に土地を賃貸、使用、利用権利を設定させないこと▽同社が事業を第三者に譲渡する場合、合意書の地位を第三者に承継すること▽同社か地権者が合意書に違反し、相手方に損害を与えた場合は賠償すること―などが記載されている。事業者が事業協力費として年額10万円を地権者に払うことも示している。

 住民団体世話人の高田有さんがこの日、県庁で中場毅環境政策局長に対し、事業者に不誠実な説明で合意書を集めることをやめ、すでに集めた合意書を破棄するよう指導すること、不当な手段で集めた合意書を県への申請書類として認めないことを求める要望書を手渡した。その上で「だまし討ちのような合意書を取っている。ルール違反であり指導してほしい」と求めた。

 中場局長は「事実を認識して、関係する部署と情報共有したい」と述べ、事業者に事実確認する方針を示した。

■事業者「説明尽くす」

 事業者の広報担当者は、紀伊民報の取材に対し「合意書は地権者らに事業全体に協力を頂く内容だが、土地の契約を強制するものではない。対面で会って説明を尽くし、理解を得ながら進めている。地権者からは直接、(苦情などの)意見は寄せられていない」と話している。

 この計画を巡っては、県が8月下旬、環境影響評価の手続きの中で、地形や環境の問題から「規模の大きな風力発電事業には著しく適さない場所と考えられる」などとする「知事意見」を経済産業相に提出している。

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