追い込まれた岸田政権、いまこそ大胆な政策を!|和田政宗 第2次岸田再改造内閣が昨日発足した。党役員人事と併せ、政権の骨格は維持。11人が初入閣し、女性閣僚は5人と過去最多タイとなった。岸田政権の支持率向上を狙うが、早速、「この内閣は何をする内閣なのか?」という疑問の声が私のもとに寄せられている――。(サムネイルは首相官邸HPより)

国民民主党との連立、党内でも期待の声

今回の内閣改造にあたっては、国民民主党との連立の話が出ており、自民党内でも期待の声が高かった。それは、岸田政権が掲げる「賃上げ」について、国民民主党は民間労働組合を支持母体としていることから労使双方で取り組めるようになること。

「負担感が強い」と言われる岸田政権において、ガソリン高騰におけるトリガー条項発動など、国民の負担軽減や各種政策の一段の引き上げを連立を機に一気に行えること。さらに、総裁任期中に実現するとしてきた憲法改正へ大きく前進することなどが考えられたからだ。

しかし、最終的に現段階における連立は見送られた。

岸田総理は、「国民生活を応援する大胆な経済政策を実行する」と内閣改造後の記者会見で表明した。今後はこの経済対策が国民の期待を集める形かつ実効性のある内容になるかが重要である。「次元の異なる少子化対策」についても同様である。

国民の声の多くは「異次元の少子化対策に全くなっていない」というものである。公立小中学校における給食費無償化実現への道筋が立ったことへの評価の声はあるが、児童手当の拡充については不十分との声が多い。自らも幼いお子さんを子育て中の加藤鮎子こども政策担当大臣の手腕にも期待したい。

ただ、こども家庭庁創設にあたって議員連盟立ち上げの中心となった自見英子参院議員が、入閣にあたりこども政策担当でなく地方創生担当大臣となったのは何故なのだろうか。

いずれにせよ、国民の間には少子化対策においても経済対策においても閉塞感が漂っている。思い切った政策を打ち出すことが重要である。

このままでは単独過半数を大きく割り込む

政策があまり変わらないと評価され、現状が続いた場合、自民党は衆院選において大変厳しい結果が想定される。7月末に行われた仙台市議選では、自民党は前回に比べ計2万3800票減らした。

仙台市は、衆院2選挙区に分かれており、衆院1選挙区あたりでは1万1900票減らしたことになる。これを前回の令和3(2021)年の衆院選に当てはめるとどうなるか。自民党は39の小選挙区において、逆転を許し議席を減らすこととなる。

前回の自民党263議席(無所属2人が選挙後入党)から引くと224議席になり、さらに比例区の得票も減らして獲得議席が減ることを考えれば、単独過半数233議席を大きく割り込むという結果となる。単純には計算できないという留保をつけたとしても、自民党にとって恐ろしい結果となることが想定される。

国民の岸田政権への思いは、安倍政権、菅政権と明らかに違う。安倍政権では「アベノミクス」による経済の先行き見通しの明るさ、菅政権では新型コロナ禍を何としても乗り切って経済を回復させようという、将来の明るい展望を皆が描き努力していた。

しかし、岸田政権においては「頑張っても負担が増えるだけ。将来は暗い」という声が聞こえる。この転換がなされなければならない。

子供1人あたり1000万円給付を!

異次元の少子化対策においては、抜本的な政策引き上げが重要と考える。「少子化対策」でなく「多子化」に向かうような思い切った政策をいま打たなければ、取り返しがつかなくなるという危機感が必要であるし、子を将来授かりたいと思う夫婦やこれから結婚しようとするカップルが安心して出産子育てができる環境づくりをすべきである。

私は、これまで提唱してきたように、子供1人あたり1000万円給付を行うべきと考える。誕生時の一括給付でも、誕生時、3歳時、6歳時、9歳時の分割給付でも構わない。子供を産み育てることが「経済的に負担である」という気持ちから、子供を産み育てることが「家庭の幸せだけでなく、豊かにも暮らせる」と思うような大胆な施策が必要である。

その財源は、「子供国債」を発行すべきである。子供への投資は、将来への投資であるから国債を発行しても何ら問題ないし、長年にわたり日本学生支援機構の無利子奨学金は建設国債から財源が充てられている。社会保険料の増額によって充てることや、社会保険料の増額がならないなら医療や介護の予算を切り詰める必要があるとの論は、私は暴論であると思う。国民生活を苦しめるだけだ。

そもそもこうした論が出てくること自体が理解不能である。税収は昨年度、過去最高を更新し、3年連続過去最高を更新している。前年度から4兆995億円も増えており、税収増分を子供子育て政策に充てたり、経済をより活性化するための減税に回せば、国民のマインドは大きく転換する。

防衛費増額の時もそうだが、「何か政策を打つたびに増税か」という国民の思いに、「そうではない」と明確に答えていく政策が重要であるし、新型コロナ禍をようやく乗り切ろうとしている人たちや、ゼロゼロ融資の元本返済が始まっての中小企業の苦境を見れば、負担増政策などあり得ない。

私は岸田政権は国民感情からもかなり追い込まれた状態だと認識している。だからこそ思い切った政策の引き上げや、憲法改正をはじめ、これまでの政権が成し得なかったことの実現を目指すべきである。補正予算案の編成もある。

私は党内でしっかりと提起し、我が国の将来と国民のために踏ん張っていきたい。

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和田政宗

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