【ラグビーW杯】伝統のスタイルを貫くイングランドに立ち向かう日本。優勝候補相手にジャイキリなるか

フランスで開催中の「ラグビーワールドカップ2023」。大会は2週目に入り、各チームが第2戦に臨む。初戦でチリを42-12で下した日本(大会前の世界ランキング14位)は、日本時間・9月17日深夜4:00から翌日早朝にかけて、前回大会準優勝で今大会も優勝候補に挙げられているイングランド(8位)と対戦する。イングランドは初戦でアルゼンチン(6位)を27-10で破っている。

日本は初戦のチリ戦で、キャプテンでフランカー(FL)/ナンバーエイト(No.8)の姫野和樹選手(トヨタヴェルブリッツ/日本)が負傷で急きょ欠場。その影響もあったのか序盤は動きが固く、立ち上がりに攻め込んだところでボールを失ってカウンターアタックを浴び、6分に先制トライを奪われた。8分にロック(LO)のアマト・ファカタヴァ選手(リコーブラックラムズ東京/日本)がトライを返したが、その後は攻守にミスが目立ち、試合が膠着(こうちゃく)状態に。最終的に5トライを奪い、30点差をつけて勝利したものの、反省点が多く目につく試合だった。

ただし、勝ち点4に加え、トライ数4以上に与えられるボーナスポイント1を獲得したこと、松田力也選手(埼玉パナソニックワイルドナイツ/日本)がゴールキックをすべて決めたことは評価できる。大会直前のテストマッチでキックのミスが続いた松田選手が、自信と調子を取り戻したことは大きい。

ラグビーの母国・イングランドは、常に伝統のスタイルを貫いてくる。パワフルな大型フォワード(FW)を並べ、スクラム、ラインアウトで優位に立つ。攻撃では距離の長いキックで敵陣深くまでボールを運び、FW陣が攻め込む。相手が重圧に負けて反則を犯したら、ペナルティーゴール(PG)を着実に決めて得点を重ね、守備でも前に出て相手を自由に動かせないようにする…というスタイルだ。

今大会も高い身体能力を誇るLOのマロ・イトジェ選手(サラセンズ/イングランド)ら強力FWをそろえており、アルゼンチン戦でも立ち上がりに退場者を出し、70分以上を14人で戦う苦境に立たされながらも、キックで着々と点数を重ね、南米の雄に快勝。PG6本に加え、流れの中でのドロップゴール(DG)を3本連続で決めてのけたスタンドオフ(SO)のジョージ・フォード選手(セール・シャークス/イングランド)の技術は圧巻だった。SOのレギュラーでキャプテンのオーウェン・ファレル選手(サラセンズ/イングランド)が日本戦まで出場停止処分になったことが不安視されていたが、穴を埋める選手が躍動し、チームの一体感が増した感さえある。

日本はイングランドと過去10回対戦し、全敗。昨年11月のテストマッチではスクラムで劣勢を強いられ、ボールを支配され続けて13-52と大敗した。今回もスクラムで力負けすると結果が同じになってしまうだろう。日本は前回の試合後にスクラムを見直し、膝と地面の距離や、前に出る歩幅まで“cm単位”でこだわり、磨き抜いてきた。その成果が問われる一戦になる。幸い、姫野選手は復帰できる見込みで、FLのピーター・ラブスカフニ選手(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/日本)の出場停止処分も軽減され、ベストメンバーが組めそうだ。スクラムで押し負けず、ボールを持ったら動かし続け、相手守備の隙をうかがいたい。

イングランドの選手たちは、日本の選手たちより大きくて重いが、それは運動量が落ちるのがより早いということでもある。必ずチャンスはある。前回大会ベスト8、今大会ベスト4以上を目指す日本にとって、イングランドは超えなければいけない壁。難しいミッションであることは間違いないが、2015年大会の南アフリカ戦、前回大会のアイルランド戦、スコットランド戦に続くジャイアントキリングを見せてほしい。

文/佐藤新

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