バターとチーズでは何がどう違うの?チーズが最初にできたのは羊の胃袋の中?!【図解 化学の話】

バターとチーズは牛乳からできている

バターとチーズ、おなじみの乳製品です。でも、同じように牛乳からつくられるのに、製造法がどう違うのかを考えたことがないかもしれません。簡単にいうと、牛乳の中の脂肪からつくられるのがバター、タンパク質と油脂からつくられるのがチーズとなります。牛乳成分(図1図2)は水分と乳固形分に分けられ、乳固形分は乳脂肪分以外のタンパク質、乳糖、ミネラル、ビタミンに分離されます。バターは純粋に乳脂肪からできたものですが、食塩添加の「有塩 (加塩) パター」と食塩無添加の「食塩不使用パター」がつくられます。また、欧州でよくつくられる乳酸菌で発酵させた「発酵バター」もあります。発酵バターは生乳を一生懸命振って、乳脂肪を凝集させてつくる方法です。1人でも割と簡単につくれます。種類別クリーム(乳製品)と表示されている生クリームをペットボトルに入れ、ひたすら振ればいいのです。一汗かく製造法ですね。チーズは生乳を固めて水分を抜き、発酵・熟成してつくります。これがナチュラルチーズで、ナチュラルチーズを加工したものがプロセスチーズです。

アラブに「アラビア商人が砂漠を横断するとき羊の胃袋でつくった水筒に乳を入れ、ラクダの背にくくりつけて旅をした。水筒の乳で喉を潤そうとしたところ、黄色っぽい水と白い塊(チーズ)ができていた」という面白い逸話があります。「チーズの言い伝え」として語り継がれてきた話ですが、これがチーズ発見の物語。羊の胃袋の酵素が働いて乳が固まり、ラクダが動くことで離水したのでしょう。このつくり方が世界に広まったといわれています。工業的なチーズ生産がはじまったのは、1世紀後半のイギリスやアメリカです。低温殺菌、凝乳酵素レンネットの商業化、遠心式クリーム分離機の発明、乳酸菌の純粋培養、酸度の測定方法の確立などなど。こうして大量生産のプロセスチーズができました。初期のレンネットは子牛の胃袋で調製されていたのですが、現在では微生物がつくり出した酵素が使われています。

牛乳の成分

牛乳・・・乳固形分、水分

乳固形分・・・乳脂肪分、無脂乳固形分

無脂乳固形分・・・その他、ビタミン、ミネラル、炭水化物(乳糖)、タンパク質

牛乳100ml中の栄養成分

表示例

熱量 69kcal
水分 90g
タンパク質 3.4g
脂質 3.9g
炭水化物 5.0g
灰分 0.7g
カルシウム 114mg
リン 96mg
ナトリウム 42mg
カリウム 155mg
ビタミンA 39mg
ビタミンB1 0.04mg
ビタミンB2 0.15mg

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』野村 義宏・澄田 夢久

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』
野村 義宏 監修・著/澄田 夢久 著

宇宙や地球に存在するあらゆる物質について知る学問が「化学」。人はその歴史の始めから、化学と出合うことで多くのことを学び、生活や技術を進歩・進化させてきました。ゆえに、身近な日常生活はもとより最新技術にかかわる不思議なことや疑問はすべて化学で解明できるのです。化学的な発見・発明の歴史から、生活日用品、衣食住、医学の進化までやさしく解明する1冊!

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