阪神V、淡路島出身コンビも歓喜 直球に「覚醒」した村上、4度目盗塁王目前の近本

特製タオルを手に淡路島ポーズを披露する阪神の村上頌樹投手(左)と近本光司外野手=西宮市甲子園町

 本拠地の大歓声を浴び、笑みがはじけた。18年ぶりにプロ野球セ・リーグの頂点に立った阪神タイガースを、投打で支えた村上頌樹投手(25)=兵庫県南あわじ市出身=と近本光司外野手(28)=同県淡路市出身=の淡路島コンビ。待ち望んだ「アレ(優勝)」を成し遂げ、「甲子園で決めたかった。地元で喜べてよかった」と感慨に浸った。(有島弘記)

 村上はプロ3年目の今季10勝を挙げ、防御率もトップを走る。ブレークの裏には、昨季まで2年連続でベストナインに輝き、選手会長も務める淡路島の先輩、近本の献身があった。

 近本は村上が白星を挙げた全試合で安打を放ち、7打点。逆に村上が喫した5敗は、全て近本がノーヒットか死球によるけがで離脱中だった。

 「(普段も)いつの間にか塁に出て、いつの間にか走っている」。村上は4度目の盗塁王に近づく近本の快足に感服する。今月8日の広島戦の八回、左翼線に打球が飛ぶと一塁から悠々と生還し、節目の10勝目を後押ししてくれた。

 昨年末に自主トレーニングをともにした際、近本は村上に対し「覚醒の予感はなかった」と振り返るが、シーズンに入ると直球の質が見違えて良くなっていたという。村上が「今季一番」と胸を張った8月のDeNA戦の一球を例に挙げ、近本は「リリースからキャッチャーまで本当に真っすぐ。低めなのに伸びていく。それは他のピッチャーには絶対ない」と断言。投手の真後ろにいる中堅手だけが見られる「絶景」を興奮気味に語った。

 4月には球団の交流サイト(SNS)で、ともに淡路島の形を手でつくるポーズを披露した。互いに故郷への思い入れは強く、取材時には神戸から見た実家の位置を巡り冗談で言い争う場面も。北部の近本が南端の村上に「遠いもんな」と話を振れば、村上は「いや」と否定。散髪のたびに帰省する近本が「俺はすぐに帰れる」と返せば、村上は「1時間半はかからない」と笑顔で食い下がり、仲の良さをうかがわせた。

 2人が楽しみにするのがオフ。近本は「どこよりも一番いい」とホテルニューアワジ(洲本市)での休暇を思い描き、村上は「おばあちゃんちでゆっくりしたい」と頰を緩める。地元への恩返しを兼ね、合同自主トレの公開も検討中。チームはこれから38年ぶりの日本一を目指す戦いに照準を移すが、古里の期待が何よりの原動力になる。 【近本光司(ちかもと・こうじ)外野手】淡路市出身。東浦中から社高、関学大を経て大阪ガスへ。2018年のドラフト1位で阪神入団。171センチ、71キロ。左投げ左打ち。 【村上頌樹(むらかみ・しょうき)投手】南あわじ市出身。南淡中から奈良・智弁学園高、東洋大と進み、2020年のドラフト5位で阪神へ。175センチ、80キロ。右投げ左打ち。

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