兵庫県淡路市塩田新島の遊園地「淡路ワールドパークONOKORO(オノコロ)」のシンボルで、存続の危機に立っていた大観覧車が、ゴンドラを金色に新調し復活を遂げた。昨年、原因不明の故障をきっかけに大改修を決めたが、高額な費用がネックとなり、一時は工事が頓挫。経営者らのひらめきで逆境を乗り越えた。(内田世紀)
大観覧車は1998年、明石海峡大橋開通に合わせて造られ、阪神・淡路大震災からの復興を願う地元の希望を乗せて回り始めた。高さ約50メートル。ゴンドラは40基、約14分で一回りし、人気アトラクションだった。
しかし2022年5月、開業以来初のトラブルに見舞われた。営業中に入園者を乗せた状態のまま駆動が停止。非常用エンジンが作動し事なきを得たが、故障の原因は分からなかった。
同園は安全を最優先し、主要部品を交換することにした。部品の調達を待つ間にゴンドラも点検。その結果、想像以上に老朽化していることが分かった。
「ゴンドラの交換も必要だ」と早速、費用の見積もりを取ったが、想像以上の高額になることが判明。清水浩嗣支配人(68)は「とても払える額ではない。施設の運営そのものに支障が出る」と頭を抱えた。
ゴンドラ交換の交渉は中断し大観覧車は存続の危機に。従業員からは「何とか復活を」と声が上がった。
妙案を絞り出したのは、同園の運営会社「ONOKORO」の津田豊代表(67)だった。ゴールデンウイークなどの繁忙期でもゴンドラの稼働率は50%ほど。「半分だけ交換してはどうか。新しいゴンドラにだけお客さんを乗せればいい」
発想の転換に清水支配人も「それならできる」と賛同し、交渉を再開。何とか賄える金額を引き出した。
今年に入り、まず傷んだゴンドラ20基を順次取り外した。しばらくは不規則な「歯抜け」状態だったが、「見栄えが良くない」と一つおきに並び替え、新たなゴンドラの完成を待った。
「普通のゴンドラでは面白くない」と、同園はここでも知恵を絞った。
開業当時の地元自治体、旧津名町は1989年、国の交付金で「1億円の金塊」を入手し展示。多くの観光客を集め、全国に町の名を知らしめた。「よし、あやかろう」と新ゴンドラを金色にすることに決めた。
8月下旬、金ピカのゴンドラが到着し、一つ一つ大観覧車に取り付けられた。動きの確認や非常時の訓練を経て、再び回り始めた。
清水支配人は「乗れば金運がアップするかも」とにやり。津田代表は「地元では、金色のバスも走っている。輝くゴンドラに乗って幸せな気分を味わってほしい」と笑顔を見せた。