【ラグビー】開幕戦は激戦も、ロスタイムで無念の逆転負け 青貫新監督は初陣飾れず

慶大は前半10分、上野のペナルティゴールで3点を先制する。27分にトライを奪われ逆転されるも前半終了間際、上野がトライをし5点を返して前半を終える。後半、開始早々4分に永山を投入し試合を動かしに行くと、11分に山田のキックパスに永山が反応して期待通りのトライ。その後再度逆転されるも、30分に永山が強靭なフィジカルを活かし二つ目のトライ。このまま逃げ切りたい慶大だったが、45分、筑波大に集中力を見せつけられ、FWの連続攻撃から最後は平石に逆転トライを許し、終戦。慶大は開幕戦を白星で飾ることはできなかった。

2023年9月9日(土)関東大学対抗戦Aグループ 対筑波大戦 @駒沢オリンピック公園陸上競技場

関東大学対抗戦Aグループ 第1節
慶應義塾大学	2023/9/9(土)12:30 K.O.	筑波大学
前半	後半	ロスタイム:6分	前半	後半
1	2	トライ(T)	1	2
0	0	コンバージョン(G)	1	2
1	0	ペナルティゴール(PG)	0	0
0	0	ドロップゴール(DG)	0	0
7	10	計	7	14
17	合計	21
前半10分 上野(PG)	得点者	前半27分 平石(T)
16/17	ラインアウト	15/18
5/5	スクラム	4/4
4	B.D.ターンオーバー	2
12	ペナルティー	11
4	タックルミス	6
11	ハンドリングエラー	8
慶應義塾大学
#	氏名	身長(cm)/体重(kg)	学年学部	出身校
1	成田 薫	183/104	経3	慶應
2	中山 大暉	176/102	環3	桐蔭学園
3	岡 広将	173/107	総4	桐蔭学園
4	シュモック オライオン	181/100	環4	Mount Albert Grammer School
5	中矢 健太	184/104	総3	大阪桐蔭
6	樋口 豪	174/98	文4	桐蔭学園
7	富田 颯樹	173/93	経4	慶應志木
8	冨永 万作	187/102	商3	仙台第三
9	橋本 弾介	169/77	法2	慶應
10	山田 響	174/82	総4	報徳学園
11	上野 和知	177/82	商4	慶應
12	三木 海芽	167/83	総4	徳島県立城東
13	山本 大悟	174/87	環2	常翔学園
14	大野 嵩明	177/80	法4	慶應
15	今野 椋平	183/86	環2	桐蔭学園
16	酒井 貴弘	169/98	商4	慶應
17	木村 亮介	173/103	環4	慶應
18	小松 秀輔	177/105	環4	慶應
19	藤井 大地	181/98	経3	慶應
20	浅井 勇暉	188/107	総3	仙台
21	森 航希	170/74	環1	桐蔭学園
22	遠矢 虎太郎	170/92	商3	慶應
23	永山 淳	188/94	総4	國學院久我山
筑波大学
#	氏名	身長(cm)/体重(kg)	学年学部	出身校
1	二重 賢治	178/103	体専3	天理
2	平石 颯	178/103	体専4	桐蔭学園
3	麻生 尚宏	181/108	体専3	桐蔭学園
4	本郷 雄斗	188/99	工3	千葉
5	磯部 俊太朗	190/112	体専1	國學院久我山
6	横溝 昂大ショーン	187/91	体専4	福岡
7	梁川 賢吉	188/100	体専4	尾道
8	谷山 隼大	184/94	体専4	福岡
9	白栄 拓也	164/69	体専4	高鍋
10	楢本 幹志朗	177/84	体専2	東福岡
11	濱島 遼	176/72	体専2	福岡
12	堀 日向太	174/81	体専3	中部大春日丘
13	大内田 陽冬	176/89	医2	修猷館
14	髙田 賢臣	173/78	体専4	浦和
15	増山 将	177/82	体専1	東海大大阪仰星
16	前山 陽来	165/93	体専2	尾道
17	大塚 椋生	173/97	体専4	茗溪学園
18	田中 希門	182/107	体専4	中部大春日丘
19	白丸 智乃祐	185/105	体専1	長崎北陽台
20	茨木 颯	185/89	体専2	東福岡
21	藤内 喜市	168/75	体専4	西南学院
22	浅見 亮太郎	178/89	体専3	流通経済大学柏
23	飯岡 建人	183/83	体専1	流通経済大学柏

今年もラグビーの季節がやってきた。ラグビーW杯も同時期に開催されており、日本は初戦、チリに勝利した。昨今、世界で日本のラグビーのプレゼンスが高まる中、フランスより熱い試合が此処、駒沢オリンピック公園陸上競技場で行われた。慶大の対抗戦初戦の相手は筑波大。筑波大には、6月の春季交流大会にて17−61と完敗しており、リベンジに期待がかかるところ。慶大のスタメンは、CTB・三木を除きここ最近の練習試合と同じメンバーが名を連ねており、永山も練習試合同様ブースターからのスタートとなった。台風の影響が心配されたが、幸運にも東京を直撃せず。残暑の下、微風に吹かれながら試合は幕を開けた。

筑波大のキックオフで試合は始まった。序盤10分はまだお互いに手探り状態で、キックで陣地を得ようと、キックの蹴り合いになるシーンも見られた。そんな中、筑波大にラインアウトでペナルティがあった。6月の春季大会では、同じぐらいの時間帯にトライを許し、そこからずるずる失点を重ね、4トライを立て続けに奪われたため、先制点にこだわりがあったのだろうか、慶大はショットを選択した。無風だったこともあり、キッカーも務める上野が真っ直ぐ蹴ってゴールを成功させ、慶大は3点を先制する。

ランが光った山田

次の得点を取ったのは筑波大だった。20分、慶大にハイタックルがあり、筑波大はタッチで前進。ラインアウトからモールへと持ち込み、筑波大が一気に押す。慶大も必死のディフェンスを見せるが、モールを崩したとの判定。コラプシングを取られると、続け様にハイタックルも取られる。ハイタックルについて、日本ラグビーフットボール協会から「タックルの高さに関する試験的ガイドラインの導入について」という、胸骨の位置へのタックルがハイタックルになるという、試験的ガイドラインが今年7月より実施されることになった。同じ地域で反則を繰り返すとシンビンで一時退場もあり、もう反則は許されない。ラインアウトから今度はSO・楢本とFB・増山が走り込んでくるが、SO・山田が好タックル。まだ失点を許していない慶大のディフェンスが光る。しかしLO・中矢がオフサイドを取られ、シンビンで一時退場となってしまう。数的不利、それもFWを欠いた状態でモールを組まれて押され、トライを許してしまった。コンバージョンも成功し、3ー7と逆転される。

36分、慶大はインゴールまで残り10m付近のところでペナルティキックを得る。ラインアウトでマイボールをキープし、中山はピック&ゴーで一気に前進。最後は山田から上野にボールが渡り、インゴール左側にトライ。コンバージョンは不成功も、5点を取り8ー7と逆転して前半を終える。

山田のキックオフで始まった後半、主導権を握ったのは慶大だった。後半4分、トライもあげている上野に代わって永山を投入した。永山が入り、チームに熱がもたらされたのか、インゴール手前5mのところでマイボールスクラムを得る。慶大は一気にプッシュしプレッシャーをかける。山田にボールが出るが山田はアタックではなくキックを選択。そして山田のキックパスに永山が反応し、相手のタックルに倒されながらもインゴール右端にグラウンディング。後半初の得点は慶大があげ、13ー7とした。WTB・大野のコンバージョンは決まらずリード6点となった。

安定したセットプレーを見せた

ここからずるずる沈まないのが筑波大のしぶとさだ。ウォーターブレイク直後の17分、センターライン付近での慶大ボールのスクラム、ボールを出したがBK陣のパスを相手のSH・白栄にインターセプトされ、そのまま走りきられトライ。ゴールも許し13ー14と逆転される。

そのリスタート直後、永山のキックがチャージされ、またノックオンをするなど慶大に完全に嫌な流れが立ち込んでいた。それを察知したか、本試合が初采配となる青貫監督は、山田に代え、1年生の森を起用した。「慶應デイフェンス楽しもう!」という声がグラウンド外から飛んでいた。その後10分はノックオンやノットストレートなどミスもあり、ボールも大きく動くものの両者得点には至らず。

27分、筑波大にオフサイドがあり、慶大にアドバンテージが出た状態で永山がWTB・森にキックパスを仕掛けるも、ややオーバー。しかし、アドバンテージが残っておりタッチしてラインアウト。キープし後は力勝負で相手のディフェンスをかち割るだけというところ。「はい!淳!」と今野もパスを求めたが、永山は自分で仕掛け、94kgの巨体を活かし、ディフェンスを突破。左に慶應は三度リードに成功する。コンバージョンは不成功、18ー14となる。

自ら仕掛けトライをした永山

筑波大は至って冷静だった。コンバージョン中に「まだ全然大丈夫だよ」と声が上がっていた。「ラインアウトのオフサイドに気をつけよう」としっかり自己分析をできているほどであった。ところが、リスタートのキックオフで筑波大の飯岡が危険なハイタックル。シンビンとなり、実質慶大は試合終了まで数的優位に立つことになった。

数的優位の中、タッチからのラインアウトでモールを作って畳み掛けようとするも、逆にボールを出すことができずモール・アンプレアブル。攻めれそうで攻めきれないと思えば、今度は筑波大がスクラムコラプシング。一進一退の攻防が続いた。今度はしっかりモールを組め前進、相手のコラプシングを誘い再びタッチからラインアウトの攻撃へ。慶大はインゴールにボールを運んだが、惜しくもヘルドアップ。なかなか得点することができない。

慶大サイドからの「ノーペナ!ノーペナ!」、筑波サイドからの「4点な!4点!」。この言葉が試合状況、両者の精神状態を象徴している。「ロスタイムは、6分です。」ここから6分間の極限の戦いが始まった。

慶大にハイタックルがあり前進を許す。その後キックパスなど大胆な攻めをされながらもこれを凌いでいたが、ノットロールアウェイなどペナルティが重なった。自陣インゴール前5mでラインアウトからモールを組まれ、CTB・堀や浅見らBK陣もモールに加わり、最後は押し込まれた。平石がグラウディングしトライ、最後の最後で逆転された。リスタートで筑波大がボールを獲得し、ブレイクダウンで争奪を図るも、1分後のレフェリーの長いホイッスルとともに駒沢に響きわたる大歓声は、慶大の敗戦を意味した。数的優位とか関係なしに、最後は相手の「失うものは何もない」というようなひたむきさが、慶大の「守らなければならない」という気持ちを紙一重の差で上回った。

最後の最後で逆転トライを許した

今年度対抗戦の開幕戦となった本試合。青貫監督自身の「どうなるんだろう」という心配を吹き飛ばすようなプレーを、選手たちは本試合で貫き通した。敗因としては、やはりペナルティを11個してしまったこと、そして筑波大の12個のペナルティを得点に繋げられなかったことだろう。お互いペナルティが多かった中で、いかに相手のミスに乗じてスコアできるかが勝負を分けるポイントとなった。トライ、ペナルティゴール、コンバージョンがあと1つでも多く決まっていれば、という試合であったと言える。ただ、春に大敗を喫した相手に対し、ここまで接戦を繰り広げたこと、またモストインプレッシブプレーヤーには永山が選出され、攻撃の形も仕上がってきてると言える。初戦を制し白星発進とはならなかったが、下を向くのはあまりにも早い、早すぎる。どんな時でも前を向いて戦っていけば、楕円のボールは黒黄のラガーたちの元に転がり続けることだろう。

(取材:野上 賢太郎)

——本試合の総括

青貫浩之 監督

本日はありがとうございました。今日の筑波さんとの一戦を本当に大事な試合ととらえていて、夏合宿を8月3日から山中湖でやっていましたが、初日からみんなで筑波を意識してやってきていたし大事な1戦でした。というのも、6月の春季大会で40点以上の大差をつけられて負けた相手でした。本来慶應がやらなければいけない細かい積み重ねが本当にできているチームで、我々がやらなければいけなかったことを、やられて負けたということだったので、本当に筑波さんには絶対に勝ちたいという思いで、 6月の敗戦をこの1か月間胸にやってきました。結果としては3点差という悔しい結果に終わりましたが、本当に選手はよく成長してくれて、本当に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたと思います。菅平、山中湖でやってきたことを存分に出せて、いいパフォーマンスをやってくれました。ただ、3点届かないというのが今の慶應の実力ですので、これから対抗戦は続きますが、一戦一戦ベストパフォーマンスを尽くして成長していきたいと思っております。

岡広将 主将

青貫監督がおっしゃる通り、春にすごく大きな学びを与えてくれたチームに対しての開幕戦、初戦ということで、非常に夏合宿あたりからフォーカスして、春シーズンが終わってからひたすら筑波さんを目標に頑張ってきました。今、力が及ばないのが現状ということで、非常悔しい結果なのですが、もう一度、この現状を受け止めて、次の試合に向かっていければなと思います。

——青貫監督自身初の対抗戦での采配となりましたが、いかがでしたか

青貫浩之 監督

監督として初めて臨んだ試合(対抗戦)で、どうなるんだろうという思いがありました。それは試合の結果ではなくて、試合中勝ったり負けたり、リードしたりリードされたりする時に、自分はどんな心境なんだろうなということを試合前は思っていました。そこで結構不安になって、夜の寝つきも悪くなったりしました。今日は本当に選手たちの前半の入りが本当に良くて、自分が心配したことは本当に無駄だったなと思いました。本当に試合中は安心して見ていられて、プレーヤーから本当に勇気を自分自身もらった試合だったと思います。

——モスト・インプレッシブプレーヤー・インタビュー

永山淳 選手

応援ありがとうございました。チームとして目標にしてきた試合で結果が出せなかったのは悔しさが残るんですけど、シーズン始まったばかりなので、ここから集中して磨きをかけていきたいと思います。ありがとうございました。

モスト・インプレッシブ・プレーヤーに選出された永山

帝京大	明大	早大	慶大	筑波大	立大	青学大	  成蹊大	勝	分	負	勝点
帝京大	———	11/19 14:00 秩父宮	11/5	12/2	10/15	10/1	9/17	○	1	0	0	5
明大	11/19 	———	12/3	11/5	10/1	10/15	○	9/24	1	0	0	5
早大	11/5	12/3	———	11/23	9/24	○	10/14	10/1	1	0	0	5
慶大	12/2	11/5	11/23	———	●	9/17	9/30	10/22	0	0	1	1
筑波大	10/15	10/1	9/24	○	———	12/2	11/19	11/5	1	0	0	4
立大	10/1	10/15	●	9/17	12/2	———	11/5	11/19	0	0	1	0
青学大	9/17	●	10/14	9/30	11/19	11/5	———	12/2	0	0	1	0
成蹊大	●	9/24	10/1	10/22	11/5	11/19	12/2	———	0	0	1	0
◎勝ち点の多い順に順位決定を行う。(並んだ場合は勝利数で決定)

© 慶應スポーツ新聞会