藤井、相入玉模様の混戦制す 神戸で王座戦第2局 1勝1敗のタイに戻す 過去に1例「入玉宣言法」も浮上

感想戦で一局を振り返る藤井聡太七冠=12日夜、神戸市中央区(撮影・小林伸哉)

 永瀬拓矢王座(31)に藤井聡太七冠(21)=竜王、名人、王位、叡王、棋王、王将、棋聖=が挑戦する第71期王座戦5番勝負第2局が12日、神戸市中央区のホテルオークラ神戸で指され、藤井が勝利して1勝1敗のタイに戻した。相入玉模様となった最終盤、過去に1例しかない「入玉宣言法」による決着も取りざたされた一局を振り返る。(井原尚基)

 藤井にとっては史上初の全八冠制覇が懸かるシリーズ。戦型は第1局に続いて角換わりになった。後手番の藤井が、公式戦での経験が少ない右玉を選択。中盤、永瀬がと金をつくった代償に飛車と角を狙われる展開になってから一進一退の攻防になった。

 1分将棋に入り、一時は永瀬が優位に立った後、藤井が逆転した。藤井は入玉を見据えながら永瀬玉の寄せに入ったものの「寄せに行く手順が分からなくて点数という方針に切り替えた」という。永瀬は点数勝負で持将棋(引き分け)にできる可能性が少ない中、入玉を目指した。

 持将棋にするには両対局者の合意が必要だが、2013年に導入された入玉宣言法は、一方の意志のみで決着をつけることができる。22年7月の野原未蘭女流初段-竹部さゆり女流四段戦(第16期マイナビ女子オープン予選)で初めて適用され、先手番の野原が宣言して211手で勝利した。王座戦第2局でも藤井が宣言する可能性が浮上し、関係者が注目。しかし藤井は210手目の馬引きから即詰みとし、永瀬は214手で投了した。

    

■    □

 対局会場では関西の若手棋士グループ「西遊棋(さいゆうき)」が主催する大盤解説会が開かれ、糸谷哲郎八段▽斎藤慎太郎八段▽冨田誠也四段▽森本才跳(さいと)四段▽佐々木海法(みのり)女流1級▽榊菜吟(なな)女流2級-らが出演した。

 終局後は両対局者も会場を訪れてファンにあいさつ。藤井は「苦しい時間の長い将棋だった」。永瀬は「いままでにない将棋で、終始難しいと思っていた」と振り返った。第3局は27日、名古屋市の名古屋マリオットアソシアホテルで指される。

【持将棋】互いの玉が敵陣に入り、双方とも詰む見込みがなくなった場面で、飛車と角を5点、玉以外のその他の駒を1点と数え、両者とも24点以上あれば引き分け、24点に満たない方が負けになるルール。両対局者の合意で成立する。

【入玉宣言法】自玉が敵陣に入り、玉以外の自分の駒が敵陣に10枚以上あって自玉に王手がかかっていない場合、手番のときに「宣言します」と言い、時計を止めて対局を停止させる。その際、持将棋ルールで31点以上あれば宣言した側が勝ち、24~30点なら持将棋になる。点数の対象となるのは持ち駒と敵陣にある駒のみ。両者が合意しないまま指し手が500手に達した場合(王手がかかっている場合は途切れた場合)は持将棋になる。

© 株式会社神戸新聞社