【台風13号】大雨1週間 中小河川から被害拡大 茨城県北の高低差影響

氾濫した大川の橋上で当時の様子を話す住民=15日、日立市河原子町

台風13号に伴う大雨被害は15日、発生から1週間が経過した。被害が集中した茨城県北地域では、県や市町村が管理する中小河川の氾濫が広い範囲で多発し、浸水被害が広がった。専門家は記録的な雨量だけでなく、山と市街地が近く、高低差が激しい県北沿岸部の地形も被害の拡大につながったと指摘する。

県北地域で1時間に約100ミリの猛烈な雨が降った8日、日立市街地を縫うように流れる大川は下流の同市河原子町で氾濫した。

大川は市が管理する河川の一つで、川幅と深さが3メートルほどの掘り込み河道。被災した住民によると、別の小さな川との合流地点などで水があふれ、町内に広がった。

大川沿いに住み、床下浸水した同所の沢幡正男さん(81)は「最初見た時は、水が橋を乗り越えて、ちょろちょろ流れるくらいだったが、その後、一瞬のうちにガードレールまで越えた。滝のようだった」と振り返る。

自宅前のアスファルトはえぐられ、水道管が損傷して断水。浸水した車2台は廃車となった。大川は約20年前にも氾濫したといい、沢幡さんは「河川の管理について抜本的に考え直してほしい」と話す。

日立市役所の庁舎が浸水した原因になった数沢川も、市が管理する小規模河川。同市白銀町で氾濫した宮田川や、同市小木津町の東連津川などは、浸水想定区域図やハザードマップのない県管理の中小河川だった。

高萩市では、県管理の関根川、市管理の玉川、竜子川の三つの河川が氾濫。北茨城市でも県管理の関山川と里根川、江戸上川の3河川が氾濫した。日立市はどの河川が氾濫したかについて「現在、集計中」としており、正確な数は分かっていない。

被災地で現地調査を行う茨城大の信岡尚道教授(防災工学)は相次いだ氾濫の要因について、流域で1時間に80ミリを超える雨が降れば「十分起こり得ること」と説明。「地形的に市街地と山が近く、一気に水が流れてきて集まりやすい県北地域の特徴が出た部分もある」と指摘する。

一方、今回の大雨では、上流にダムがある河川は比較的被害が小さく「2時間で、約200ミリの大雨もダムで吸収できた」と指摘する。

氾濫した中小河川については「堤防が壊れたわけではなく、河川の幅や構造などによって水があふれるか否かの差が生じ、結果的に被害箇所が数多く点在する形となった」と分析し、早期避難の重要性も強調した。

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