犠牲の6歳児、最後の墓前祭 甘粕事件から100年、名古屋

甘粕事件で殺害された、大杉栄のおいで6歳だった橘宗一の墓に手を合わせる竹内宏一さん(右端)=16日午後、名古屋市千種区

 関東大震災の混乱下で、憲兵大尉の甘粕正彦らが無政府主義者の大杉栄ら3人を殺害した甘粕事件から100年を迎えた16日、事件に巻き込まれ犠牲となった大杉のおいで6歳だった橘宗一の墓がある覚王山日泰寺=名古屋市千種区=で墓前祭が執り行われた。「橘宗一少年の墓碑保存会」によると、事件から100年の今年で同寺での墓前祭は最後となる。

 残暑厳しい青空の下で僧侶の読経が響く中、節目の墓前祭を見届けようと昨年の倍に上る約120人が手を合わせ焼香した。保存会の世話人を務める竹内宏一さん(82)は「権力によって思想が弾圧され、幼き命が粗末に扱われるような時代に二度と戻ってはならない」と力を込めた。

 1927年に宗一の父・惣三郎によって建てられた墓碑の裏面には「犬共ニ虐殺サル」と憲兵らに息子を殺された父の無念と怒りの言葉が刻まれる。72年に偶然発見されるまで墓碑は日の目を浴びてこなかった。

 墓碑の裏面に刻まれた言葉が軍国主義に抵抗した証しだとして保存会が結成され、75年から墓前祭を毎年開催してきた。

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