東京でリピ続出「スクールオブロック」が大阪に、熱狂のワケは?

アーティスト・西川貴教と、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも出演したミュージカル俳優・柿澤勇人がWキャストで主演する、世界中で大ヒットしたロックミュージカル『スクールオブロック』。

ミュージカル『スクールオブロック」より(撮影:田中亜紀 /提供:ホリプロ)

小学校教師に成りすましたロックミュージシャンが、子どもたちとバンドを組んで、ともに成長する・・・というサクセスストーリーを、ノリノリのロックナンバー満載で見せて行き、東京公演では「ずっと泣き笑い」「エンタメのひとつの到達点だと思う」と、リピーターが続出。9月23日の大阪開幕が迫るなか、今回はおさえるべき「ロックなツボ」をおさらいしたい。

取材・文/吉永美和子

ポイント(1)ミュージカル×ロックの新境地

原作は2003年に上映された、ジャック・ブラック主演の同名映画。その舞台化権を獲得したのが、なんと『CATS』『オペラ座の怪人』などの、数々の名作ミュージカルを生み出した大巨匠・アンドリュー・ロイド=ウェバーだった! なんでウェバーが? と思うかもしれないが、もともと彼は『ジーザス・クライスト・スーパースター』という、音楽も内容もロックな作品(レコーディング版のヴォーカルは『ディープ・パープル』のイアン・ギラン!!)でデビューした身。

ミュージカル『スクールオブロック」より(撮影:田中亜紀 /提供:ホリプロ)

異色というより、むしろ「俺の本領発揮キター!」な気分だったのかもしれない。そのため映画版の音楽が、70~80年代のロックの名曲が中心だったのに対して、舞台版はほぼウェバーの書き下ろし。ギターとドラムが攻めまくるヘヴィーなナンバーや、心に染みるロックバラード、モーツァルトのオペラを絡めた遊び心あふれる一曲まで、思わず口ずさむものぞろいだ。一方ロックマニアなら、さりげなく引用された、あのおなじみ曲のリフやフレーズにニヤリとするはず。

ポイント(2)主人公の「生き様」がロックすぎる

性格は自由奔放で強引。バンドバトル直前に自分のバンドから追放され、お金目当てで友人の名をかたって、名門小学校の臨時教員に成りすます・・・というデューイ(西川/柿澤)は、あまりにも主人公らしからぬキャラクター。しかしロックの情熱だけは人一倍の彼は、受け持った子どもたちの音楽やデザイン、マネージメントなどの隠れた才能を見出し、クラスごとバンドを組んでバトルに挑戦する。

ミュージカル『スクールオブロック」より(撮影:田中亜紀 /提供:ホリプロ)

自由奔放ゆえに、考えられない方向から子どもたちの可能性を引き出し、強引ゆえに「できないよ」とみずから決めつける子どもたちを「やれるやれる!」と軽く引き上げる。ダメ人間がダメさを克服して成功するという物語は数多いが、基本的な性格はほぼ変わらないままなのに、周囲の人間を成功と幸せに導いていくのだ。「自分はダメ人間だから・・・」と社会の隅で縮こまる人々に、これほど勇気を与えるロックなキャラがあっただろうか!

ポイント(3)子どもたちのロックな生演奏は、ハンカチ必須

しかしなんといっても本作の大きな見どころは、デューイ&子どもたちが結成したバンド「スクールオブロック」の曲を、影バンドではなく子どもたちがリアルにプレイすること! 大人顔負けの演奏にビックリしつつも感動するのはもちろんだけど、実は舞台版では映画では描かれなかった、子どもたち一人ひとりの背景も見せていく。

ミュージカル『スクールオブロック」より(撮影:田中亜紀 /提供:ホリプロ)

親にかまってもらえない、趣味を理解してもらえない、孤独に気付いてもらえない・・・そんな彼らがロックを通じて、自分のやれること・やりたいことを見つけ、グングンと自己肯定感を上げていく姿を見ると、特に子育て中の人ならば、発見と感涙が交互にやってくるようなモードになるだろう。そして彼らの晴れ姿が披露されるクライマックスのバンドバトルでは、客席は自然発生的に手拍子や歓声でいっぱいに! 東京よりもノリがいいと言われる関西では、さらにロックのライブさながらに、大盛り上がりすること間違いなしだ。

成長するのは子どもだけじゃない! 堅物と思われた小学校の校長・ロザリーも、デューイにだまされた友人・ネッドもまた「大人だから」と押さえつけていた本来の自分を、最終的には解き放つ。それを見ると「ああ、子どもだけじゃなくて、大人だってなりたい自分になっていいんだ」と、背中をドカン! と押されたような気持ちになるだろう。

ミュージカル『スクールオブロック」より(撮影:田中亜紀 /提供:ホリプロ)

まさに「自由の象徴」と言われる音楽・ロックンロールがテーマだからこそ、随所で踊り出したくなるような高揚感と、自分を抑圧していたものに立ち向かう勇気をもらえる『スクールオブロック』。底抜けの明るさで舞台を引っ張る西川デューイで観るか? 意外とワイルドサイドなキャラとなった柿澤デューイで観るか? いや、いっそ両方観て心の底からロックしようぜ、イェイ!

ミュージカル『スクールオブロック』は、西川貴教、柿澤勇人、濱田めぐみ、梶裕貴、太田基裕、はいだしょうこ、宮澤佐江などが出演。東京公演を経て大阪では9月23日〜10月1日に「新歌舞伎座」(大阪市天王寺区)にて上演。チケットはS席1万3500円ほか、絶賛発売中。

ミュージカル『スクールオブロック』

期間:2023年9月23日(土)~10月1日(日)
会場:新歌舞伎座(大阪府大阪市天王寺区上本町6-5-13 YUFURA6階)
料金:S席(1・2階) 1万3500円、A席(3階) 9500円、特別席 1万5000円

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