ウイスキーやブランデーなどの蒸留酒とワインやビールなどの醸造酒はどう違うの?うまい酒が飲めるのは化学の力!【図解 化学の話】

私たちが生活で美味しい酒を飲めるのは「化学の力」

酒類を表す英語はalcoholですね。蒸留酒はdistilled liquor、ふつうには spirits、醸造酒はbrewed liquor、ちなみに日本酒はそのままsakeです。蒸留酒は、よく知られているものではウイスキー、ブランデー、 ウオッカ、ジン、焼酎など。醸造酒や醸造酒の半製品、醸造酒の副産物(粕)やそのほかのアルコール含有物を蒸留して造った酒。醸造酒は、清酒(清酒は酒の種類、日本酒は清酒の種類)、ワイン、ビール、発泡酒などで、原料そのものか、原料を糖化してからアルコール発酵させた酒。簡単にいえば、以上が蒸留酒と醸造酒の違いというわけです。ちなみに、別種の酒として、香料や果実、糖を添加した混成酒があり、これには合成清酒、梅酒、リキュール、ベルモット、みりんなどが含まれます。ほかに清酒の種類に入らない醸造酒としてどぶろく(濁酒)があります。このように蒸留酒と醸造酒は、製法の違う酒ということですが、酒税法でも分かれます(図1)。ビール類、発泡種類、その他の醸造種類、リキュール類、清酒類、果実酒類、連続式蒸留焼酎類、単式蒸留焼酎類、ウイスキー類ですね。

ところで、酒と化学は、切っても切れない関係です。なにせ製造そのものが化学の力によるからです。たとえば、合成清酒。1918年(大正7年)、第1次世界大戦終了後に起きたコメ不足から、理化学研究所がコメ不使用の酒の開発に着手。1930年(昭和5年)、ようやく発酵法と純合成法を合体させた「理研式発酵法」が完成し、1951年(昭和26年)に合成酒にコメの使用が許可されるまで、この発酵法が製造の主流を占めていた。理化学研究所が製造法を発明したので「理研酒」といったそうです。また、ワインは原料がブドウなので糖分があります。その糖分を酵母が直接食べてアルコール発酵する。なので「単発酵」。日本酒は穀物のコメが原料なので糖分はありません。そこで含まれているデンプンを麹菌で分解してブドウ糖にし、それを酵母が食べるとアルコール発酵する。糖化と発酵の工程が同時に並行して行われているので「並行複発酵」。ビールも原料の大麦麦芽には糖分がないので、砕いた麦芽とお湯を混ぜ、麦芽のアミラーゼ(高分子多糖類)によってデンプンを分解し糖化します。そのあと麦汁に酵母を加えてアルコール発酵させます。糖化と発酵の工程が分かれているので「単行複発酵」。これらは、すべて化学。うまい酒を飲めるのは化学の力、というわけです。

酒類にかかる税金の分類・酒税法

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』野村 義宏・澄田 夢久

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』
野村 義宏 監修・著/澄田 夢久 著

宇宙や地球に存在するあらゆる物質について知る学問が「化学」。人はその歴史の始めから、化学と出合うことで多くのことを学び、生活や技術を進歩・進化させてきました。ゆえに、身近な日常生活はもとより最新技術にかかわる不思議なことや疑問はすべて化学で解明できるのです。化学的な発見・発明の歴史から、生活日用品、衣食住、医学の進化までやさしく解明する1冊!

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