『ジョン・ウィック』作曲秘話!「“ロックの美学”がコンセプト」「クロサワ映画から着想」タイラー・ベイツ独占インタビュー

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『ジョン・ウィック』シリーズの音楽

愛犬を殺したロシアンマフィアと、自宅を爆破したイタリアンマフィアを壊滅させ、裏社会の掟を破って姿を消した伝説の殺し屋ジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)。地下犯罪組織の王バワリー・キング(ローレンス・フィッシュバーン)の助力を得た彼は、完全なる自由を求めて主席連合への反撃を開始する――

2014年から始まったノンストップ・キリング・アクションの金字塔『ジョン・ウィック』シリーズも、2023年9月22日(金)公開の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』で4作目となる。これまで「掟と誓印が絶対」という裏社会のドライな人間模様が描かれてきたが、今回はジョンの旧友である武術の達人ケイン(ドニー・イェン)と、大阪コンチネンタルホテル支配人のシマヅ(真田広之)との男の友情がドラマの鍵となっており、やがて「報い(Consequence)」という物語のテーマへと帰結していく。

本作のスコア(劇伴)を作曲したのは、過去3作と同じくタイラー・ベイツジョエル・J・リチャードの二人。ベイツは近年デヴィッド・リーチ監督作『アトミック・ブロンド』(2017年)、『デッドプール2』(2018年)、『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)や、タイ・ウェスト監督作『X エックス』(2022年)、『Pearl パール』(2022年)などのヒット作/話題作の音楽を担当している。

『地球が静止する日』(2008年)のサウンドトラックアルバムの差込解説書用にインタビューを行って以来、ベイツと交流がある筆者は、今回彼に独占インタビューを実施。『ジョン・ウィック』シリーズの作曲秘話や、本作でコラボレートしたアーティストたちの感想を詳しく聞くことができた。

「メインテーマは数分で書き上げた」

―チャド・スタエルスキ監督は毎回アクションの激しさだけでなく、芸術的な側面を探求してきたように思います。『ジョン・ウィック』シリーズの劇伴の基本となるのは攻撃的なロック・サウンドですが、この方向性はどのようにして決まったのでしょうか?

チャドはマーシャルアーツと武器の達人であり、その起源となる文化を深く理解している。彼はシリーズを通して自身の深い洞察を僕たちと分かち合い、最終的にはロック・ミュージックのエネルギーで非日常的な雰囲気を作り出すことを僕とジョエル(・J・リチャード)に勧めてくれた。こうした側面がシリーズ全ての音楽に反映されているんだ。

―シリーズを通して使われている印象的なメロディのメインテーマは、どのようにして出来上がったのでしょうか?

10年前、ジョエルと僕が最初の『ジョン・ウィック』の作曲に着手したとき、僕はまだ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)の仕事に携わっていた。僕が『GOTG』の音楽を仕上げている間、ジョエルが『ジョン・ウィック』のスコア作曲を進められるように、まずメインテーマを書くことに集中したんだ。僕たちは文字通り、電話で話し合いながらほんの数分でテーマ曲を書き上げた。続編が作られる度にあらゆる方法を駆使してテーマ曲を発展させていくというのは、とてもやり甲斐のある作業だったよ。

「日本のシーンは黒澤明の映画から着想を得ている」

―今回は大阪コンチネンタルホテルが登場します。“『ジョン・ウィック』の世界における日本”をどのように音楽で表現しようと思いましたか?

日本でのシーンにおけるチャドのアプローチは、彼が映画監督を志すきっかけのひとつでもあった黒澤明の映画からインスピレーションを得たものだった。僕とジョエルもそこから受けた影響が大きかったね。今回は音楽に伝統的な楽器編成を使うことも求められたけど、ジョンが日本に滞在中のストーリーを支えるスコアの大部分は電子音楽だ。

―伝統的な楽器編成といえば、今回シリーズの劇伴で初めてオーケストラを使っていますが、このアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

チャドはこの映画の第三幕を飾る古典的な決闘のシーンで、20世紀の音楽様式で演奏されるスコアを望んでいた。このシリーズの音楽ではオーケストラを使わなかったけれど、それはスコアがロック・ミュージックの美学をコンセプトにしていたからなんだ。予算が限られていたという理由もあったけどね。でも今回はジョエルと僕に非常に大きなリソースを与えられたから、従来のサウンドにオーケストラを統合することが出来たんだ。

「ローラ・コレットは僕の娘なんだ」

―あなたはこれまでのシリーズで主題歌や挿入歌を担当したマリリン・マンソン、シスカンドラ・ノスタルジア、ジェリー・カントレル、ブッシュの楽曲プロデュースを手掛けてきました。今回もエンディングテーマと、パリのラジオ局で流れる歌曲のプロデュースを担当しています。共演したアーティストについて話を聞かせて下さい。まずは「Nowhere to Run」(マーサ&ザ・ヴァンデラスのカヴァー)を歌ったローラ・コレットから。

ローラは僕の娘なんだ。だから言うわけじゃないけど、彼女はとても才能のあるアーティストだと思うよ! 彼女はサウンドトラックのボーカリストの一人になる予定ではなかったんだけど、ローラが歌った「Nowhere to Run」のデモバージョンをチャドに聴かせたら、彼女の声を気に入ってくれてね。映画で使うバージョンもローラでいこうと言ってくれたんだ。

―次にローリング・ストーンズの「黒くぬれ!」のカヴァーですが、これはマリー・ラフォレが歌った「Marie Douceur, Marie Colère」がベースになっていますね。今回のマノン・ホランダー(フランスのバンド、Holisparkのボーカリスト)の歌声も素晴らしかったです。

僕たちはローリング・ストーンズのカヴァーをフランス人アーティストに歌ってもらいたいと考えた。音楽監督のジェン・マローンがマノンを見つけてくれたんだけど、彼女の声がすごく気に入ったんだ。マノンはパリでボーカルを録音して、僕はロサンゼルスでトラックをプロデュースした。この曲のオーケストラ・アレンジも書いているよ。

―エンドクレジットで流れるリナ・サワヤマの「Eye for an Eye」と、イン・ディス・モーメントの「I Would Die for You」についてはいかがですか?

イン・ディス・モーメントは僕が楽曲プロデュースをしたこともある素晴らしいバンドだ。僕が彼らのEP「Blood 1983」に取り組んでいたときにチャドから電話があって、偶然にも「イン・ディス・モーメントのマリア・ブリンクのことを知っているかな? 一緒に曲を書いてほしいと思っているんだけど」と言ってきたんだ。

リナに会ったのはポスト・プロダクション中の最初のミーティングだった。そのときにチャドが彼女と一緒に曲を書いてほしいと頼んできたんだ。リナは映画の中でクールなキャラクターを演じていたから、これは楽しい作業になりそうだと思ったよ。

取材・文:森本康治
Special thanks to Tyler Bates

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は2023年9月22日(金)より全国公開

『ジョン・ウィック』『ジョン・ウィック:チャプター2』『ジョン・ウィック:パラベラム』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:『ジョン・ウィック』シリーズ最新作公開記念!2ヶ月連続キアヌ・リーブス」で2023年10月放送

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