農地に建設残土の山 高さ10メートルに 撤去訴えるもブローカーは死去 固定資産税70倍に

愛知県弥富市、道路沿いにある小高い山。

(大石邦彦 アンカーマン)
「間近に来るとより実感しますね、いかにこの山が高いか。草がぼうぼうと生い茂っていて、昔からこういう山がここにあったかのような感じがしますよね」

実はこの山は建物の建設や土地開発などによって大量に出る建設残土でできたもの。

(土地所有者)
「見るのも嫌ですね。(元に)戻ってほしい」

土地の所有者に聞くと、この盛り土があるため、土地が使えなくなっただけでなく、新たに別の問題が起きているといいます。

(土地所有者)
「市の嫌がらせかな」

私達が最初にここを訪れたのは4年前の2019年。

(土地所有者)
「『道路より30センチ下まで土を入れて』
『水田にさせてもらっていいですか』っていう話だった」

長年使っていなかった金魚の養殖池に、2017年、不動産業者が、高さ30センチくらい建設残土を入れさせてほしいと頼んできたのが始まりでした。「その程度なら」と了承したところ、あっという間に10メートルの盛土になったのです。

土地所有者と業者のやり取りの録音記録が残されています。

(土地所有者)「違法占領やんけ。全然話が違うやんか」

(業者)「とにかく、やるだけのことはやる」

(土地所有者)「じゃいつ撤去する?」

(業者)「6か月後」

(土地所有者)「は?」

(業者)「ボリューム的に」

(土地所有者)「あのボリュームにするからいかんのだろ」

この業者は三重県で残土処理のブローカーをしていました。2019年、私たちはその業者を直撃しました。

(記者)「撤去するご予定はありますか?」
(業者)「当たり前やんか。きちっと うちも仕事だから撤去しますで」

土地所有者が自分で撤去する場合、費用は実に7000万円に上るといいます。

土地所有者の夫婦は業者を訴え、2020年、業者に残土の撤去を命ずる判決が出ました。

業者は、弥富市だけでなく、岐阜県海津市や三重県桑名市などでも同じような残土の山を作り、住民とトラブルになっていましたが…。

【三重 2021年】
(記者)「●さん 今日いらっしゃいますか?」
(業者の妻)「亡くなったので、おりませんよ」

しばらくして亡くなってしまい、土の山はそのまま放置されたままになっています。

あれから数年。
土の山を巡り、別の問題が起きていると聞いて、土地の所有者を訪ねると…

弥富市から届いた今年度の納税通知書に驚愕したといいます。

(土地所有者)「令和4年度の固定資産税は約8000円、令和5年度だと約60万円。私は払える金額ではないんですよ」

土地の用途が農地から雑種地に変更され、固定資産税がおよそ70倍に跳ね上がったのです。

(土地所有者)
「私たちに落ち度があるから、こういうことになったとは思うんですが。業者にやられてしまった山なので、私たちが好きで作った山ではない。もう少しその辺は考えていただきたい」

夫婦は今、この変更を不服として市に地目の認定取り消しを求めています。

そもそも、この盛土には、弥富市役所の新築工事の建設残土も含まれていました。

公共工事の残土は、行政が処分先も含めて管理しなければなりませんが、市はそれを怠っていました。

所有者夫婦は、弥富市とゼネコンを相手取って排出分の撤去を求める裁判も起こしましたが、2022年9月に和解しています。その和解後に地目が変更され、税金を高くされたのです。

(土地所有者)
「和解した途端、市の嫌がらせかな」

土地所有者は農地扱いになるよう、くいを打ってリンゴの木や柿の木、ミカンの木の苗を植えるなど、できる限りのことはしましたが、認められませんでした。

(加藤明由 弥富市議)
「60万円毎年払えという通知が来たそうですが、ひどい話だと思って議会に取り上げようと思っている」

地元の市議会議員も問題視しています。
なぜ何年も経って、突然農地ではない認定にしたのか。

(大石アンカーマン)
「弥富市役所 新庁舎です。ここを建設する際に出た土も、あの山の一部になっているということなんですけどね。副市長を直撃します」

弥富市の見解を尋ねると…

(大石アンカーマン)
「土地所有者の方は、固定資産税70倍に困惑しているが?」

(弥富市 村瀬美樹 副市長)
「本市としては、税の公平性、それから地方税法および固定資産の評価基準にはかりまして、適正に課税をしています」

(大石アンカーマン)
「雑種地に変更したタイミングは?」

(弥富市 村瀬美樹 副市長)
「紛争(市と土地所有者の裁判)の解決を契機に、現況に合わせて課税した」

(大石アンカーマン)
「和解したのに、地目変更は嫌がらせではないか?」

(弥富市 村瀬美樹 副市長)
「『課税をしない』という和解をしたわけではないものですから、適正だったと思っております」

“客観的に農地に見えない”と判断し、評価は適切だと主張します。

農地扱いになるよう、土地所有者がミカンの苗木を植えても認めなかったことについては…

(大石アンカーマン)
「あれではだめなんですか?」

(弥富市 村瀬美樹 副市長)
「あれではだめです」

(市の担当者)
「山全体に誰が見ても、みかんが植わっている農地としての山だなというのが客観的に見受けられれば」

(弥富市 村瀬美樹 副市長)
「私どもが農地として判断できるものにしていただければ、その時にきちんと相談に乗らせてもらう残土を撤去してもらうのが一番なんですけども」

2023年9月8日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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