阪神V戦士の孫「よう頑張った」 「但馬の星」坂本捕手の祖母、誇らしく 先輩・能見元投手との縁にも感激

阪神・坂本誠志郎捕手の活躍を報じる記事にはマーカーを引くという祖母の久美さん=養父市大薮

 能見篤史投手が退団したとき、花束を渡したんは私の孫でした-。3年前、神戸新聞の読者投稿欄「イイミミ」に掲載された投稿は、18年ぶりにリーグ優勝したプロ野球阪神タイガースの坂本誠志郎捕手の祖母、久美さん(89)=兵庫県養父市大薮=が寄せたものだった。(吉田みなみ)

 久美さんは亡くなった夫とともに、根っからの阪神ファン。2歳上の兄と一緒に、小学1年生から野球を始めた坂本捕手をずっと応援してきた。特に兄が6年、坂本捕手が4年のときには兄弟でバッテリーを組み、久美さんの声援にも熱が入った。「試合のたびに会場に出向き、まるで孫たちの『追っかけ』でした」と振り返る。

 久美さんは幼い頃から本の虫と言われ、今では隅から隅まで新聞に目を通すのが日課という。坂本捕手の阪神入団後は活躍や打率が掲載されるたび、紙面にマーカーで印を付けている。同じく但馬出身で、ずっと応援してきた元阪神投手の能見篤史さん(現野球解説者)=同県豊岡市出身=が、坂本捕手とバッテリーを組んだときには感激で震えたという。

 3年前の投稿は、退団が決まった能見さんを入団時から応援してきたという、同県香美町出身の女性に共感し寄せたものだった。さらに久美さんの投稿の6日後、同県加古川市の女性から「いいお孫さんをお持ちですね」「これからは坂本選手を応援します」と反応があったという。久美さんは「(能見さんを)ずっと応援してきたから反応せずにはいられなくてね」といい、「顔も名前も知らない相手だけれど、紙面上でちゃんとつながっていると感じられてうれしかった」とほほえんだ。

 坂本捕手の入団を機に、疎遠になっていた久美さんの旧友から連絡があり、交流が復活した人もいるという。坂本捕手の父、龍二さん(61)も「阪神で活躍できていることは、誠志郎の最大の祖父母孝行。試合のある日は心なしか母も元気になる」と笑った。

 阪神の試合前には、仏壇に手を合わせ「とにかく勝ちますように」と願掛けするという。久美さんは、V戦士に名を連ねた孫について「たくさんの人に支えられ、ここまでこられたことだけでも胸がいっぱい。よう頑張ったねと言ってあげたい」と目を潤ませた。

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