「未納です」の電話から…脳裏よぎるも詐欺被害に 長崎の女性、悔しさ今も

ニセ電話詐欺の県内被害状況

 「未納料金があります。詳しい問い合わせは『1』を押してください」。7月末の朝、突然、携帯電話が鳴り、自動音声が流れてきた。番号を押すと「NTTファイナンスのササキ」を名乗る男が話し出した。「2022年に登録された『スリム』というサイトの料金29万9600円が未納です。払わないと裁判になります」
 長崎市内に住む平山美知子さん(57)=仮名=。見たことがない海外からの電話を受けたことをきっかけに、80万円分の電子マネーカードの利用権をだまし取られるニセ電話詐欺(架空料金請求)の被害に遭った。
 その手口は巧妙で執拗(しつよう)だった。「スリム」というサイトに心当たりはなかったが、普段から数多くのサイトを閲覧していたので、不審に思うことはなかった。
 「未納料金をすぐに払わないと明日、刑事裁判が始まる」。男にこう言われ、近くのコンビニに走った。「裁判になるくらいなら」と思い、30万円分の電子マネーカードを購入しようとすると、店員が「どんなことに使いますか」と尋ねてきた。しかし、男に言われた通り「自分のことに使います」と答えた。
 自宅に戻り、裏面に書いてあったコード番号を電話で伝えた。頭の中をよぎったのはテレビや新聞で見ていた詐欺の手法。「もしかしたら」と思ったものの「詐欺に遭うはずがない」と首を横に振った。
 要求はさらに続いた。数時間後「サイバーセキュリティーセンターのオガワ」を名乗る男から電話が鳴った。「あと2件、サイトに登録がある。合計で49万円の未納料金がある」「5%が戻る返金制度があるので一度、全額払ってください」-。「(金が)戻ってくるなら」と思い、またコンビニに向かった。2店舗で計50万円分の電子マネーカードを購入し、すぐに電話でコードを伝えた。
 3回目の電話を受けたのは2日後。政府の「ウイルスサイバーセンター」のフクザワを名乗る男が「保険でお金がかかる」と言いだした。「さすがにこれは詐欺だ」と確信し、警察署に駆け込んだ。男に言われるまま購入した電子マネーカードは計80万円分。金が戻ってくることはなかった。
 県内でニセ電話詐欺被害が後を絶たない。平山さんは「この機会で勉強になった」と話しながらも、「だまされて数日間はご飯が喉を通らなかった」と悔しさをにじませた。


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