茨城・笠間焼サブスク好評 誕生250年記念事業 飲食店に四季の器

笠間焼サブスクの食器を前に話すモニターの鈴木義彦さん=水戸市笠原町

笠間焼の食器を飲食店などに定額で貸し出すサブスクリプション(サブスク)の利用が広がりを見せている。笠間焼誕生250年記念事業の一環として、茨城県笠間市や関係団体が始めた。1年契約で四季に合わせて器のセットを入れ替え、笠間焼の魅力を広く知ってもらう。購入するより安価で済み、多くの絵柄や趣を楽しむことができると好評だ。

サブスクは、笠間市や商工・観光団体、美術館などでつくる笠間焼誕生250年祭実行委員会(委員長・山口伸樹笠間市長)の記念事業の一環としてスタートした。

笠間焼協同組合が中心となり、希望する飲食店などに年4回、季節に合わせて器のセットを届ける。事前に店側から希望の種類や雰囲気、大きさ、個数などの要望を聞いた上で契約を交わす。対象地域は全国で、個人でも構わない。

組合の磨屋潤次長は「飲食店は、器そのものの大切さは分かっていても、買いそろえると時間も費用もかかってしまう。サブスクなら、定額料金で季節ごとに入れ替わるためニーズはある」とみる。

サブスク用の器制作に協力してもらえる陶芸家を非組合員も含めて募ったところ、約40人の賛同を得た。磨屋さんは「作風の多様性も確保できる」と話す。

事業の開始に当たり、意見や感想を提言してもらうモニターも設けた。日頃から笠間焼の器を積極的に使う居酒屋「ゑびす」(水戸市笠原町)に打診したところ、笠間市出身の経営者、鈴木義彦さん(68)は「笠間焼の作家を応援したい」と快諾。サンプルの風合いを確認した上で、必要な個数を注文した。

組合は7月末に「初回限定」として、3種類の大きさの皿を、それぞれ5枚セットで4カ月間、割安料金で利用できる「おためしキャンペーン」を実施。予想を上回る反響で、想定した件数を早々に満たした。

組合によると、陶磁器のサブスクは、企業が行う例はあるが、窯業産地として取り組むのは珍しい。江戸時代の安永年間に起こった笠間焼は2022年で250年。23年度までの2カ年で産地を挙げての記念事業を展開している。

地場産の稲田石に由来する釉薬(ゆうやく)原料「笠間長石」の利用促進にも取り組む。原料を使ってサブスク用の器を作る河野カイさん(50)は「飲食店が笠間焼と出合う機会は少ない。作り手も飲食店に売り込みに行くことがないので、お互いに接するきっかけになる」と期待する。

実行委事務局の笠間市商工課は、記念事業が終了しても、サブスク事業の継続に期待。磨屋さんは「笠間焼を県内で広く使ってもらうのが主眼。作家にとっても販路の開拓につながる」と話す。

© 株式会社茨城新聞社