「キアヌ超イイ人伝説」は本当だった! スタッフへの粋なプレゼントとは? 『ジョン・ウィック:コンセクエンス』日本代表スタントチームが明かす感涙エピソード【後編】

川本耕史 伊澤彩織

『ジョン・ウィック』シリーズ最新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が2023年9月22日(金)より公開。伝説の殺し屋ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)に盲目の達人ケイン(ドニー・イェン)、ジョンの旧友シマヅ(真田広之)などリアルアクションのレジェンドが集結した本作のアクション指導を請われたのは、あの谷垣健治も推す歴戦のスタントチームだ。

ということで、ファイトコレオグラファー/スタントパフォーマーとして『ジョン・ウィック』チームに参加した川本耕史さんと伊澤彩織さんが『~コンセクエンス』の激レア撮影エピソードを明かす、貴重なインタビューの後編をお送りする。

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「気持ちよく死ぬことができました(笑)」

―間違っていたら申し訳ないんですけど、 大阪・コンチネンタルホテルの戦いの序盤、マルコ・サロールがホテルのロビーで兵隊たちと戦い出した時、彼と1対1で戦う黒髪ショートヘアで着物姿の日本人女性がいましたよね。あの女性は伊澤さんですか?

伊澤:私です(笑)。

―あのシーン、カッコ良かったです! この映画、ドニー・イェンVS真田広之、キアヌ・リーブスVSドニー・イェンなど名勝負だらけですが、さらに伊澤さんVSマルコ・サロールという夢のカードが観ることができるなんて贅沢な映画ですよ!

伊澤:短いんですけどね(笑)。

川本:あのファイトも本当はもっと尺があったんです。

―伊澤さんとマルコ・サロールとの対決が決まった経緯を教えてもらえませんか?

川本:ホテルのロビーで乱戦がはじまった時に、誰がマルコさんと戦うか? と考えたたら、僕としてはマルコさんに女性を惨殺……って言い方は良くないかな。マルコさんに女性を倒してほしかったんです。

―今の丁寧な言い方、そのまま文章にしておきます。人柄が伝わってくるので(笑)。

川本:それで、伊澤さんに戦いに入ってもらったんです。

―マルコ・サロールとのアクションはいかがでしたか?

伊澤:マルコさんとは、撮影前に練習をしない状態で本番だったんです。カメラテストをしながら動きの練習をして、という感じで。

川本:マルコさんは撮影前にファイトの練習はしているんですが、実際に本人同士が手を合わせるのは撮影現場だったんです。

伊澤:かなり短い時間にぎゅっと詰め込まれていたので緊張していたんですが、マルコさんはすごくアクションが上手い方なので、気持ちよく死ぬことができました(笑)。

―いい言葉をいただきました。なかなか聞ける言葉じゃないですよね(笑)。

「リナさんは演技もアクションも初めてで緊張されていたけれど、すごくエネルギッシュな方」

―伊澤さんはシマヅ・コウジの娘アキラのスタントダブルもやられていますよね。アキラの弓矢やナイフを使った戦闘スタイルがカッコ良かったんですが、どのように決まったんですか?

川本:ファイトスタイルに関しては、真田さん演じる父コウジが“侍”のイメージだったことと、アキラと対峙する敵は身体が大きい人や甲冑を着ている人たちだったので、 正面からぶつかっても勝てないかな、と思ったんです。それに正面からぶつかって戦ったら、ただカッコいいだけのアクションになっちゃうな、とも思ったので、相手の上からも下からも攻めて、身体の末端部分を狙って、そこを崩して倒してからトドメを刺すようにできたら良いな、と思って作りました。

―それで相手に飛びかかりながら弓を射る、ナイフで相手の脚を刺して動きを封じてから滅多刺しにして殺す戦闘スタイルになったんですね。

川本:あとは、刀は長いのでテクニックがないと、相手を制圧することが難しいと思ったんです。自分の手先に近い武器を使った方がスピードも上がるし、相手の下を潜ったりジャンプしたりするにしても、そっちの方が説得力は増すかな、と。それでナイフと折れた矢の二刀流で戦うスタイルをチャドさんに提案して作っていきました。

―伊澤さんは、リナ・サワヤマさんと一緒にアクションの訓練もされたんですか?

伊澤:そうですね。リナさんが練習に入る前に、耕史さんが考えたアキラのアクションのビデオコンテを撮っていたので、そのビデオコンテの動きができるように基礎練習から少しずつ難しくしていって、何回も何回も練習をさせていただきました。

川本:リナさんは「映画に出て、演技をすることが初めて」だとおっしゃっていて、アクションも初めてだったので緊張はされていましたね。ただ、ものすごくエネルギッシュな方で、ご自分が良いと感じたものは「自分でやりたい!」と思ってくださる方でした。

「キアヌさんが『任せとけ、僕がケータリングを用意する!』って」

―キアヌ・リーブスさんといえば、数々の“イイ人伝説”がありますよね。今回一緒にお仕事をされて、キアヌさんのナイスガイぶりを体験することはありましたか?

伊澤:(川本さんに)何から言います?

―そんなにあるんですか!?

川本:僕がドイツに入った時、アクションの練習場に行ったらお水が用意されていたんですが、キアヌさんだけ違うお水を飲んでいたんです。特別なお水なのかな? と思ってキアヌさんのマネージャーさんに聞いたら、購入金額の何パーセントかが寄付されるシステムのお水を飲んでいたんです。どの国に行っても、そうされているようです。

―本当に普段から、そういうことを心掛けている方なんですね!

川本:撮影前にアクションを作っていた間、スタジオでランチタイムがあるんですが、スタジオの周りにお店が全然ないんです。プロダクションからランチ代は出ていたんですが、Uber Eatsに頼むと届くまでに時間がかかるし、食べに行くと往復1時間半から2時間かかってしまうので、みんな「アクションを作る時間が少なくなる」と困っていたんです。そうしたらキアヌさんが、「任せとけ、僕がケータリングを用意する! 何がいい?中華か、フランス料理? ドイツの料理? 日本の寿司? うどん……わかった、もう全部用意する!」と言ってくださって、次の週のランチタイムから、キアヌさんがお金を出してケータリングを用意してくれたんです。

―気前の良い方ですね!

川本:それから2021年の6月には伊澤さんたちが合流してくれて、スタントマンが30~40人になったんですが、全員のランチ代をキアヌさんが出してくれました。

伊澤:私は撮影が終わって帰国したら、『ジョン・ウィック4』と書かれた柔術着が届いて……。

―粋なプレゼントじゃないですか!

川本:キアヌさんは、映画に参加した全スタントマンに柔術着を配ったんです。撮影の最後まで残っていたメンバーは手渡しでいただいていたんですけど、「日本に帰ったメンバーにも送りたいから」と言ってくれて、皆さんのアドレスを調べて送ってくれたんです。

―……すごい。こちらが思った以上のイイ人伝説を残していますね。

伊澤:そうなんです(笑)。

川本:ロレックスをもらったアメリカ人スタントマンもいました。

キアヌからもらった「世界で一番美味しいカップケーキ」

伊澤:『ジョン・ウィック』にずっと関わっているアメリカのスタントマンにキアヌさんが直筆の手紙を渡していて……なかなかいないじゃないですか、スタントマンに直筆の手紙を渡すスターなんて!

川本:最後まで残っていた日本人メンバーは、柔術着以外にもコンチネンタルホテルのメダルとか、いろんなものをいただきました。

伊澤:他にも、撮影でキアヌさんにたくさん殺されている人は、何回殺されているか数えるんですよ。たくさん殺されるとTシャツをプレゼントされるので。

―どういうことですか!?

川本:10回死んだ人は「10」、20回以上死んだ人は「20」と書いて、Tシャツをもらえる枚数が増えるんです。

―物騒な話ですが、ラジオ体操のハンコみたいですね。

伊澤:そんな感じです。1回でいいから殺されたかったです(笑)。

川本:日本人スタントマンでも20回殺された人がいるので、「10」のシャツと「15」「20」と3着もらっていました。……あ、今日そのTシャツを持ってくればよかったですね(笑)。

伊澤:あと、キアヌさんから「世界で一番美味しいカップケーキ」をいただきました。

―世界で一番美味しいカップケーキ!?

伊澤:大阪・コンチネンタルの撮影が始まる前と終わる時に、『ジョン・ウィック4』と書かれているプレートが載ったカップケーキを全スタッフに配ってくれたんです。

―じゃあ、そのケーキをマルコ・サロールさんも食べたんですね!?

川本:マルコさんは食べていないかも。ストイックな方なんですよ。アクションのリハーサルを2、3時間やった後もひたすら自分で筋トレして、脈拍を測って、なんか首をひねって「もう1回行こう!」って運動して……みたいなことを常にやっていましたから(笑)。

―マルコ・サロールのファンには貴重なお話です! あとはファンとして素朴に気になるのが、ジョン・ウィックの射撃と柔術を組み合わせた戦闘スタイルを「ガンフー」と呼んでいますが、撮影現場でもそう呼んでいたんですか?

川本:呼んでましたよ。チャド監督が「ガンフー、ガンフー」と言うので(笑)。

―ちゃんと呼んでいるんですね、安心しました。

―では最後に、映画を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いできますか?

川本:『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は、いろんなファイトのセクション、シーン、ロケーション、武器、ファイトスタイルがあるので、楽しみにしていてください!

伊澤:本当にすさまじい作品になっています。ぜひ劇場でアクションをたくさん堪能してもらえると嬉しいです。日本人スタントマンもいっぱい頑張ってます。よろしくお願いします!

川本:しまった! それは俺が言うべきだった……(笑)。そうですね。日本人スタントマンも頑張りました。いいチームでした!

伊澤:(蛍光色の靴下を履いていた取材クルーを見て)これは余談なんですけど、蛍光色を身に着けていると、映画に出てくる犬に嚙まれてしまうので気をつけてください(笑)。

川本:それはあるね! その靴下はダメなんですよ。

―『ジョン・ウィック:コンセクエンス』に出てくる、賞金稼ぎのミスター・ノーバディ(シャミア・アンダーソン)が連れていた猟犬のことですか?

伊澤:あの犬は蛍光色に向かって噛みつくように訓練されているんです(笑)。

川本:だから、現場でその靴下を履いてたら噛みかつれますね(笑)。

―最後の最後にレアな情報をありがとうございます!

伊澤:キアヌさんの“キングシート”の話もしたかったな。

―え! キアヌさんのイイ人伝説まだあるんですか!?

取材・文:ギンティ小林

撮影:町田千秋

ヘアメイク:赤井瑞希 スタイリスト:入山浩章(※伊澤)YONLOKSANのカットソー、YOAKのシューズ、Folk/Nのリング、Folk/Nのピアス、20/80のチェーンネックレス(すべてUTS PR/03 6427 1030)、ビンテージのシャツ(Sick Tokyo/@sick_shibuyatokyo)、ユーズドのパンツ、ソックス(Front11201/@front_11201)

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『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は2023年9月22日(金)より全国公開

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