〔海外〕2023年8月の災害を振り返る

2023年8月に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。

※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。

●8月
【自然災害】ハワイ・マウイ島で山火事
[被害]死者97人 行方不明者31人 建物被害2200棟以上
2023年8月8日、アメリカ・ハワイ州のマウイ島西部で山火事が発生し、約9平方kmが焼損した。被害は沿岸の市街地にまでおよび、特にラハイナでは2200軒以上の建物が焼損する壊滅的な被害を受けた。市街地の火災は、18日までに9割が鎮火した。
この火災で、これまでに97人の死亡が確認され、ハワイ州での自然災害による死者として最多、アメリカでの山火事による死者としても過去100年余りで最多となった。行方不明者は一時1000人以上とも発表されたが、9月15日時点で31人としている。停電や通信障害により長期間連絡が取れなくなった住民が多く、安否確認が難航したり正確な行方不明者数の把握が困難になるなどして、しばらくは情報が錯綜した。
山火事の原因については特定されていないが、強風で切れた送電線から草木に引火した可能性が指摘されている。強風が予想される状況で危機回避のために送電を停止しなかったことも問題視されており、マウイ郡が地元電力会社を提訴した。また、火事が大規模になった要因としては、島の大部分が極めて乾燥状態だったところへ、ハワイ諸島南方を通過したハリケーンの強風が追い打ちをかけるかたちとなったとみられている。
島内には警報サイレンが設置されているが、火災発生当時は作動しなかった。地元当局は津波に対し避難を促すためのものだとして作動させなかったことを正当化したが、その結果住民が火災に気付くのが遅れ、人的被害が拡大した可能性があるとして、対応に批判が上がった。

【政変・政情不安】エクアドル大統領選で候補者などへの銃撃事件相次ぐ
[被害]死者2人 負傷者10人
2023年8月20日、南米エクアドルで大統領選挙が行われた。開票の結果、過半数を獲得した候補者がいなかったことなどから、10月に上位2人による決選投票が行われることが決まった。
今回の大統領選挙では、選挙戦中に候補者や議会関係者が相次いで銃撃されるなど、治安の悪化が問題となった。8月9日18:00頃、大統領選に立候補していた中道派のビジャビセンシオ氏が、首都キトでの選挙集会後に日本大使館近くで武装グループに銃撃され死亡、周囲にいた選挙関係者など9人が負傷した。また、翌8月10日には、キト郊外で議会選の候補者が銃撃されたほか、8月14日には、コレア元大統領の左派政党の指導者の1人であるブリオネス氏が西部サンマテオの自宅前で何者かに銃撃され死亡した。これらの事件を受けて、ラソ大統領は全土に60日間の非常事態を宣言した。
エクアドルでは近年、治安の悪化が進み、殺人事件の発生率が2016年の6倍に増えたともいわれている。この背景として、エクアドルの港が、隣国のコロンビアやペルーから流入するコカインなどの麻薬をヨーロッパやアジアの国々へ密輸するための拠点として使われており、国内で麻薬組織同士の抗争や民間人を狙った犯罪が相次いで発生していることが挙げられている。今回、銃撃を受けて死亡した大統領候補者は、治安対策の強化や汚職の撲滅を公約に掲げていたが、事件前に麻薬組織から脅迫を受けていたことを明らかにしていた。

【その他】ロシア民間軍事会社創設者、自家用旅客機墜落で死亡
[被害]死者10人
2023年8月23日18:00過ぎ(日本時間24日00:00過ぎ)、ロシアの首都モスクワ北西に位置するトヴェリ州クジェンキノでモスクワ発サンクトペテルブルク行きの自家用ジェット機が墜落し、乗客7人、乗員3人の計10人が死亡した。
乗客の中にはロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏が搭乗しており、同氏の死亡もDNA鑑定で確認された。プリゴジン氏はプーチン大統領の側近でロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者。「ワグネル」は中東やアフリカなどに戦闘員を派遣したほか、2022年2月からのウクライナ侵攻にも大きく関与した。一方で、今年5月からはロシア連邦軍や国防省の幹部を批判。6月23日から翌24日にかけて突如反乱を起こし、モスクワの南およそ200kmまで迫ったことも話題になっていた。
今回の事故に関して、事故の翌日にはロシアのプーチン大統領がプリゴジン氏を含む犠牲者の遺族に「心から哀悼の意を表したい」とコメントした一方、プリゴジン氏自らについては「過ちを犯した」ともコメントした。
事故が起きたのはブラジルのエンブラエル社が製造したレガシー600型機。対ロシア制裁の一環で保守点検は2019年以降行われていないほか、事故直前は1ヶ月間修理を行っていた。一方で同型の飛行機は300機製造されたが、2002年以降一度だけしか事故を起こしていない。近くに住む住民からは墜落当時、爆発音がしたという証言があるほか、独立系メディアからは爆弾が仕掛けられたという報道がされた。事故原因は現在、ロシア連邦捜査委員会が調査を行っているが、国際的なルールに基づく調査は実施しないとしている。
また、事故当初からロシア政府の関与が疑われており、アメリカはプーチン大統領やロシア政府が関与している可能性があるとみて、事故原因を追及している。これに対しロシア政府は事件性のある可能性は認めつつも、関与については否定している。

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