年間の世帯手取り額750万円 30代後半公務員DINKs夫婦は二人揃って50歳でFIREできる?

者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。 今回の相談者は、39歳、公務員の男性。36歳で同じく公務員の妻と二人暮らし。夫婦二人で50歳前後で完全リタイアをしたいと言いますが、実現可能でしょうか。FPの秋山芳生氏がお答えします。


夫婦2人、50前後で完全リタイアしたいのですが、現状のプランが成立するか相談させてください。来年の新NISAからは生活防衛資金300万を残して毎月の余剰金含め全てオルカン(※編集部注:オールカントリー)に投資予定(リスク分散のため、5年かけてキャッシュポジションを300万まで減らします)。

NISA枠を使い切った後はETFのVT(※編集部注:バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)に投資する予定です。以上の投資額は毎月一定額になるよう調整します。もし成り立たない場合、何歳頃ならリタイアできるでしょうか。これが成り立つのなら、公務員2馬力のモデルケースにもなり得るかと思っていますので、ぜひ相談に乗ってください。よろしくお願いします。

【相談者プロフィール】

・男性、39歳、公務員

・妻:36歳、公務員(手取り月額22万、年間手取り約400万超・うちボーナス年110万)

・お住まい:北海道、公宅

・毎月の世帯の手取り金額:44万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:220万円

・毎月の世帯の支出の目安:360万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:給料から天引

・食費:8万円

・水道光熱費:2万円

・保険料:5,000円

・通信費:1万円

・車両費:6万円

・その他:12万5,000円(日用品、衣料品、医療費、交際費等)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・ボーナスからの年間貯蓄額:生活支出、投資後の残額を全て貯蓄。年148万

・現在の貯蓄総額:1000万円

・毎月の投資額:つみたてNISA年80万・ETF年160万(投資を始めて1年経過しました)

・現在の投資総額:240万円

・現在の負債総額:0円

ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼YouTuberの秋山芳生です。今回のご相談は、公務員の30代のご夫婦です。DINKsということもあり、貯蓄率は40%以上あり、投資も開始しています。さて、このご夫婦が早期リタイアするとしたらどのようなライフプランだったら成り立つのか?

流行りのFIREの実現性について、以下のポイントを一緒に考えていきたいと思います。

・収支の確認
・FIREに必要な金額のシミュレーション
・詳細ライフプランニングの想定
・収支シミュレーション
・FIRE後について

保険は見直しの余地あり。「その他」の内訳を把握して

月々44万円の手取り収入に加えて年間ボーナスが220万円あるので、世帯の手取り収入は748万円になります。年間の支出が360万円(月30万円)とのことですが、ボーナス220万円のうち貯蓄に回しているのが148万円なので、特別費が72万円ほどあるものとします。

年間で貯蓄や投資に回すことができるのは316万円となり貯蓄率は42%を超えています。

支出には特に大きな問題はありませんが、お子さんがいないので、死亡保険などは基本不要です。医療保険についても、公的な保障もあるので預貯金が1,000万円あればとくに必要ないでしょう。

また、「その他」の12万5,000円は内訳がないので、「何に使いすぎているか」などがわかりません。将来FIREを考えている場合は、支出のコントロール力が問われますので、内訳をしっかり把握することが肝要だと思います。

FIRE達成に必要な金額は1億2600万円?

一般的に、FIREは1年の生活費の25倍の資産があれば、その資産を適切に運用しながら4%ずつ取り崩しても30年以上資産が枯渇する可能性が少ない(むしろ増えていることが多い)という理論が前提になります。

現在の生活費は家賃が含まれていないので、退職後は札幌で2LDKに住むことを考えて、6万円の家賃がかかるものとします。

月に30万円の生活費と6万円の家賃、また特別費が72万円かかっている場合は、年間で36万円×12カ月+72万円=504万円になります。この25倍の資産がFIREの条件とすると、504万円×25=1億2,600万円が必要になります。

この1億2,600万円を作るために、毎月20万円を投資に回し、全世界株式のインデックス・ファンドに投資をした場合、どれくらいの期間が必要になるのでしょうか。期待値7%を上限に、5%、3%とシミュレーションすると、20万円を毎月積み立て、1億2,600万円に到達するまでの期間は、

平均7%で複利運用できた場合は、22年1カ月
平均5%で複利運用できた場合は、25年10カ月
平均3%で複利運用できた場合は、31年7カ月

ということになります。

支出を減らすorサイドFIREという選択肢も

投資は、全世界株式ETFのVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)に投資する予定なので、ここ30年の運用成績をみても7%は不可能な数字ではありません。

運良く7%で運用できた場合、22年後は61歳ということになります。

実際は、1,000万円の貯蓄がすでにあり、240万円がすでに投資に回っているので、50代で目標金額に達成する可能性もあります。

仮に1,000万円を一括で投資に回し、毎年240万円を積み立て投資にまわした場合は、1億2,600万円まで19年で到達することになります(20.315%の税金は考慮していません)。

どちらにしても、かなり長い時間がかかることから、もう少し早く楽な状態を作りたい倍は、支出を減らすか、公務員をやめたあとも無理のない範囲で収入を得ていくサイドFIREという考え方があるので、詳細をシミュレーションしていきたいと思います。

10年後(49歳)でサイドFIREする場合をシミュレーション

以下の条件でライフプランニングを行います。

・10年後にサイドFIREし家賃が6万円かかる
・10年に1度引越し、30万円が発生
・10年後の退職金は1人500万円とする
・火災保険は1万円とし、更新料が2年に家賃の1カ月分発生
・10年間収入は毎年0.5%ずつ増える
・10年後から夫婦ともに8万円ずつの収入(合計16万円)を得て、65歳まで働く
・生活費は現状のまま30万円がかかり、年間72万円の特別費がかかる
・60歳以降は、生活費を8掛けに抑え、70歳以降は7掛けとする
・インフレ率1%とし、生活費が増える
・介護費用は1人500万円かかり、80歳から100歳の間にかかるものとする
・自動車は5年後から10年毎に買い直し、200万円かかる。75歳まで車を所有する
・年金は65歳から受け取り
・運用は5%の複利で65歳まで運用し、65歳以降は1.5%で運用したものとする
・現在1,000万円ある資産から3年かけて700万円を投資に回す(1年後に250万円、2年後に250万円、3年後に200万円を投資)

残念ながら、【シミュレーション1】では、10年後にサイドFIREをしても83歳で資産が尽きてしまうことになります。

支出を月マイナス3万円、投資にプラス1万円の場合

仮に、月の支出を今より3万円減らし、さらに1万円投資に回すことができた場合は、【シミュレーション2】のようになります。相談者さまが103歳、妻が100歳まで資産がもつようになりました。

54歳まで働いた場合は?

働く期間をあと5年延ばし54歳まで働いた場合は、アルバイトをしないフルFIREもシミュレーション上は可能になります。

暴落にも対応できる選択肢を持とう

ただし、シミュレーションはあくまでもシミュレーションです。

想定外のライフイベントが起こり、支出が増える可能性もあるので、もう少し余裕をもった設計をしてもよいかもしれません。

また、現在は投資を始めて1年ですが、今後の長い投資生活の中で暴落が起こることは避けられません。収入を減らして、資産を取り崩しながら生活をしているときに暴落が起こった場合は非常に不安を感じると思います。常に、暴落に対するこころ構えや、暴落時でも対応できるような準備が必要になってきます。

・働く期間を長くする
・FIRE後も、場合によっては就職し収入を得る
・支出を減らす

このような選択肢を持っておく、準備しておくことで、安心感も生まれますし、今回シミュレーションした以外にもさまざまな暮らし方を実現することも可能です。

シミュレーションを信じすぎて「こうでなければならない」という考え方は危険です。柔軟に自由な選択肢を持つことが重要だと思います。

「やりたくないことはしない」を追求してみる

FIREを実現すれば、経済的に自由になり、仕事も「やりたくないことはしない」という選択ができるようになります。時間にも余裕ができますが、それが「本当に幸せ」なのかが問われるようになります。

1.金銭的に余裕がある
2.健康である
3.時間的に余裕がある

という3つのベースを実現した上で、

4.人間関係が良好で時間を共有できる人がいる
5.自分のやるべきことをしている実感を得ている

を実現していくことが、残りの人生の時間を使う上で大切になるでしょう。

【5】については、副業をして、やりがいがあり楽しめていると人生は充実しやすいと思います。公務員の場合は副業が禁止されていると思いますが、公務員の間はボランティアとして収入を得ない形で人に貢献したり、経験を積む方法もあります。FIRE後に収益化するイメージで経験を積んだり、仕組みを作っておくのもおすすめです。

また、この5つは、FIRE状態になくても追求し、感じることはできるはずです。一度きりの人生を楽しみましょう。

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