あふれ出す涙 岩井明愛が5度の2位を乗り越えて2勝目

小祝さくら(左)の祝福に涙があふれた(撮影/村上航)

◇国内女子◇住友生命Vitalityレディス 東海クラシック 最終日(17日)◇新南愛知カントリークラブ美浜コース(愛知)◇6534yd(パー72)◇晴れ(観衆7995人)

ウィニングパットをタップインのように入れた。岩井明愛が空を仰ぎ、両手を掲げた直後、涙があふれた。帽子のつばを目深に抑えた。

「すごく長かったです。上位で戦うことが増えて、あとちょっとで負け続けて。勝ちたくて、勝てなくて」。ツアー初優勝の4月「KKT杯バンテリンレディス」から5カ月でも、岩井には長かった。

5月「RKB×三井松島レディス」は双子の妹・千怜にプレーオフで負け、翌週「ブリヂストンレディス」と6月「ニチレイレディス」は山下美夢有に逃げ切られた。同「アース・モンダミンカップ」と8月「ニトリレディス」は申ジエ(韓国)、菊地絵理香にプレーオフで連敗した。

ついに2勝目だ(撮影/村上航)

わずか5カ月で5度の2位。「本当は“優勝できないんじゃないか”と思っていた部分がありました」。ボーイッシュで爽やかな見た目と裏腹に、応援に駆けつけてくれる知り合いに「期待しないで」と泣き言をこぼしたこともあった。

初日に大会コースレコードタイ「63」を出し、2日目も4つ伸ばし、後続を3打リードした。完全Vを目指した最終日、我慢しながら3つスコアを伸ばし、4打リードで迎えた14番パー4で“事件”は起きた。

「自分でビックリした」というミスショット。フェアウェイ右バンカーからの2打目。残り106ydを、さして悪くないライからピッチングウェッジでグリーン奥のOBゾーンに打ち込んだ。4オン2パットのダブルボギーを喫した。

「もう勝てないかも」とまで思っていた(撮影/村上航)

「OBした時、なぜか“大丈夫。なんとかなる”と思ったんです。普通は(頭に血が)上がりますよね?」。奇しくも前日、同じ14番でダブルボギー。3オン後の5mを3パットした。

「最終日はミス、トラブルは絶対に来ると思っています。それに自分のゴルフはそうなので、OBしても心を広く持とうと」。惜敗続きで強くなった心。アグレッシブなスタイルと同居するリスクも知っている。この日はロッカールームにヤーデージブックを忘れて「もういいや!」と帯同キャディのブックに頼った。そんな天性の切り替えの早さもある。

へこむ間もなく、実測191ydの16番パー3。飛び系の5番アイアンで50cmのベタピンにつけ、結果的に小祝さくらを1打差で抑える“決勝バーディ”を奪った。

初優勝後5カ月で5度の2位の末(撮影/村上航)

待望の2勝目を手にして、年間女王レースのメルセデスランキングは3位に変わりないが、1位申ジエとは約242ポイント差、2位山下とは約157ポイント差に接近。4日間大会優勝(300ポイント)で逆転できる“射程圏内”だ。

「女王は全然考えてないけど、いずれは、と思ってます」。勝利数は通算4勝の千怜に及ばないものの、岩井明愛ももうツアーの主役を狙えるステージに上がってきた。(愛知県美浜町/加藤裕一)

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