【香港】夜間経済プロジェクト始動、消費刺激目指す[経済]

香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は14日、ナイトタイムエコノミー(夜間の経済活動)の振興に向けたプロジェクト「香港夜繽紛(ナイト・バイブス・ホンコン)」の開始を宣言した。夜間に各種のイベントやキャンペーンを展開し、消費を刺激して経済の活性化を図る。大部分は年内に展開するが、一部は2024年2月までに行う。

香港夜繽紛は◇芸術・文化体験◇ビクトリア湾岸のレジャー体験◇祝賀ムード体験◇多様なレジャー体験——の4つを柱に据えた。芸術・文化体験では映画館の入場料割引や香港芸術館など公立美術館・博物館の金~日、祝日の開館時間延長などを実施。ビクトリア湾岸のレジャー体験ではウオーターフロントでグルメや土産物のブース展開や音楽パフォーマンス、ドローンのパフォーマンスなどを行う。香港島・中環海浜(セントラル・ハーバーフロント)での開催を復活させる香港政府観光局(HKTB)のグルメイベント「香港ワイン&ダイン・フェスティバル」もこれに含める。

祝賀ムード体験は、新型コロナウイルス禍収束により中秋節(今年は9月29日)の祭りとして復活する香港島・大坑の「舞火龍(ファイヤードラゴンダンス)」や、国慶節(10月1日)の花火大会、香港ディズニーランド・リゾートや香港島南部のテーマパーク、香港海洋公園(オーシャンパーク)が展開するハロウィーンイベントなど。多様なレジャー体験は、香港域内の80カ所を超えるショッピングモールなど商業施設が夜間の文化・スポーツイベントや小売りと飲食の割引、営業時間の延長を行うほか、香港島・中環(セントラル)の歓楽街「蘭桂坊(ランカイフォン)」では100軒を超える飲食店が割引を行うなど、各種キャンペーンを展開する。

13日の時点で決まっているイベントやキャンペーンは、従来の恒例のものを含めて31件で、今後さらに増える見込み。春節(旧正月、24年は2月10日)関連のイベントは24年2月の開催となる。

■国慶節の花火は約3万2千発

19年は反政府運動の拡大、20~22年は新型コロナ禍で中止されていたため5年ぶりの国慶節の花火大会は、香港政府文化スポーツ・観光局が統括する形で10月1日午後9時から約23分、開催される。打ち上げられる花火は3万1,888発の予定。8部構成となっている。

■深センが「競合」政策?

一方、香港と境界を接する中国広東省深セン市の発展改革委員会は15日に新たな消費刺激策を発表したが、その中には香港人の同市内での消費を促進する政策が含まれている。メディアや旅行代理店などとの協力による同市の消費者向けサービス売り込みや、香港人とマカオ人を対象にした観光消費券の発行、市内への10カ所以上の「香港人観光消費サービスモデル地区」の設置などだ。香港市民の域内消費拡大を主眼とする香港夜繽紛とぶつかる形となる。

明報(電子版)によると、香港政府報道官は16日、香港人の中国本土での消費増大は正常なこととの認識を示した上で、香港は魅力と競争力を強めて市民と旅行客の域内消費拡大を図っていくとコメントした。

一方、立法会(議会)の江玉歓(ドリーン・コン)議員は、深セン市の政策は同市内で消費を行う香港市民が直面する問題にきめ細かく対応していると評価。対照的に香港夜繽紛は問題に的確に対応していないと苦言を呈した。その上で香港政府に対し、市民と旅行客のニーズにより応えた措置を取るよう求めた。

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